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第117話 王宮の廊下にて
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俺は慌ててオーバンに駆け寄った。
「大丈夫っ!? オーバン君っ!」
「ゲホッ、っ……」
オーバンは咳き込みながらも、ふらふらと身体を起こした。
「しっかりして! 俺が誰だかわかる?」
俺は膝をついてオーバンの背中を支えて、まだぼんやりとしているグリーンの瞳を覗き込んだ。
「……ジュール……」
よかった。意識はちゃんとしてる!
「叔父様っ、なんでこんなやつのことを心配するのですかっ!?」
ほっとする俺の頭の上から、テオドールの怒りに満ちた声が降ってきた。
いや、普通に心配するだろう。
王宮のど真ん中で、自分の甥がうっかり(?)友人かつ聖騎士団の仲間を絞め殺そう(?)としていたのだからっ!!!!
人払いしたのか、それとも恐れをなして逃げ出したのか、さきほど扉の前にいたはずの衛兵の姿はもうどこにもない。
「テオっ、いったいどういうつもりだよっ! 親友に暴力を振るうだなんて、君らしくもない!」
俺が顔を上げてテオドールをきっと睨むと、テオドールは握りしめた拳をぶるぶると震わせた。
「叔父様っ……、その男は親友などではありませんっ!」
ーーいや、そういうことじゃなく!
「テオ! 君は聖騎士なんだよ! 聖騎士は、騎士だけでなく、皆の手本となるような……」
「こいつは……、俺の大切な叔父様を拐かした挙げ句、勝手に殿下とまで会わせて……。
俺がどれだけ叔父様を探し回ったかわかりますかっ!?
もしかしたら、また叔父様は俺の目の前から消えてしまったのではないかと、俺は気が気でなかったというのに、叔父様は俺よりもそんな男のことを気に掛けるというのですねっ!
やはりっ……、叔父様は昔からオーバンのことがっ……」
ぎりぎりと歯ぎしりを始めるテオドール。こうなってしまったら聖騎士がどうこう言っている場合じゃない。
19歳になり、テオドールはもうすっかり大人だと思い込んでいた俺だったが、どうやらそういうわけでもないようだ。
「オーバン君、まだ立ち上がらないで座っててね」
俺はオーバンの肩をポンと叩くと、立ち上がって目の前のテオドールを見上げた。
ーー本当に、こんなに大きくなっちゃったんだな。
なぜだか感慨深い気分になりながらも、俺は両手を広げると、背伸びしてテオドールにぎゅっと抱きついた。
「テオ、心配かけてごめんね」
「……っ!!」
びっくりしたのか、テオドールが慌てて腰を引いたのがわかった。
「テオ?」
「……くっ、叔父様っ……、そうやって、俺をっ……、いつも、子供扱いしてっ……、クソッ、俺は……っ、叔父様っ!!」
「わあっ……」
急に視界が変わったと思ったら、俺はテオドールに横抱きにされていた。
「このままここにいては危険ですっ! 叔父様っ、いますぐ屋敷に戻りましょう!
大丈夫です。俺がこのまま連れていきますっ!」
息がかかるくらいそばに、テオドールのこれ以上なく整った顔がある。
「え!? ちょっと? テオ! 俺っ、歩けるからっ!
もし抱えていくんだったら、オーバン君をっ!」
「オーバンは曲がりなりにも我が聖騎士団の一員です。あれしきのことで身体に支障があるようでは、副団長など務まるはずもありません!」
怒ったように言うテオドール。俺をおろしてくれる様子もなく、ずんずんと廊下を進んでいく。
オーバン君って聖騎士団の副団長だったんだ……と、ぼんやり思っていたその時、テオドールの足が止まった。
「お待ちなさい。黒の聖騎士」
凛とした声。
前方を見ると、三人の麗しい女性が、俺たちの行く手に立ちふさがっていた。
「あなた方は……」
間違いない。
目の前にいるのは、すっかり美しく成長したシャルロット殿下の取り巻きのご令嬢たちだ!!!!
「大丈夫っ!? オーバン君っ!」
「ゲホッ、っ……」
オーバンは咳き込みながらも、ふらふらと身体を起こした。
「しっかりして! 俺が誰だかわかる?」
俺は膝をついてオーバンの背中を支えて、まだぼんやりとしているグリーンの瞳を覗き込んだ。
「……ジュール……」
よかった。意識はちゃんとしてる!
「叔父様っ、なんでこんなやつのことを心配するのですかっ!?」
ほっとする俺の頭の上から、テオドールの怒りに満ちた声が降ってきた。
いや、普通に心配するだろう。
王宮のど真ん中で、自分の甥がうっかり(?)友人かつ聖騎士団の仲間を絞め殺そう(?)としていたのだからっ!!!!
人払いしたのか、それとも恐れをなして逃げ出したのか、さきほど扉の前にいたはずの衛兵の姿はもうどこにもない。
「テオっ、いったいどういうつもりだよっ! 親友に暴力を振るうだなんて、君らしくもない!」
俺が顔を上げてテオドールをきっと睨むと、テオドールは握りしめた拳をぶるぶると震わせた。
「叔父様っ……、その男は親友などではありませんっ!」
ーーいや、そういうことじゃなく!
「テオ! 君は聖騎士なんだよ! 聖騎士は、騎士だけでなく、皆の手本となるような……」
「こいつは……、俺の大切な叔父様を拐かした挙げ句、勝手に殿下とまで会わせて……。
俺がどれだけ叔父様を探し回ったかわかりますかっ!?
もしかしたら、また叔父様は俺の目の前から消えてしまったのではないかと、俺は気が気でなかったというのに、叔父様は俺よりもそんな男のことを気に掛けるというのですねっ!
やはりっ……、叔父様は昔からオーバンのことがっ……」
ぎりぎりと歯ぎしりを始めるテオドール。こうなってしまったら聖騎士がどうこう言っている場合じゃない。
19歳になり、テオドールはもうすっかり大人だと思い込んでいた俺だったが、どうやらそういうわけでもないようだ。
「オーバン君、まだ立ち上がらないで座っててね」
俺はオーバンの肩をポンと叩くと、立ち上がって目の前のテオドールを見上げた。
ーー本当に、こんなに大きくなっちゃったんだな。
なぜだか感慨深い気分になりながらも、俺は両手を広げると、背伸びしてテオドールにぎゅっと抱きついた。
「テオ、心配かけてごめんね」
「……っ!!」
びっくりしたのか、テオドールが慌てて腰を引いたのがわかった。
「テオ?」
「……くっ、叔父様っ……、そうやって、俺をっ……、いつも、子供扱いしてっ……、クソッ、俺は……っ、叔父様っ!!」
「わあっ……」
急に視界が変わったと思ったら、俺はテオドールに横抱きにされていた。
「このままここにいては危険ですっ! 叔父様っ、いますぐ屋敷に戻りましょう!
大丈夫です。俺がこのまま連れていきますっ!」
息がかかるくらいそばに、テオドールのこれ以上なく整った顔がある。
「え!? ちょっと? テオ! 俺っ、歩けるからっ!
もし抱えていくんだったら、オーバン君をっ!」
「オーバンは曲がりなりにも我が聖騎士団の一員です。あれしきのことで身体に支障があるようでは、副団長など務まるはずもありません!」
怒ったように言うテオドール。俺をおろしてくれる様子もなく、ずんずんと廊下を進んでいく。
オーバン君って聖騎士団の副団長だったんだ……と、ぼんやり思っていたその時、テオドールの足が止まった。
「お待ちなさい。黒の聖騎士」
凛とした声。
前方を見ると、三人の麗しい女性が、俺たちの行く手に立ちふさがっていた。
「あなた方は……」
間違いない。
目の前にいるのは、すっかり美しく成長したシャルロット殿下の取り巻きのご令嬢たちだ!!!!
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