【完結】究極のざまぁのために、俺を捨てた男の息子を育てています!

.mizutama.

文字の大きさ
133 / 165

第133話 不倶戴天

しおりを挟む
「ふざけるなっ! 貴様っ、この神聖な御前試合を何だと思っているんだっ!」

 テオドールが剣を構えてマリユスに向き直った。

「へえ。神聖な……、ね。聖騎士殿、君はこの試合で優勝したら何を望むつもりだったのかな?
まあ、俺にかなうはずもない君の願いが、聞き届けられることなど決してないのだけどね」

 その美しい唇をゆがめると、マリユスはその手にまた魔力を集め始める。

 テオドールはマリユスに切りかかろうと隙を伺うが、その魔力での護りは驚くほど強固で、テオドールはじりじりと間合いを詰めることしかできない。


「俺はここで優勝して、俺自身ーーマリユス・ロルジュの恩赦を国王に願うつもりだ。もちろんフィリップ・ヴェルジーとしてね。
そうすれば晴れて自由の身、だ。ジュールを連れて、俺はどこへでも行くことができる」

 マリユスの手のひらから、鞭のような細長い物体があらわれる、それは光ったかと思うとあっという間にテオドールの身体にぐるぐると巻き付いて、その自由を奪った。

「……っ!! 貴様などに、叔父様を渡すものかっ!」

 テオドールが叫ぶが、その身体を動かすごとに、その拘束は強くなり、ついにテオドールは身動きすらできなくなってしまった。

「ああ、君は俺の血を分けたたった一人の息子だというのに、なぜ俺のこの偉大な魔力を引き継ぐことができなかったんだろうね?
俺は昔から、泥臭い騎士は大嫌いなんだ。剣を振り回すだけが取り柄の、野蛮な人種だ。君が騎士になんてなってしまって、俺はとても悲しいよ」

「貴様のような人間に、いったい何がわかる!」

 マリユスは肩をすくめてみせた。

「つらいねえ。そんな目で俺を見ないでくれよ。俺の親心がわからないのかい?
こうやって結界を張って帳をおろして、君のみっともない姿を観客からは見えないようにしてあげているんだ。
国の宝とうたわれる聖騎士様が、怪しげな魔法使いに無様に破れるところなんて、見られたくなんてないだろう?
きっと王様も、国民も心底落胆してしまうだろう。そんなのかわいそうじゃないか。俺は、優しいから、たった一人の可愛い息子をそんな目には遭わせたりしたくないんだ」

「マリユス、お前は……っ、何がしたいんだ?
なぜこの試合に参加したっ? 今までいったい、どこにいたんだ?」

 結界のぎりぎりのところに立ち、マリユスと距離を保った俺は叫んだ。

「ジュール。言っただろう? 君を迎えに来たんだ。
今まで寂しい思いをさせて悪かったね。だが、さすがに国のお尋ね者になってしまったから、こんなに時間がかかってしまったんだよ。
俺のことを心配してくれていたのかな? 俺は大丈夫だよ。この魔力と風魔法があればどこでだって通用するんだ。まあ、王立研究所での実績は国外でもすごく役立ったけどね。魔道具の開発なんて、どの国も喉から手が出るほど欲しい情報ばかりだからさ。
……それにしてもこの国の人間は、相変わらず人を疑うことを知らないお人よしばかりだね。だから助かったよ。今、国外にいるフィリップの名前を借りて出場登録をしてもほとんど怪しまれたりしなかった。
まあちょっと疑念を抱くヤツはいたけど、それは魔法で簡単に口を封じることができたしね。
この剣術試合は実にエキサイティングな催しだね! まるで俺のために開かれたようなものじゃないか!
運命を感じるよ! やはり、俺と君は……」

「黙れっ! ペラペラと、この外道がっ!!
叔父様、そいつと話をしないで! その男は口の上手い悪魔と同じですっ!」

 拘束されたテオドールがもがく。


「テオ……っ」

「おい、俺はジュールと話をしているんだ。お子様の出る幕じゃない! お前はしばらく黙っていろ」

 マリユスはその手のひらをテオドールに向けると、強い光をほとばしらせた。


「ぐっ、あっ……!」

 衝撃を受け、テオドールは血反吐を吐いた。

「テオッ!!」

「大丈夫だよ。ジュール、死にやしない。ちょっと静かにさせただけだ。どうやら、見たところこの聖騎士殿もジュールに夢中らしいね。
まったく、父親の恋人に横恋慕なんて、聖騎士が聞いてあきれるよ!
それに聖騎士というから、どれほどのものかと思ったら……。所詮、魔法の前に、剣なんて無力なものだよ。
……ねえ、ジュールもそう思うだろ?」

 マリユスは微笑みを浮かべながら、俺にむかってゆっくりと歩いてきた。


「来るなっ!」

 俺は後ずさるが、結界の外には出られるはずもない。

「ジュール。わかってるよ。ずっと俺を待っていてくれたんだね。
俺も、ずっと、会いたかったよ」

しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話

あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」 トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。 お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。 攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。 兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。 攻め:水瀬真広 受け:神崎彼方 ⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。 途中でモブおじが出てきます。 義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。 初投稿です。 初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

国民的アイドルの元ライバルが、俺の底辺配信をなぜか認知している

逢 舞夏
BL
「高校に行っても、お前には負けないからな!」 「……もう、俺を追いかけるな」  中三の卒業式。幼馴染であり、唯一無二のライバルだった蓮田深月(はすだ みつき)にそう突き放されたあの日から、俺の時間は止まったままだ。  あれから15年。深月は国民的アイドルグループのセンターとして芸能界の頂点に立ち、俺、梅本陸(うめもと りく)は、アパートでコンビニのサラミを齧る、しがない30歳の社畜になった。  誰にも祝われない30歳の誕生日。孤独と酒に酔った勢いで、俺は『おでん』という名の猫耳アバターを被り、VTuberとして配信を始めた。  どうせ誰も来ない。チラ裏の愚痴配信だ。  そう思っていた俺の画面を、見たことのない金額の赤スパ(投げ銭)が埋め尽くした。 『K:¥50,000 誕生日おめでとう。いい声だ、もっと話して』  『K』と名乗る謎の太客。  【執着強めの国民的アイドル】×【酒飲みツンデレおじさんV】

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました

水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。 新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。 それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。 「お前は俺の運命の番だ」 彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。 不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...