【完結】究極のざまぁのために、俺を捨てた男の息子を育てています!

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第27話 テオドールの覚悟

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「でも、マリユスはどうやって逃げたんですか? 王宮の地下牢に閉じ込められていたのですよね?

「女官長よ、彼女が手引したの。マリユスは女官長のこともたぶらかしていたらしいわ」

「女官長まで……」

 だから、王宮の内部にまで入り込み、側室とも密通することができていたのか。つくづくマリユスの守備範囲の広さには呆れ返る。


「で、今テオドールは部屋にいるのですか?」

  さきほどから姿を見せていないテオドール。俺のことをずいぶん心配していたはずだが……。


「エマと一緒に市場に買い出しに行かせたわ。テオドールってば、あなた達がなかなか戻ってこないものだから何度もジュールの部屋に行こうとして、止めるのが大変だったんだから!
ジュールが元気になったらきっとお腹がすいているだろうから、美味しいものを食べさせてあげたら? って言ったら、喜び勇んで出かけていったわよ。そろそろ、戻ってくる頃じゃないかしら?」

 お姉様が時計を確認する。

「では私は、テオドール坊ちゃまに鉢合わせしないように、お先に失礼します。ではジュール様、近いうちに、またお相手させてくださいね」


 アンドレは、ご令嬢にするみたいに、俺の手の甲にキスをした。

「……っ!」


「ところで、我々がこちらを尋ねてくる時は魔導師協会の名を出しますので、周りの方にはそのようにお伝え下さい。黒い外套でなるべく顔も見せないようにいたします。ジュール様、テオドール様には呪いの影響を和らげるために、定期的に魔導師の秘術を受ける必要がある、とご説明くださいませ」

「わかりました……」

 たしかに、言えるわけがない。俺が、定期的にどんなことをしないと命をつなぐことができないかなど……。
 俺はなぜアンドレが最初から顔を隠し、黒ずくめの格好をしていたのかを理解した。


 そしてあのテオドールの屈託のない笑顔を思い出し、俺の心はきゅっと痛んだ。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 しばらくすると、市場で大量の食料品を買い込んだテオドールとエマが帰ってきた。


「叔父様っ! よくなられたのですねっ!」

 迎えに出た俺に、テオドールは飛びついてきた。


「心配かけてごめんね、テオドール」

「良かった! 本当に、良かった……っ」


 テオドールは俺をギュッと抱きしめ、俺の胸あたりに顔を埋めた。俺もそんなテオドールの頭をなでなでしていたのだが……、


「叔父様……」

 テオドールのものとは思えない低い声に俺はぎょっとする。


「どうしたんだ、なにか……」

「あの男の、匂いがします……っ!」

「へ!?」


 ーーお前は犬なのかっ!? テオドールっ!


「あんなに長い時間、あの男とお部屋で二人っきりで、いったいどんなことをされていたのですかっ!? こんなに匂いがついているということは、身体を密着させたということですよね!? なにがどうなって、どんなことをされて、どういう会話をされたのか、俺に、全部詳しく説明してくださいっ!!」

「そ、それは……っ」

 できるわけがない。こんないたいけな少年に。俺達がしていたあれやこれやことなど……。


「あの男は、また来るのですかっ!?」

 テオドールが恨みがましい視線を俺に向けてくる。


「えっ、いや、その、しばらくしたら来るかもしれないけど、とりあえずは別の人が……」

「別の男っ!?」


 ますます視線が険しくなるテオドール。



「テオドール、俺は呪いの影響で、魔導師の先生に定期的に秘術をかけてもらう必要性があってだね……」

 俺はさきほどアンドレに教えてもらったとおり、テオドールに説明した。

 だが、テオドールはなおも食い下がってきた。


「それはどんな秘術ですかっ!? 次のときは、俺を絶対に同席させてください。その秘術とやらを叔父様がかけられている間、俺はずっと叔父様の手を握っていて差し上げますっ!」

「……っぐぇ!」

 俺は思わず、カエルが潰されたみたいな、変な声を出していた。


 俺がアンドレの組織の人間とセックスしている間に、テオドールにずっと手を握ってもらうって、一体どんなプレイだよっ!?
 想像した俺は、その絵面の恐ろしさに青ざめる……。



「テオドール、あまりジュール叔父様を困らせては駄目よ。言ったでしょう? ジュール叔父様に繋けられた呪いは、世にも恐ろしい呪いなのよ。そんなところに立ち会ってしまったら、あなたまで呪いの影響を受けてしまうわよ!」

 うろたえる俺に、シャンタルが助け舟を出してくれた。さすがはお姉様!


「俺はっ、叔父様のためなら、呪いなんて全く怖くありませんっ! 叔父様の代わりに、俺がその呪いを受けたっていいくらいです!」

 テオドールの純粋な俺への想いに、俺の心は震えた。


「テオドールっ!!」

 俺はひしとテオドールを抱きしめていた。


「君はっ、なんていい子なんだっ! 俺も、テオドールのためならなんだってするよ。でもテオドールには幸せになってもらいたいんだ! だから、お願いだよ。自分が呪いを受けてもいいなんて、そんな悲しいことを言わないで!」


「叔父様っ……、俺っ……!」

「テオドールっ!」

 眼をキラキラさせたテオドールと俺は、しばし見つめ合った。



「あのー、ジュール様、そろそろご夕食の支度したいんですけどぉ、いい加減そこどいていただいていいですかぁ? あと、テオドール坊ちゃま、レモンタルト作るの、お手伝いしてくださるんですよねっ!?」


 しびれをきらしたエマが唇をひくつかせて、半目で俺達を見ていた。



「あ、ごめんなさい……」




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