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第110話 新入り
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「ジュール様、シャンタル様から伺いました。大変つらいご決断をされたとか。
この者は、新入りですが、ジュール様のご希望にかなう者と思い、連れてまいりました」
アンドレは、隣に立ったとても背の高い男を示した。落ち着いた雰囲気からして、俺よりも少し年上だろうか……?
黒い外套を目深にかぶっており、その男の表情はうかがいしれない。
俺がちらりと男に目をやると、男は気まずそうにうつむいた。
「とても屈強な身体をしておりますでしょう。
この者は、騎士をしておりましたが、魔獣との闘いで大きな傷を負い、引退せざるをえなくなったため、今回特別に私が組織に引き抜いたのです」
「そう、なんだ……」
なぜ元騎士がアンドレの組織に? という素朴な疑問が俺の頭に浮かんだ。
「ジュール様、今、舞台や小説の影響で、騎士人気は高まるばかりなのですよ!」
俺の疑念を感じ取ったのか、アンドレは俺に優美に微笑みかける。
――まあ、たしかに、屈強な騎士を所望するご婦人は案外多いのかもしれない。
「シャンタル様とも綿密に相談し、これぞと思う相手を連れてまいりました。
この者は、ジュール様の専属にする予定ですので、どうか可愛がってやってくださいね」
アンドレは、さきほどのお返しとばかりに、黒い外套の男の二の腕あたりをつねり上げる。
だが、さすがは元騎士、アンドレの地味な嫌がらせにはピクリとも反応しなかった。
「え? でも専属って……?」
たしか、淫紋の影響で俺の相手は輪番制だったはずだが。
「大丈夫です。この者は腐っても元騎士ですので、自制心だけはかなりのものはあります。
ジュール様の目のくらむような魅力にも、きっと……、くっ、ジュール様っ、嫌なら早くおっしゃってください!!
すぐにでも私がこの男の代わりを務めさせていただき、ジュール様をめくるめく快楽の世界へ…‥っ、ぐはっ!」
ドンっと鈍い音がして、アンドレが膝から崩れ落ちた。
「アンドレっ!? 大丈夫っ!?」
「ぐっ、この……、恩知らずめがっ……、私がどんな気持ちで、ジュール様とあなたを引き合わせていると思っているんですっ!
いいんですかっ、私の協力なくしては、あなたは……っ!」
アンドレは口元をおさえながら、ふらふらと立ち上がった。
「あの、アンドレ……?」
アンドレの様子から、隣にいる男に憎しみに似た感情すら抱いているようにも思える。
もしかして、厄介払い的な感じで俺の元に派遣されたのだろうか。
俺は少しばかりその元騎士の男に同情した。
「とーにーかーくっ、ジュール様、私としては苦渋に満ちた選択ではありましたがっ、
どうかこの者をよろしくお願いいたします。ただ、こちらのものは、剣をふるう分には申し分ないのですが
そういった方面に関してはまるで素人でございますので、何か不手際がありましたら、すぐに私にお申し付けくださいねっ!
すぐさま、私がアフターフォローとして貴方様をやさしく……っ、ぐっ、くそっ、貴様っ……、後で覚えてろよっ!!」
「アンドレ、大丈夫なの!?」
よろめくアンドレに手を差し伸べた俺だったが、アンドレが俺の手を掴むより先に、元騎士の男が俺の手を掴んだ。
「わっ!!」
そのまま元騎士の男に抱き込まれるような形になり、俺は戸惑った。
服の上からでも鍛え抜かれた筋肉が俺の頬に触れた。
男の胸から、熱くて速い鼓動が伝わってくる。
「まったく、手の早い奴め!
ジュール様、とにかく、この男については貴方様が育てるおつもりで、ご指導くださいませ。
なにぶん、未熟者ですが、どうかご容赦を……。
おい、貴様! しっかりやるんだぞ! もし貴様がジュール様を満足させることができなければ、即座に私が貴様に取って代わることになるからよく覚えておけっ!」
いつものアンドレに似つかわしくない粗野な口ぶりで元騎士の男に吐き捨てるように言うと、アンドレは足を踏み鳴らして俺の部屋から出ていってしまった。
そして、とたんに部屋の明かりは落とされた。
「あの……」
俺が元騎士の男を見上げると、その男はそのまま俺を横抱きにしてベッドに運んだ。
「あの、えっと……、その、わっ……!」
丁寧な手付きでベッドに落とされる。
そして、男は黒い外套を取った。
ーーその日は、満月だった。
だから、窓から差し込む月明かりで、明かりを完全に落とした部屋でも、俺はその男の姿をとらえることができた。
「……っ!」
深い闇の色の髪、それと同じ色の瞳。
男の顔の上部は、黒いベルベットの仮面で覆われていた。
それでもーー。
ーーテオドールに、似てる……。
男の姿かたちは、テオドールに酷似していた。
この者は、新入りですが、ジュール様のご希望にかなう者と思い、連れてまいりました」
アンドレは、隣に立ったとても背の高い男を示した。落ち着いた雰囲気からして、俺よりも少し年上だろうか……?
黒い外套を目深にかぶっており、その男の表情はうかがいしれない。
俺がちらりと男に目をやると、男は気まずそうにうつむいた。
「とても屈強な身体をしておりますでしょう。
この者は、騎士をしておりましたが、魔獣との闘いで大きな傷を負い、引退せざるをえなくなったため、今回特別に私が組織に引き抜いたのです」
「そう、なんだ……」
なぜ元騎士がアンドレの組織に? という素朴な疑問が俺の頭に浮かんだ。
「ジュール様、今、舞台や小説の影響で、騎士人気は高まるばかりなのですよ!」
俺の疑念を感じ取ったのか、アンドレは俺に優美に微笑みかける。
――まあ、たしかに、屈強な騎士を所望するご婦人は案外多いのかもしれない。
「シャンタル様とも綿密に相談し、これぞと思う相手を連れてまいりました。
この者は、ジュール様の専属にする予定ですので、どうか可愛がってやってくださいね」
アンドレは、さきほどのお返しとばかりに、黒い外套の男の二の腕あたりをつねり上げる。
だが、さすがは元騎士、アンドレの地味な嫌がらせにはピクリとも反応しなかった。
「え? でも専属って……?」
たしか、淫紋の影響で俺の相手は輪番制だったはずだが。
「大丈夫です。この者は腐っても元騎士ですので、自制心だけはかなりのものはあります。
ジュール様の目のくらむような魅力にも、きっと……、くっ、ジュール様っ、嫌なら早くおっしゃってください!!
すぐにでも私がこの男の代わりを務めさせていただき、ジュール様をめくるめく快楽の世界へ…‥っ、ぐはっ!」
ドンっと鈍い音がして、アンドレが膝から崩れ落ちた。
「アンドレっ!? 大丈夫っ!?」
「ぐっ、この……、恩知らずめがっ……、私がどんな気持ちで、ジュール様とあなたを引き合わせていると思っているんですっ!
いいんですかっ、私の協力なくしては、あなたは……っ!」
アンドレは口元をおさえながら、ふらふらと立ち上がった。
「あの、アンドレ……?」
アンドレの様子から、隣にいる男に憎しみに似た感情すら抱いているようにも思える。
もしかして、厄介払い的な感じで俺の元に派遣されたのだろうか。
俺は少しばかりその元騎士の男に同情した。
「とーにーかーくっ、ジュール様、私としては苦渋に満ちた選択ではありましたがっ、
どうかこの者をよろしくお願いいたします。ただ、こちらのものは、剣をふるう分には申し分ないのですが
そういった方面に関してはまるで素人でございますので、何か不手際がありましたら、すぐに私にお申し付けくださいねっ!
すぐさま、私がアフターフォローとして貴方様をやさしく……っ、ぐっ、くそっ、貴様っ……、後で覚えてろよっ!!」
「アンドレ、大丈夫なの!?」
よろめくアンドレに手を差し伸べた俺だったが、アンドレが俺の手を掴むより先に、元騎士の男が俺の手を掴んだ。
「わっ!!」
そのまま元騎士の男に抱き込まれるような形になり、俺は戸惑った。
服の上からでも鍛え抜かれた筋肉が俺の頬に触れた。
男の胸から、熱くて速い鼓動が伝わってくる。
「まったく、手の早い奴め!
ジュール様、とにかく、この男については貴方様が育てるおつもりで、ご指導くださいませ。
なにぶん、未熟者ですが、どうかご容赦を……。
おい、貴様! しっかりやるんだぞ! もし貴様がジュール様を満足させることができなければ、即座に私が貴様に取って代わることになるからよく覚えておけっ!」
いつものアンドレに似つかわしくない粗野な口ぶりで元騎士の男に吐き捨てるように言うと、アンドレは足を踏み鳴らして俺の部屋から出ていってしまった。
そして、とたんに部屋の明かりは落とされた。
「あの……」
俺が元騎士の男を見上げると、その男はそのまま俺を横抱きにしてベッドに運んだ。
「あの、えっと……、その、わっ……!」
丁寧な手付きでベッドに落とされる。
そして、男は黒い外套を取った。
ーーその日は、満月だった。
だから、窓から差し込む月明かりで、明かりを完全に落とした部屋でも、俺はその男の姿をとらえることができた。
「……っ!」
深い闇の色の髪、それと同じ色の瞳。
男の顔の上部は、黒いベルベットの仮面で覆われていた。
それでもーー。
ーーテオドールに、似てる……。
男の姿かたちは、テオドールに酷似していた。
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