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第39話 旧知の仲
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「ジュール・ダンデス! なぜおまえがここにいるっ!?」
俺を呼び止めたその男は、その冷徹な瞳を俺にまっすぐに向けていた。
――うわー、こんなところで面倒くさい人に会ってしまった!!
目の前にいるのは、藍色の髪と目をした長身の男。
「お、ひさしぶり、です。エリオット先輩……」
「質問に答えろ! なぜおまえがここにいる!?」
ああ、相変わらずだなあ。こういう言い回し……。
「えーっと、それは、つまり、私はここの学園の生徒の保護者だからです。今日は、校長先生に、この学園にはびこるいじめの件で、お話に来ましたっ!」
「なに? いじめ、だと……!?」
藍色の瞳が剣呑そうに細められた。
「エリオット先輩こそ、なんでここにいるんですか?」
――エリオット・ヴァロア。
ヴァロア伯爵の次男で、学園時代にシャンタルお姉様の取り巻きの一人だった男だ。
エリオットは俺の質問に、憎々し気に唇をゆがめた。
「は!? お前はっ、俺が毎年贈っているカードをちゃんと読んでいないのか? 俺は今年、この学園の理事長に就任したんだ!」
「理事長ーーっ!? エリオット先輩がっ??」
もしかして俺、ようやく話のわかる学園関係者に巡り合えたってこと!?
エリオットが理事長に就任したというのは嘘ではないらしい。
理事長室に通された俺。黒壇の重厚感のあるデスクの上には、金のプレートに「理事長・エリオット・ヴァロア」と掘られていた。有力貴族であるヴァロア伯爵家は、王家とも関わりがあると聞く。その次男坊のエリオットが、王立学園のトップ就くというのはありえない話ではなかった。
そういえば、エリオットが言うように、確かに毎年、学園を卒業してからも四季折々の時候の挨拶のカードが届いていた……ような気がする。
といっても、礼儀やマナーにうるさい四角四面なエリオットのこと、学園の卒業生の顔見知りほとんど全てにカードを送っているに違いない。
チャラチャラキラキラした者たちが多かったシャンタルお姉様の取り巻きたちだったが、そのなかでも堅物を絵に書いたようなエリオットは異質の存在だった。
だが、今となってはわかる。おそらくエリオットは、当時生徒会長だったお姉様の様々な雑事をすべて引き受けさせられていたのだろう。
エリオットは学園きっての秀才、そして品行方正な生徒として有名な生徒だった。
王立学園は、16歳までの初等部、17~18歳の中等部、19~20歳の高等部にわかれている。
たいていの貴族の子弟は18歳の中等部を卒業して、親の仕事を継ぐが、騎士や王宮の要職に就くことが約束された将来有望な生徒は、高等部まで学園に在籍することが多い。
当然18歳で学園を卒業した俺とは違い、エリオットは高等部まで学園にいたので、お姉様が卒業したあとも、俺となにかと顔を合わせることが多かった。
そして俺は、そんなエリオットをとても苦手としていた。
もともと成績も良くなく、地味で目立たないだけで品行方正とは程遠い俺のこと。
崇拝するシャンタルお姉様の弟として、見るに堪えない存在だったのだろう。
エリオットは俺を学園で見つけては「寝癖!」「タイが曲がっている!」「宿題はちゃんとやってきたのか!?」などと、説教をしてくるのが常だった。
そんな彼とまたこの学園で出会うとは、運命というのも皮肉なものだ。
「この学園にいじめがはびこっているというのは本当なのか?」
俺にソファを勧めてくれたエリオットは、俺の座った正面に腰を下ろした。
テーブルの上には、秘書と思われる女性がさきほど出してくれた紅茶が置かれている。
ーーこうして見ると、確かに敏腕の若き切れ者理事長にも見える。
「間違いありません! 我が家のテオドールは、ノアイユ公爵のご子息と、オスマン騎士団長のご子息から、陰湿ないじめを受けているんですっ!」
「テオドール? テオドールとは、テオドール・ダンデスのことか?」
エリオットの言葉に、俺は大きく頷いた。
「そうです。うちのテオドールはとっても心根が優しくて、人に敵意を向けられても、言い返したり、仕返ししたりなんて到底できない性格の子なんです! ものすごく可愛いいい子なんですっ! それをいいことに、あのふたりがっ……」
「……ジュール、お前の言っているのは、初等部にいる剣術部所属のテオドール、で間違いはないのだな?」
念押ししてくるエリオット。
「そうです!!」
「俺も仕事がら、目立つ生徒のことは把握しているが……、お前の言っている「テオドール」と俺の知っている「テオドール」には大きく乖離があるようだな」
「それは、どういう……」
俺は眉をひそめる。もしかして、テオドールは俺の想像以上の壮絶ないじめにあっているのか??
俺を呼び止めたその男は、その冷徹な瞳を俺にまっすぐに向けていた。
――うわー、こんなところで面倒くさい人に会ってしまった!!
目の前にいるのは、藍色の髪と目をした長身の男。
「お、ひさしぶり、です。エリオット先輩……」
「質問に答えろ! なぜおまえがここにいる!?」
ああ、相変わらずだなあ。こういう言い回し……。
「えーっと、それは、つまり、私はここの学園の生徒の保護者だからです。今日は、校長先生に、この学園にはびこるいじめの件で、お話に来ましたっ!」
「なに? いじめ、だと……!?」
藍色の瞳が剣呑そうに細められた。
「エリオット先輩こそ、なんでここにいるんですか?」
――エリオット・ヴァロア。
ヴァロア伯爵の次男で、学園時代にシャンタルお姉様の取り巻きの一人だった男だ。
エリオットは俺の質問に、憎々し気に唇をゆがめた。
「は!? お前はっ、俺が毎年贈っているカードをちゃんと読んでいないのか? 俺は今年、この学園の理事長に就任したんだ!」
「理事長ーーっ!? エリオット先輩がっ??」
もしかして俺、ようやく話のわかる学園関係者に巡り合えたってこと!?
エリオットが理事長に就任したというのは嘘ではないらしい。
理事長室に通された俺。黒壇の重厚感のあるデスクの上には、金のプレートに「理事長・エリオット・ヴァロア」と掘られていた。有力貴族であるヴァロア伯爵家は、王家とも関わりがあると聞く。その次男坊のエリオットが、王立学園のトップ就くというのはありえない話ではなかった。
そういえば、エリオットが言うように、確かに毎年、学園を卒業してからも四季折々の時候の挨拶のカードが届いていた……ような気がする。
といっても、礼儀やマナーにうるさい四角四面なエリオットのこと、学園の卒業生の顔見知りほとんど全てにカードを送っているに違いない。
チャラチャラキラキラした者たちが多かったシャンタルお姉様の取り巻きたちだったが、そのなかでも堅物を絵に書いたようなエリオットは異質の存在だった。
だが、今となってはわかる。おそらくエリオットは、当時生徒会長だったお姉様の様々な雑事をすべて引き受けさせられていたのだろう。
エリオットは学園きっての秀才、そして品行方正な生徒として有名な生徒だった。
王立学園は、16歳までの初等部、17~18歳の中等部、19~20歳の高等部にわかれている。
たいていの貴族の子弟は18歳の中等部を卒業して、親の仕事を継ぐが、騎士や王宮の要職に就くことが約束された将来有望な生徒は、高等部まで学園に在籍することが多い。
当然18歳で学園を卒業した俺とは違い、エリオットは高等部まで学園にいたので、お姉様が卒業したあとも、俺となにかと顔を合わせることが多かった。
そして俺は、そんなエリオットをとても苦手としていた。
もともと成績も良くなく、地味で目立たないだけで品行方正とは程遠い俺のこと。
崇拝するシャンタルお姉様の弟として、見るに堪えない存在だったのだろう。
エリオットは俺を学園で見つけては「寝癖!」「タイが曲がっている!」「宿題はちゃんとやってきたのか!?」などと、説教をしてくるのが常だった。
そんな彼とまたこの学園で出会うとは、運命というのも皮肉なものだ。
「この学園にいじめがはびこっているというのは本当なのか?」
俺にソファを勧めてくれたエリオットは、俺の座った正面に腰を下ろした。
テーブルの上には、秘書と思われる女性がさきほど出してくれた紅茶が置かれている。
ーーこうして見ると、確かに敏腕の若き切れ者理事長にも見える。
「間違いありません! 我が家のテオドールは、ノアイユ公爵のご子息と、オスマン騎士団長のご子息から、陰湿ないじめを受けているんですっ!」
「テオドール? テオドールとは、テオドール・ダンデスのことか?」
エリオットの言葉に、俺は大きく頷いた。
「そうです。うちのテオドールはとっても心根が優しくて、人に敵意を向けられても、言い返したり、仕返ししたりなんて到底できない性格の子なんです! ものすごく可愛いいい子なんですっ! それをいいことに、あのふたりがっ……」
「……ジュール、お前の言っているのは、初等部にいる剣術部所属のテオドール、で間違いはないのだな?」
念押ししてくるエリオット。
「そうです!!」
「俺も仕事がら、目立つ生徒のことは把握しているが……、お前の言っている「テオドール」と俺の知っている「テオドール」には大きく乖離があるようだな」
「それは、どういう……」
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