【完結】究極のざまぁのために、俺を捨てた男の息子を育てています!

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第118話 令嬢たち

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「このままお二人を帰すわけにはまいりませんわ」

「黒の聖騎士パラディン、貴方には大切な使命がまだ残っているのです」

「さあ、殿下がお待ちですわよ」


 三人のご令嬢たちは、俺たちを取り囲むようにじわりじわりと近づいてきた。


「……っ、どうかご容赦ください。私は……っ」

 テオドールは、ぐっと唇を噛みしめる。


「黒の聖騎士パラディン、お忘れではないでしょうね?
あなたは、のご報告をするという責務があるのですよ」

 ご令嬢の一人の言葉に、テオドールの頬にはさっと朱が走った。


「昨晩の任務って、聖教会での儀式のこと?」

 テオドールに抱きかかえられたままの俺が聞くと、テオドールの息遣いがなぜか荒くなってくるのがわかった。



「殿下がどれほど首を長くしてお待ちになっていらっしゃるか」

「さあ、参りましょう。いつもの中庭のテラスにお茶を用意しておりますわ」


「しかしっ……、いまは叔父を先に屋敷に送り届けなければ……っ」


 まるで手強い敵を前にしているかのように、テオドールの身体は硬直し、額には汗が滲んでいる。


「テオ……? 大丈夫?」


「殿下も私達も、ジュール卿が同席されていても全く問題はございませんことよ」

「ええ、そのほうが、より事の子細が把握できるというものですわ」

「ジュール卿は甘い物がお好きだとか。ブルーベリーのタルトはいかがですか? 今日はとっておきの朝摘みの……」


「私の叔父には何も言わないでくださいっ!!」

 テオドールが語気を強めると、3人の令嬢たちは一様に羽の扇で口元を隠した。

「あらあら」
「まあまあ」
「照れていらっしゃるのね……」


「テオ?」


「叔父様っ、申し訳ありません。先に、屋敷に戻っていてください……」

 テオドールは俺を廊下にゆっくりと下ろした。


「ジュール卿のことはご心配なく。近衛師団に屋敷まで安全に送らせます」

 令嬢の一人が合図すると、廊下の向こうから赤い制服を着た近衛師団の隊員が数名こちらに向かってくる。


「叔父様っ、夕食までには必ず戻りますから!」

「うん、待ってるよ、テオ!」

 
 3人のご令嬢に連行されるかのように王宮の長い廊下を歩いていくテオドールの後ろ姿を、俺はずっと見守っていた。



 ーー朝摘みのブルーベリーのタルト、ちょっと食べたかったな……。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・








 もちろん、約束通りテオドールはちゃんと夕食までに屋敷に戻ってきた。

 きたの、だが……、


「テオ、どうかしたの?」

「いえっ……」

 俺が顔をあげると、慌てて俺から目をそらずテオドール。
 さっきからずっとこんな調子だ。


 俺が食べている最中に視線を感じることすでに数十回。しかし顔を上げた途端に、テオドールは俺と目を合わせたら終わりだと言わんばかりに、顔を伏せてしまうのだ。


「ねえ……、テオ、なにか言いたいことがあるんじゃないのか?」

 俺はフォークとナイフを皿の上に置いた。


「いえ……」

 テオドールの皿を見やると、さっきから全然食事が進んでいないことがわかる。


「気になるじゃないか。どうしたんだ? シャルロット殿下とご令嬢たちになにか言われたの?」

「言われた、というか……」

 テオドールは言いよどむ。


「じゃあ、なんでさっきから……」

「叔父様っ、王から剣術大会のことを聞いたというのは本当ですかっ!?」

 意を決したように、テオドールが俺に言った。


「え? あ、ああ、うん、聞いたよ」

 俺は頷く。


「それでっ、叔父様は……っ!?」

 探るような視線。


「え? うん、もちろんテオドールを応援するよ。でも、テオが絶対優勝するに決まってるんだよね?」


「本当ですかっ!? 叔父様は俺を応援してくださるのですかっ!?」

 テオドールが目を輝かせて、身を乗り出してきた。


「剣術大会には、オーバンも出ると息巻いているんです! それでも……、叔父様は俺を応援してくださるのですねっ!?」

「オーバン君も!?」

 シャルロットとテオドールの結婚を自分が阻止するためだろうか。テオドールに剣術で勝てる見込みはまずなさそうだが、王女に対する熱い想いがオーバンを駆り立てたのだろう。


「……やはり、叔父様はオーバンの応援を……」

 テオドールが恨みがましい目で俺を見てきたので、俺は慌てて首を振った。


「何を言ってるんだよ! もちろん、テオを一番に応援するよ!」

「本当ですかっ!?」

「本当、だよ?」

 テオドールは一体なにをそんなに心配しているのか。


「叔父様が……、俺を応援……っ、やはり殿下のおっしゃっていたことは本当だったのか……」


 頬を染めて俺を見つめるテオドールに、はたと気付いた。


 ーーそうか、テオドールは自分がシャルロット王女と結婚することに、負い目を感じているのだ。

 責任感の強いテオドールは、ここまで育ててくれた俺をさし置いて、自分が王女と結婚してしまうことについて、俺に申し訳なく思っているのに違いない。


 だから、俺は微笑んだ。


「大丈夫だよ。心配しなくてもテオが絶対優勝するよ。テオが優勝して、シャルロット王女との結婚が認められたら、またお父様は大はしゃぎだろうね。俺もすごく鼻が高いよ!
これからきっと忙しくなるよ! いろいろ慌ただしくなるだろうけど、俺も準備とかちゃんと手伝うから安心して!」



 だが、テオドールの反応は、俺が想像していたものとは全く違っていた。



「は? 結婚? 俺が、殿下と?」


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