【完結】オメガの半身 〜王太子と公爵家の双子〜

.mizutama.

文字の大きさ
4 / 29

第4話 二人の嘘

しおりを挟む
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「アムル、アムル……」

 顔中に口づけを落とされ、アムルは目を覚ました。

「陛下……」

 アムルはマーリクと全裸で抱き合った状態だった。

 アムルは不意にうなじに痛みを感じ、顔をしかめる。


「また、噛んだんですか?」

 詰るようにいうと、マーリクはアムルをきつく抱きしめた。

「かなり深く感じていたようだったから、もしかしてヒートが来たかもしれないと思ってな。
どうだ? 番になれただろうか?」

 マーリクはアムルの首筋を愛し気に撫でる。


「なれるわけ、ないでしょう。陛下、もうあきらめてください。私にヒートが来ることはありません」

「医師も言っていたぞ。精神の影響も大きいのだと。だから、きっといつか、お前にも……」

「無理です、マーリク」

 噛み痕を舐め始めたマーリクに、アムルはため息をつく。


 ――オメガなのにヒートが来ない。よって、アルファのマーリクと番になることはできない。


 医師が言うように、これは心の問題によるところが大きい。アムル自身が一番よくわかっている。

 なぜなら、自分のオメガ性を封印したのは、ほかならぬアムル本人だからだ。


 ――僕は絶対に誰とも番にはならない!


 マーリクに抱きしめられ肌を吸われながら、アムルは唇を噛み締める。


「なあ、アムル。私はお前との間に、もう一人子どもが欲しい。次は王子がいいな」

 マーリクには正妃が一人と、側室が七人いる。正妃のカミーラはアルファで、カミーラとの間に王子が一人。側室はアムル以外全員ベータの女性で、誰も王の子を産んでいない。

「カミーラ様に言われました。次にもし男子を産んだら、そなたの首をはねると」

「相変わらず恐ろしい女だ……」

 アムルとの間にどうしても子が欲しかったというマーリクは、オメガを強制的に発情させるという薬を使って、アムルを妊娠させることに成功した。だが、発情は偽りのものだったので、その行為の際にマーリクがアムルのうなじを噛んでも、二人が番になることはなかった。

「マイイとルゥルゥが姫で本当によかったです。私はもう、ごめんですよ、あんな思いをするのは……。もう、触らないでください、もうっ! まだ、貴方はっ……」

 臀部にまわったマーリクの手を、アムルはぴしゃりとはねのける。


「ふふ、今頃媚薬の効果があらわれてきたようだぞ」

 ゴリ、と固いものを下腹部に当てられ、アムルは肝が冷える思いだった。

「それなら、ぜひ今からでもほかの方の元に行ってください。陛下のお渡りをまっている方々がどれだけたくさんいるか、わかっていらっしゃいますか?
それに、せっかくですから、一晩で何人の方の元に通えるか、記録を作ってみてはいかがですか?
きっと絶世の王として、後世まで語り継がれて……っ」

 話の続きは王の唇で封じられた。


「それなら私は別の記録を作ることとするかな? アムル……」

「それは、どういう……?」

 マーリクの薄緑の瞳に、顔を引きつらせる自分が映っていた。

「一晩で一体何回お前を達せられるか、これから数えてみることにしよう。よし、まだ柔らかい。いいな?」

 返事も聞かず、王の剛直にアムルは貫かれていた。


「ぐあ、あ、あ、あ、あ……!」

「ああ、私を悦んで迎えてくれているぞ。やはり、お前が一番だ。アムル……。怖がって泣き叫ばれては勃つものも勃たないからな!」


「んんっ、へい、かっ……! あ、あああっ!」


 ――嘘つき。


 アムルはマーリクの背に手をまわし、爪を立てた。


 ――この、大嘘つきが! お前に初めて犯されたとき、僕はずっと泣いていた。顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃで、何度もやめてほしいと懇願した。でもお前は、僕が泣けば泣くほど、叫べば叫ぶほど、僕の中に埋め込んだものを欲望で大きく膨らまして、何度も、何度も……っ!!


 大きく開かされた脚。気が遠くなるほど、何度も打ち込まれる楔……。

 声を枯らし、叫びながらアムルは思う。




 ――彼と自分では、いったいどちらが不幸なのだろう……?




しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

復讐の鎖に繋がれた魔王は、光に囚われる。

篠雨
BL
予言の魔王として闇に閉ざされた屋敷に隔離されていたノアール。孤独な日々の中、彼は唯一の光であった少年セレを、手元に鎖で繋ぎ留めていた。 3年後、鎖を解かれ王城に連れ去られたセレは、光の勇者としてノアールの前に戻ってきた。それは、ノアールの罪を裁く、滅却の剣。 ノアールが死を受け入れる中、勇者セレが選んだのは、王城の命令に背き、彼を殺さずに再び鎖で繋ぎ直すという、最も歪んだ復讐だった。 「お前は俺の獲物だ。誰にも殺させないし、絶対に離してなんかやらない」 孤独と憎悪に囚われた勇者は、魔王を「復讐の道具」として秘密裏に支配下に置く。しかし、制御不能な力を持つ勇者を恐れた王城は、ついに二人を排除するための罠を仕掛ける。 歪んだ愛憎と贖罪が絡み合う、光と闇の立場が逆転した物語――彼らの運命は、どこへ向かうのか。

婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後

結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。 ※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。 全5話完結。予約更新します。

【完結】王子様たちに狙われています。本気出せばいつでも美しくなれるらしいですが、どうでもいいじゃないですか。

竜鳴躍
BL
同性でも子を成せるようになった世界。ソルト=ペッパーは公爵家の3男で、王宮務めの文官だ。他の兄弟はそれなりに高級官吏になっているが、ソルトは昔からこまごまとした仕事が好きで、下級貴族に混じって働いている。机で物を書いたり、何かを作ったり、仕事や趣味に没頭するあまり、物心がついてからは身だしなみもおざなりになった。だが、本当はソルトはものすごく美しかったのだ。 自分に無頓着な美人と彼に恋する王子と騎士の話。 番外編はおまけです。 特に番外編2はある意味蛇足です。

無能と呼ばれた婚約者は王を完成させる〜替え玉婚約者のはずが、強すぎる王太子に手放してもらえません〜

統子
BL
兄の身代わりとして王太子の婚約者になった伯爵家次男リュシー。 嘘の名を名乗ったはずが、冷静で誠実な王太子リオンは彼を「力の装置」としてではなく、対等な伴侶として扱おうとする。 本物になりたいと願う替え玉と、完成された王太子の静謐な王宮ロマンス。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐
BL
いつもドジで、今日もお仕えする領主様に怒鳴られていた僕。自分が、ゲームの世界に悪役として転生していることに気づいた。このままだと、この領地は惨事が起こる。けれど、選択肢を間違えば、領地は助かっても王国が潰れる。そんな未来が怖くて動き出した僕だけど、すでに領地も王城も策略だらけ。その上、冷酷だったはずの領主様は、やけに僕との距離が近くて……僕は平穏が欲しいだけなのに! 僕のこと、いらないんじゃなかったの!? 惨劇が怖いので先に城を守りましょう!

【完結】花降る王国の魔法師団長は、新米魔法師の僕を愛でる

金浦桃多
BL
エルは魔法師団長の第三王子ノアに憧れて魔法師になった。 数年前、フローラ王国の最大のお祭りでノアが降らせた氷の花に触れた事がきっかけだ。新米ながらも当時のノアと同じ大役を任されたエル。真剣に鍛錬をするエルをノアはことさら優しく見守る。ある日、魔法師の間で奇病が広がり始めた。事態を重く見たノアは奇病の真相を追う。そんな中、エルも奇病に侵されてしまう。奇病の真実とは?ノアがエルに構う理由とは? 魔法師団長×新米魔法師 ハッピーエンドです。

処理中です...