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第57話 叔父様の好み
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「叔父様の気配がするから来てみたら……、オーバン、前に警告したはずだぞ!」
うん、テオドールの顔が怖い。すごく、怖い。
腰の長剣を抜いたら、この場にいるもの全員真っ二つにされそうな勢い!!
それにしても俺の気配って一体何? はっ、もしかして俺ってなんか変な匂いとかしてる!?
「あのね、テオ、さっき偶然ここでオーバン君に会って……」
さり気なく袖口の匂いをくんくん嗅いでから、俺はテオドールに向かってへらりと微笑んだ。
「僕、ジュール叔父様にたくさんお手紙を書いたはずなのに、ジュール叔父様には一通も届いていないっていうんだ。ねえ、テオドールおかしいと思わない?」
またもやぶりっ子仕様に様変わりしたオーバンが、その可愛らしい唇を尖らせる。
「……」
オーバンの言葉に、テオドールはむっと口をへの字に曲げた。
「まさか、テオドールのせいで僕からのお手紙が叔父様に届かない、なんてこと、ないよね? テオドール?」
目を瞬かせるオーバンに、テオドールは左足を一歩引き、ついに腰の長剣に手をかけた。
「叔父様叔父様うるさい!! ジュール叔父様は俺の叔父様だっ! お前のじゃないっ!」
「わあっ、僕怖いっ! 叔父様ぁ、助けて!」
ちゃっかり俺の背中の後ろに隠れるオーバン。ちなみにちっとも怖そうじゃない。その証拠に赤い舌をぺろりと出している。
テオドールが一体何に腹をたてているのかはよくわからないが、とにかくオーバンとテオドールの仲はあまりよろしくないようだ。
しかしここは王立学園。そして相手は王族の親戚の公爵家の息子!
俺はテオドールに向き直った。
「テオ、お友達と喧嘩しちゃだめだよ。ほら、もうやめて。仲直りしよう!」
「……叔父様っ!」
「はいっ、ほら、ふたりは握手して。仲直り!!」
俺はテオドールとオーバンの手を取ると、無理やりふたりを近づけた。
「ほら、テオドール、君の大好きな叔父様がそうおっしゃってるんだ。握手して仲直りしようよ」
オーバンがテオドールに顎をしゃくる。
「貴様っ……」
テオドールはギリ、と唇を噛み締めたが、俺に手を取られてしぶしぶ従った。
「はい、じゃあ、握手ね」
二人の手を握らせた俺。
ーーあれ、俺ってば、年長者として割といいことしてる感じ?
だが、テオドールと握手したオーバンは、あっという間に顔が真っ赤になった。
「ぐあっ! っ!!!! 痛っア、クソっ、このっ……!」
「今度叔父様に手を出したら、お前の全身の骨を砕いてやるからな!」
ーーアレ?
空耳??
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そしてまた前回と同様に、テオドールと一緒に帰ることになった俺。
ーー次回からはエリオット先輩の言う通り、テオドールの下校までに屋敷に帰れる時間に学園に行くことにしよう、うん、絶対そうしよう!
そしてやっぱり前回と同様に、馬車の中で黙り込んだまま何も言わないテオドール。
うん、怒ってるね。これは、間違いなく怒ってる!
しかし、俺とて何も学習しないというわけではない!
しつこく何度も話しかけて失敗した前回の経験を活かし、今回はテオドールの怒りが収まるまで刺激することは避け、馬車の中では何も言わないことにした。
「……」
「……」
しかし、この沈黙! 地味につらい!!
こういうとき、俺とテオドールはいつもどれだけいろいろなことを語り合ってきたかということに嫌というほど気付かされる。
「……ああいう男が、好みなんですか?」
腕を組み、目を閉じていた俺に、テオドールが話しかけてきた。
「……好み?」
「……っ、オーバンのことですっ! 叔父様はっ、ああいう、身体が小さくて見た目が中性的な男のほうが本当は好きなんですかっ!? 俺は、叔父様が騎士のような男が好きだと言うから、これまで一生懸命鍛えてきたのにっ!!」
「はあっ!?」
テオドールはぎりぎりと歯ぎしりした。
「俺っ、すごく悔しいですっ! 叔父様は昔から俺のこと、可愛い可愛いって褒めてくれていたのに、俺の背が伸びてから、全然……っ、頭も撫でてくれないしっ!
しかも、オーバンのこと、初めて会った時に綺麗で可愛い子だって言ってたし……!! 最近は俺を差し置いてオーバンとすごく仲良くしているみたいだし!
叔父様はもう俺のことなんて、可愛いと思ってくださらないんですかっ!?」
ーーええっ!? ちょっと待て! テオドールってばそんなことを考えていたのか!?
そんなテオドールの子供っぽくて可愛い独占欲に、俺は思わずニマニマしてしまった。
「テオ、誤解だよ! 俺にとって一番可愛いのはいつだってテオドールだよ! そんなの決まってるじゃないか! 最近頭を撫でてなかったのは、テオの身長が高くなって届かなくなっただけであって、俺はいつだってテオをなでなでしたいって思ってるよ!」
「本当、ですか?」
潤んだ漆黒の瞳。なぜか妙な色気があり、思わず俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。
「本当の本当だよ! オーバン君は、テオの学園の友達だろ? 失礼なことがあったら困ると思って対応しているだけであって……、そもそも俺はいつも言っている通り、かっこよくて勇敢な騎士みたいな男に昔から憧れてるんだ!」
「叔父様っ!!」
「ぐえっ……」
テオドールに力任せに抱きつかれ、俺は蛙が潰れたみたいな声を出した。
「叔父様っ、大好きです……っ!」
「俺も、大好きだよ、テオ」
抱き返すと、テオドールは俺の耳元で言った。
「叔父様、頭を撫でてもらっていいですか?」
「もちろん、いいよ!」
微笑む俺の膝に、テオドールは自分の頭を載せてきた。
ーー膝枕かよっ!!!!
うん、テオドールの顔が怖い。すごく、怖い。
腰の長剣を抜いたら、この場にいるもの全員真っ二つにされそうな勢い!!
それにしても俺の気配って一体何? はっ、もしかして俺ってなんか変な匂いとかしてる!?
「あのね、テオ、さっき偶然ここでオーバン君に会って……」
さり気なく袖口の匂いをくんくん嗅いでから、俺はテオドールに向かってへらりと微笑んだ。
「僕、ジュール叔父様にたくさんお手紙を書いたはずなのに、ジュール叔父様には一通も届いていないっていうんだ。ねえ、テオドールおかしいと思わない?」
またもやぶりっ子仕様に様変わりしたオーバンが、その可愛らしい唇を尖らせる。
「……」
オーバンの言葉に、テオドールはむっと口をへの字に曲げた。
「まさか、テオドールのせいで僕からのお手紙が叔父様に届かない、なんてこと、ないよね? テオドール?」
目を瞬かせるオーバンに、テオドールは左足を一歩引き、ついに腰の長剣に手をかけた。
「叔父様叔父様うるさい!! ジュール叔父様は俺の叔父様だっ! お前のじゃないっ!」
「わあっ、僕怖いっ! 叔父様ぁ、助けて!」
ちゃっかり俺の背中の後ろに隠れるオーバン。ちなみにちっとも怖そうじゃない。その証拠に赤い舌をぺろりと出している。
テオドールが一体何に腹をたてているのかはよくわからないが、とにかくオーバンとテオドールの仲はあまりよろしくないようだ。
しかしここは王立学園。そして相手は王族の親戚の公爵家の息子!
俺はテオドールに向き直った。
「テオ、お友達と喧嘩しちゃだめだよ。ほら、もうやめて。仲直りしよう!」
「……叔父様っ!」
「はいっ、ほら、ふたりは握手して。仲直り!!」
俺はテオドールとオーバンの手を取ると、無理やりふたりを近づけた。
「ほら、テオドール、君の大好きな叔父様がそうおっしゃってるんだ。握手して仲直りしようよ」
オーバンがテオドールに顎をしゃくる。
「貴様っ……」
テオドールはギリ、と唇を噛み締めたが、俺に手を取られてしぶしぶ従った。
「はい、じゃあ、握手ね」
二人の手を握らせた俺。
ーーあれ、俺ってば、年長者として割といいことしてる感じ?
だが、テオドールと握手したオーバンは、あっという間に顔が真っ赤になった。
「ぐあっ! っ!!!! 痛っア、クソっ、このっ……!」
「今度叔父様に手を出したら、お前の全身の骨を砕いてやるからな!」
ーーアレ?
空耳??
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そしてまた前回と同様に、テオドールと一緒に帰ることになった俺。
ーー次回からはエリオット先輩の言う通り、テオドールの下校までに屋敷に帰れる時間に学園に行くことにしよう、うん、絶対そうしよう!
そしてやっぱり前回と同様に、馬車の中で黙り込んだまま何も言わないテオドール。
うん、怒ってるね。これは、間違いなく怒ってる!
しかし、俺とて何も学習しないというわけではない!
しつこく何度も話しかけて失敗した前回の経験を活かし、今回はテオドールの怒りが収まるまで刺激することは避け、馬車の中では何も言わないことにした。
「……」
「……」
しかし、この沈黙! 地味につらい!!
こういうとき、俺とテオドールはいつもどれだけいろいろなことを語り合ってきたかということに嫌というほど気付かされる。
「……ああいう男が、好みなんですか?」
腕を組み、目を閉じていた俺に、テオドールが話しかけてきた。
「……好み?」
「……っ、オーバンのことですっ! 叔父様はっ、ああいう、身体が小さくて見た目が中性的な男のほうが本当は好きなんですかっ!? 俺は、叔父様が騎士のような男が好きだと言うから、これまで一生懸命鍛えてきたのにっ!!」
「はあっ!?」
テオドールはぎりぎりと歯ぎしりした。
「俺っ、すごく悔しいですっ! 叔父様は昔から俺のこと、可愛い可愛いって褒めてくれていたのに、俺の背が伸びてから、全然……っ、頭も撫でてくれないしっ!
しかも、オーバンのこと、初めて会った時に綺麗で可愛い子だって言ってたし……!! 最近は俺を差し置いてオーバンとすごく仲良くしているみたいだし!
叔父様はもう俺のことなんて、可愛いと思ってくださらないんですかっ!?」
ーーええっ!? ちょっと待て! テオドールってばそんなことを考えていたのか!?
そんなテオドールの子供っぽくて可愛い独占欲に、俺は思わずニマニマしてしまった。
「テオ、誤解だよ! 俺にとって一番可愛いのはいつだってテオドールだよ! そんなの決まってるじゃないか! 最近頭を撫でてなかったのは、テオの身長が高くなって届かなくなっただけであって、俺はいつだってテオをなでなでしたいって思ってるよ!」
「本当、ですか?」
潤んだ漆黒の瞳。なぜか妙な色気があり、思わず俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。
「本当の本当だよ! オーバン君は、テオの学園の友達だろ? 失礼なことがあったら困ると思って対応しているだけであって……、そもそも俺はいつも言っている通り、かっこよくて勇敢な騎士みたいな男に昔から憧れてるんだ!」
「叔父様っ!!」
「ぐえっ……」
テオドールに力任せに抱きつかれ、俺は蛙が潰れたみたいな声を出した。
「叔父様っ、大好きです……っ!」
「俺も、大好きだよ、テオ」
抱き返すと、テオドールは俺の耳元で言った。
「叔父様、頭を撫でてもらっていいですか?」
「もちろん、いいよ!」
微笑む俺の膝に、テオドールは自分の頭を載せてきた。
ーー膝枕かよっ!!!!
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