【完結】究極のざまぁのために、俺を捨てた男の息子を育てています!

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第116話 王女とジュール

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「……くっ、ジュール卿、このたびは私と、その側近の愚かな行為により、2年半以上もこの国を離れざるを得ない状況をつくりだし、大変反省しております……」

 シャルロット王女が俺に告げる。

 俺の記憶の中でのシャルロット王女は、まだもっと年若く、どちらかというと幼いという印象が強かった。だが、俺の目の前にいる19歳になった王女は、もうすっかり美しい大人の女性に変貌を遂げていた。
 その美しさは、見る者の心までも奪うようで、まさに聖女そのものだった。


「いえっ、もったいないお言葉でございます。もとは言えば、すべては私の不徳が致すところでございます。殿下にはご迷惑をおかけして……」

 俺は深々と首を垂れる。

「ジュール卿の殺害を画策した主犯のブロイは、一ヶ月以上の拷問の上処刑、その他かかわったものすべてを拷問の上、国外追放でよろしいでしょうか?」

「は……っ!?」

 鈴の鳴るような可愛らしい声で、とてつもなく恐ろしいことを告げられ、俺の身体は硬直した。


「拷問はどんな種類がお好みですか? 水責め? 何もない部屋に閉じ込めて徐々に衰弱させる? 薬を使った古来ゆかしい方法もありますわ。 城の地下には拷問器具もたくさんありますので、一度見学に……」

「いえっ! 拷問など、そのような残酷な処分は私は望みません! できれば、主犯のブロイに関しても、命は助けていただきたく……」

 俺の言葉に、シャルロット殿下は息を飲んでいた。


「まああああっ! ジュール卿はなんと、なんと寛大なお心をお持ちなんでしょう!」

「さすがはダンデス家の嫡男だけあるな。悪人にすら、情けをかけようという心意気は見事だ!」

 王女と王の誉め言葉に俺は首を振った。

「いえっ、俺はこの通り、元気にしておりますし、ブロイ氏もこの国を思っての犯行だったと聞いております。それは間違った行動ではありましたが、命をもって償わせるのは私は反対で……、あっ、申し訳ありません。俺は、大変無礼なことを……」

「いえいえ、良いのです。ジュール卿が大変心根の優しい青年だということがわかり、私も安心いたしましたわ」

 王妃が目を細めて俺を見る。


「あの……」

「これで私も、久方ぶりの王立学園の剣術大会を開くという決心がついたぞ!」

 王の言葉に、俺はドキリとした。

 ――王立学園の剣術の御前試合。


 そこでは、優勝したものは王に何でも願いを聞き遂げてもらうことができる……。

 だが、それは本当のところは建前で、実際は王女の結婚相手を国民に知らしめる場になるはずだ……と、オーバンは俺に教えてくれた。

 実際、その御前試合は、定期的に開催されるものなどではなく、歴史的にも王族への求婚のための華々しいイベントとなることが常であったらしい。

 事実、剣術大会の優勝候補は聖騎士であるテオドール以外にはおらず、ここでテオドールが優勝することで、彼の出自や王女との身分の違いに口を出す王の側近たちを形式上黙らせることができるというのだ。


「ああー、楽しみですわ。楽しみですわ! 黒の聖騎士が優勝し、会場一面が花吹雪に包まれる姿が目に浮かびますわ!」

 王女は羽の扇子を閉じ、うっとりと握りしめる。

 その後に行われる、テオドールからの求婚の様子を、夢見ているのだろうか…‥?


「シャルロット、そう浮かれるでないぞ。何事も準備が必要なのだからな」

「わかっておりますわ、お父様」

「というわけだから、その、なんだ……、うん、そなたは間違いのないよう段取りを進めるように。これはこの国にとっても大変重要な式典であるからな」

 王がいかめしく咳ばらいをする。


「……はい」

「ジュール卿もしっかり心づもりをしておいてくださいませね」

 ウキウキといった様子で、王女が俺に念を押す。

「……はい」

「ああーっ、ついに、ついに我が野望が実現っ! ジュール卿もすっかりその気でっ!?
それにしても、日焼けしたジュール卿、クルっ!!
危うく聖騎士団の全団員の夜のオカズになりかけたジュール卿の髪を伸ばしたところも見たかったけど、誰にも見せたくないから自ら切り落とすとか執着どんだけッ!?
ああ、でも、わかる、わかりますわ! こんなに無防備な姿を人目にさらしたら誰だって……!!
ああっ、なんでしょう、この胸の高鳴り! 久々の滾る感じはっ……! すぐに皆さまに報告せねばッ!
祭りよっ、祭り……、ああ、この際黒の聖騎士も招集して……」

 王女は急に立ち上がると、扇が壊れるのではないかと思うほど、ぎりぎりと両手で締め上げていた。

「おかず、祭り……? ……殿下?」

 うん……、やっぱり、シャルロット殿下は以前とあまりおかわりはないようだ。


「シャルロットっ!! はしたないですわ。あなた、そのおかしな言動を反省したと言ったのは嘘だったの!?」

 王妃は厳しい口調で王女をたしなめる。

「いえ、お母様、それとこれとは……っ! ……申し訳ありません」

 シャルロットは、慌てて椅子に座り直すと扇で顔を覆った。


「……とにかく、そなたは今後もしっかりと聖騎士・テオドールを支えていくように。いまや聖騎士は我が国の誇りである。
聖騎士の心の安寧は、すなわち国の安寧でもあるのだからな!」

「はっ。承知いたしました」



 結局、王との謁見もテオドールの話で締めくくられたのだった。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





 謁見の間を出ると、なんと王宮の廊下のど真ん中で、テオドールがオーバンの首を締め上げているところだった。


「叔父様っ!!!!」

 テオドールは俺を見ると、オーバンを掴んでいた手を離す。その衝撃でオーバンは、赤い絨毯の床にドサリと倒れ込んだ。


「テオ? え、何で? っていうか、オーバン君っ!? 大丈夫っ!?」



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