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第115話 拝謁
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というわけで、いま、俺とオーバンは王宮へと向かう馬車の中にいる。
「あのさ、オーバン君、テオドールが俺を囲い込んでるってどういう意味? なにかの間違いじゃないのかな? だって……」
「シャルロットは、ジュールの帰国早々、ジュールへの面会を希望したそうだ。ところが、テオドールのやつときたら、まだ叔父様の体調が思わしくない、とか、叔父様の精神面がまだ整ってない……とか、なにかといろいろ理由をつけて未だにシャルロットはジュールに会えていない状態なんだよ。あまつには、アンタのいる別宅に『未だ危険が去ったわけではない……』とかなんとか言って結界を張る始末で……」
「そうなの? でも俺、まだ戻ってきて一週間もたってないから……」
「シャルロットはさ、ジュールに対して責任を感じてるんだ」
オーバンの言葉に、俺は目を見開いた。
「なんで? シャルロット殿下は、なにも……」
「そもそも、シャルロットがジュールに懸想してるって誤解から、アンタの誘拐事件は始まったわけだろ? シャルロットは、そのことがわかってから、自分のいままでの行動をすごく反省してるんだよ」
「そうなんだ……」
シャルロット王女にはいらぬ負担をかけてしまっているようだ。それならば、俺も早く殿下に拝謁してその誤解を解かなければ!
「テオドールはさ、シャルロットにこれ以上ジュールのことを心配してほしくないんじゃないかな?」
オーバンは長い脚を組み替えた。
「心配……?」
「ジュールがいなくなった後、シャルロットもすごく落ち込んでさ。それ以降、魔力もどんどん弱くなって……。前にも言っただろ? そんなシャルロットをずっと支えてきたのが、テオドールだ。シャルロットはテオドールを励まし、テオドールもシャルロットにずっと寄り添ってきた。二人はずっと一緒で……。
ジュール、言ってみれば、あんたは二人のキューピッドかもしれないな」
オーバンは言うと、ぷいっと窓の外を向いた。
「オーバン君……」
「ったく、いくらなんでも俺だって諦めがついたよ。この聖騎士団の制服を見たら、シャルロットのテオドールへのこだわりがわかるだろ?」
オーバンは自身の漆黒のマントを俺の前に広げてみせた。
「制服?」
「聖騎士イコール、純白だろ!? もちろん昔っから、聖騎士団っつったら、白の騎士服が基本だよ! なのにさ、シャルロットときたら、テオドールには黒が一番似合う、とか言って、無理やり聖騎士団の制服を漆黒に変えたんだ!」
そういえば、あのブロイも、聖騎士は純白とかなんとか言っていたような気が……。
「俺には絶対黒じゃなくて白のほうが似合うのにっ! なあ、ジュールもそう思うだろっ!?」
オーバンの美形のドアップが、俺に迫る。
「え!? あ? うん? でも、オーバン君はかっこいいから、何色でもすごく似合ってるよ!」
「ジュールっ!!!!」
オーバンは、力任せに俺に抱きついてきた。
「ぐえっ……!」
「やっぱりアンタだけだよ! 俺のことを本当にわかってくれるのは!
テオドールが、剣術大会で優勝してシャルロットとの結婚が決まったら、すかさず俺たちも盛大な式を挙げようなっ!」
「はいぃ??」
ーー剣術大会? シャルロットとの結婚? なにそれ?
それより、なにより、オーバンと俺との婚約ってまだ有効だったんかーいっ!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「拝謁の間には、ダンデス様しかお通しできません」
扉の前に経つ衛兵は、にべもなく言った。
「なんだって? この聖騎士団の制服が目に入らないのかよっ?」
食って掛かるオーバン。やはり聖騎士団の団員というのは、それなりの力を持っているようだ。
「殿下からのご命令です」
「チッ、シャルロットのやつ、ジュールを連れてくれば後は用済みってことかよっ」
オーバンの表情からは、まだシャルロットへの諦めきれない慕情がありありと見て取れた。
俺の心はチクリと痛む。
「じゃ、ジュール、シャルロットによろしく伝えてくれ」
オーバンは俺の背中を軽く叩いた。
「うん、ありがとう。オーバン君」
扉が開かれ、俺は拝謁の間の中央に進み出る。
俺は、その顔触れに思わず立ちすくんでしまった。
――シャルロット殿下だけでなく、国王陛下まで!
国王陛下、王妃、王女がそれぞれの椅子に腰かけ、俺に対峙していた。
「……っ!!」
思わず右手と右足が同時に出そうになる俺だったが、とりあえず慣例通り、天鵞絨の絨毯の前で恭しく片膝をついた。
「ジュール・ダンデスにございます。このたびは、ご尊顔を拝し恐悦至極に存じます。国王陛下におかれましては……」
「堅苦しい挨拶は良い。面を上げよ」
「はっ」
俺が顔を上げると、国王陛下はなにか満足気に口元を緩めた。
「……?」
王妃と王女はそれぞれ豪華な羽の扇で、口元を隠してすまし顔をしているが、なにかこらえきれない感情を抑え込んでいるようにも見えた。
特にシャルロット王女の身体は、なぜか小刻みに震えていた。
「あのさ、オーバン君、テオドールが俺を囲い込んでるってどういう意味? なにかの間違いじゃないのかな? だって……」
「シャルロットは、ジュールの帰国早々、ジュールへの面会を希望したそうだ。ところが、テオドールのやつときたら、まだ叔父様の体調が思わしくない、とか、叔父様の精神面がまだ整ってない……とか、なにかといろいろ理由をつけて未だにシャルロットはジュールに会えていない状態なんだよ。あまつには、アンタのいる別宅に『未だ危険が去ったわけではない……』とかなんとか言って結界を張る始末で……」
「そうなの? でも俺、まだ戻ってきて一週間もたってないから……」
「シャルロットはさ、ジュールに対して責任を感じてるんだ」
オーバンの言葉に、俺は目を見開いた。
「なんで? シャルロット殿下は、なにも……」
「そもそも、シャルロットがジュールに懸想してるって誤解から、アンタの誘拐事件は始まったわけだろ? シャルロットは、そのことがわかってから、自分のいままでの行動をすごく反省してるんだよ」
「そうなんだ……」
シャルロット王女にはいらぬ負担をかけてしまっているようだ。それならば、俺も早く殿下に拝謁してその誤解を解かなければ!
「テオドールはさ、シャルロットにこれ以上ジュールのことを心配してほしくないんじゃないかな?」
オーバンは長い脚を組み替えた。
「心配……?」
「ジュールがいなくなった後、シャルロットもすごく落ち込んでさ。それ以降、魔力もどんどん弱くなって……。前にも言っただろ? そんなシャルロットをずっと支えてきたのが、テオドールだ。シャルロットはテオドールを励まし、テオドールもシャルロットにずっと寄り添ってきた。二人はずっと一緒で……。
ジュール、言ってみれば、あんたは二人のキューピッドかもしれないな」
オーバンは言うと、ぷいっと窓の外を向いた。
「オーバン君……」
「ったく、いくらなんでも俺だって諦めがついたよ。この聖騎士団の制服を見たら、シャルロットのテオドールへのこだわりがわかるだろ?」
オーバンは自身の漆黒のマントを俺の前に広げてみせた。
「制服?」
「聖騎士イコール、純白だろ!? もちろん昔っから、聖騎士団っつったら、白の騎士服が基本だよ! なのにさ、シャルロットときたら、テオドールには黒が一番似合う、とか言って、無理やり聖騎士団の制服を漆黒に変えたんだ!」
そういえば、あのブロイも、聖騎士は純白とかなんとか言っていたような気が……。
「俺には絶対黒じゃなくて白のほうが似合うのにっ! なあ、ジュールもそう思うだろっ!?」
オーバンの美形のドアップが、俺に迫る。
「え!? あ? うん? でも、オーバン君はかっこいいから、何色でもすごく似合ってるよ!」
「ジュールっ!!!!」
オーバンは、力任せに俺に抱きついてきた。
「ぐえっ……!」
「やっぱりアンタだけだよ! 俺のことを本当にわかってくれるのは!
テオドールが、剣術大会で優勝してシャルロットとの結婚が決まったら、すかさず俺たちも盛大な式を挙げようなっ!」
「はいぃ??」
ーー剣術大会? シャルロットとの結婚? なにそれ?
それより、なにより、オーバンと俺との婚約ってまだ有効だったんかーいっ!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「拝謁の間には、ダンデス様しかお通しできません」
扉の前に経つ衛兵は、にべもなく言った。
「なんだって? この聖騎士団の制服が目に入らないのかよっ?」
食って掛かるオーバン。やはり聖騎士団の団員というのは、それなりの力を持っているようだ。
「殿下からのご命令です」
「チッ、シャルロットのやつ、ジュールを連れてくれば後は用済みってことかよっ」
オーバンの表情からは、まだシャルロットへの諦めきれない慕情がありありと見て取れた。
俺の心はチクリと痛む。
「じゃ、ジュール、シャルロットによろしく伝えてくれ」
オーバンは俺の背中を軽く叩いた。
「うん、ありがとう。オーバン君」
扉が開かれ、俺は拝謁の間の中央に進み出る。
俺は、その顔触れに思わず立ちすくんでしまった。
――シャルロット殿下だけでなく、国王陛下まで!
国王陛下、王妃、王女がそれぞれの椅子に腰かけ、俺に対峙していた。
「……っ!!」
思わず右手と右足が同時に出そうになる俺だったが、とりあえず慣例通り、天鵞絨の絨毯の前で恭しく片膝をついた。
「ジュール・ダンデスにございます。このたびは、ご尊顔を拝し恐悦至極に存じます。国王陛下におかれましては……」
「堅苦しい挨拶は良い。面を上げよ」
「はっ」
俺が顔を上げると、国王陛下はなにか満足気に口元を緩めた。
「……?」
王妃と王女はそれぞれ豪華な羽の扇で、口元を隠してすまし顔をしているが、なにかこらえきれない感情を抑え込んでいるようにも見えた。
特にシャルロット王女の身体は、なぜか小刻みに震えていた。
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