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第15話

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「く、ククリ様っ、さすがに、これは……、なにがなんでも、あまりにも……」

 ネリーがアワアワと口に手をあてて俺を見る。


「これっ、これだよっ!! 俺が探し求めていたものはっ!!」


 王都を探し回ること、約数軒!

 おれはようやく、欲しかったコーデと対面することができた!!



「こんなぎらぎらした服、見ていたら目がつぶれそうですわ!」

「ふふ、もっとスパンコールがついていたって、いいくらいだよ!」


 今まさに俺とネリーが買い求めようとしているのは、マツ〇ンサンバもびっくりなギンギラギン(!)な金色の衣装!

 派手好きな趣味の悪い貴族のために作られた逸品らしい。スパンコール一つ一つを手で縫い付けており、もちろん値段もとんでもなく高い!!


 ――ちなみに俺自身の衣装は、洋服を瞬時に見定めることのできるという前世の特技を生かし、自分史上最高にシュッと決まるすっきりしたラインのアイボリーの礼服をすでにオーダー済みだ。




「俺はこれをアスランにプレゼントするっ! そしてコミュニケーションパーティに着ていってもらう!!」

「ククリ様っ、それは、あまりにも……っ!」


 ネリーは信じられないといった表情で俺を見た。


「考えてもみてよ、ネリー! 俺がこのギラギラ成金趣味の服を、いかにも一生懸命選びましたって顏をして、うれしそうにプレゼントするだろ?
そしたら、思いやりがあって、俺に対して嫌といえないアスランは、俺の手前、この服をパーティに着ていくしかない!
アスランは、心の中では俺のことをきっとすごく恨むし、こんな俺とはこれ以上もうやっていきたくないって思うに違いない!
そんでもって、魔法騎士団員が一堂に会するパーティーに、こんなイカれた服を夫に着せた俺の評判はがた落ち! 
こんな趣味の悪くて、人の気持ちがわからない最低な人間とは、アスランが離婚したって仕方ないって、周りの人間もきっと思うに違いないんだ!」


「さすがはククリ様っ! そんなことまで考えられていたのですねっ!
……でも、いいんですか? そんなことしたら、ククリ様の評判が……」

「大丈夫大丈夫、もともと、最低レベルの評判だよ。
これ以上悪く言われることなんて、ないって!」

 そう、幼い頃からやりたい放題。そして欲しいものを手に入れるため、性別までも超越し、みんなのアイドル超絶美形騎士・アスランをわがものとした俺の評判は、すでに地に落ちている……。

 ほかにもゴージャスな羽扇子や、ギラギラスーツにあわせる金色の靴などの小物を購入し、俺は満足げに帰宅した。


 午後のお茶の準備に取り掛かろうとするネリーを、俺は止めた。


「ネリー、もう一つ頼みがあるんだっ! 俺にクッキーの作り方を教えてくれっ!」


 ――俺にはもう一つ、成し遂げなければならないミッションがあった!


「ククリ様、まさか旦那様のために手作りクッキーを!? なんて、なんていじらしい!!」

 ネリーは胸の前で両手を組んだ。

 だが、俺はかぶりを振る。



「ネリー、作るのはただのクッキーじゃない、これ以上なく最低にマズくて、作ったヤツの人間性を疑うレベルのクッキーの概念をこえた究極のクッキーだっ!」

「概念を、超えた……?」


 ネリーが眉を顰める。


「アスランに食べさせたいわけじゃないんだ。とにかく、コミュニケーションパーティまでに、史上最悪のクッキーレシピを二人で完成させよう! ネリー!」



 待ってろよ、アスラン!

 必ずや、魔法騎士団のコミュニケーションパーティで、俺に愛想をつかさせてやるからなっ!!!!



 ――もうこれ以上一秒たりとも、俺のそばにはいたくないと思わせるくらい……。


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