134 / 165
第134話 真実の愛
しおりを挟む
「いい加減にしろっ! マリユス!
俺がお前を待っていたわけがないだろう!?
できることなら、二度と顔も見たくなかったよ!
お前のせいで、俺がどんな目に遭ったか……」
マリユスが伸ばしてきた手を、俺は叩き落した。
「ああ、淫紋のことを言ってるんだね。あれは……、本当に悪かった。
でも、俺だってこんなことになるなんて、思いもよらなかったんだ。それに……」
「……っ」
マリユスは強い力で、俺の右腕をつかんだ。
「ねえ、ジュール。淫紋が解除されなかったのは、君のせいでもあるんだよ。
……こんなことを言ったら、君は驚くかな?」
深緑色の瞳が俺をのぞき込む。
「何を、馬鹿なことを……っ!」
「ああ、ジュール。君は一体、何人の男にその身体を許したのかな?
悔しくてたまらないよ……。今の俺の気持ちは、きっと君には想像もできないだろう」
俺は歯を食いしばった。
「さあ、一体何人だったかな?
多すぎて、途中で数えるのをやめたくらいだよっ!」
掴まれた腕を、俺はなんとか離そうを力を込める。
だが、マリユスはそんな俺に楽し気に目を細めた。
「だが、その誰にも君の淫紋は解除できなかった……。
だから俺はわかったんだ。
やっぱり君には、俺が必要だったんだってね!
ジュール、俺が君に本当の愛を教えてあげる」
「……っ、馬鹿にするなっ!!」
俺は掴まれた右腕を軸に、大きく振りかぶってマリユスの頬に左拳をめり込ませた。
手ごたえはあった。マリユスの身体は大きく傾いで、その場で片膝をついた。
「……これは、ちょっと効いたな……。まさか、ジュールが俺を攻撃するなんて」
俺の腕は自由になり、マリユスはその場でうずくまり、頬を手で覆った。
「なにが……っ、なにが本当の愛、だ!!
お前のせいで俺の人生はめちゃくちゃになった。俺だけじゃない、俺の家族も、そこにいるテオドールも、みんなお前の身勝手な行動に巻き込まれた!
俺は、お前だけは、絶対に許さない!!」
ふらふらと立ち上がったマリユスの胴体に、もう一発拳を打ち込もうと俺は右手と右足を引いた。
だが……。
俺はあっという間にテオドールと同じように、マリユスの魔法で拘束されてしまった。
「……くっ」
「ジュール。すごく大切なことを、君に伝えておくよ」
マリユスは動けなくなった俺の周りをゆっくりと歩きはじめた。
「淫紋解除の唯一の鍵は、君が『真実の愛』を知ることだ」
マリユスは俺に手を伸ばし、耳たぶをそっと撫でた。
「……」
「わかっただろう? だから、これから、俺が君に本当の愛を教えてあげる。そうすれば、君は……」
「ふっ、ははっ、あはっ、あははははっ……!!」
突然笑い出した俺に、マリユスの手が止まった。
「……ジュール?」
「『真実の愛』だって!? 最高じゃないか! 本当に、……最高に笑えるよ! それをお前の口から聞くことになるなんて!
教えてやるよ! ……聞いて驚くなよ、マリユス!
『真実の愛』なんて、そんなの、俺はもうとっくに知ってるんだ!!」
俺はマリユスを睨みつけた。
「マリユス、確かに以前、俺はお前を愛した気になってた。でも、今から思えばあんなの全然愛じゃなかったよ。ただの憧れか、遊びの恋ってところだったかな?
俺は全然経験がなかったから、すっかりのぼせあがって、お前を愛したつもりになってただけだ。
……でも、あれが本当の愛なら、どんなによかったか! キラキラして、ドキドキして、ハラハラして、毎日が楽しくて……、できることなら、あれが真実の愛だって思ったまま、俺は死にたかったよ! でも」
俺は、拘束されたまま、唖然とした表情で俺を見つめているテオドールに目をやった。
テオドールの唇のはじからは、血が一筋伝っていた。
「俺はついに愛を知ったよ、マリユス! でも、あいにく俺は本当の愛なんて全然知りたくなかった。
俺は、自分がこんなに醜くて、汚くて、嫌らしい人間だって、思ってもみなかったよ。
今だって、こんな状況になっても、俺は心の奥ではこう思ってる。
――このまま、テオドールがこの試合で優勝しなければいい! そうしたら、テオドールはシャルロット王女と結婚しないで、ずっと俺の側にいてくれるはずだってね!!」
俺がお前を待っていたわけがないだろう!?
できることなら、二度と顔も見たくなかったよ!
お前のせいで、俺がどんな目に遭ったか……」
マリユスが伸ばしてきた手を、俺は叩き落した。
「ああ、淫紋のことを言ってるんだね。あれは……、本当に悪かった。
でも、俺だってこんなことになるなんて、思いもよらなかったんだ。それに……」
「……っ」
マリユスは強い力で、俺の右腕をつかんだ。
「ねえ、ジュール。淫紋が解除されなかったのは、君のせいでもあるんだよ。
……こんなことを言ったら、君は驚くかな?」
深緑色の瞳が俺をのぞき込む。
「何を、馬鹿なことを……っ!」
「ああ、ジュール。君は一体、何人の男にその身体を許したのかな?
悔しくてたまらないよ……。今の俺の気持ちは、きっと君には想像もできないだろう」
俺は歯を食いしばった。
「さあ、一体何人だったかな?
多すぎて、途中で数えるのをやめたくらいだよっ!」
掴まれた腕を、俺はなんとか離そうを力を込める。
だが、マリユスはそんな俺に楽し気に目を細めた。
「だが、その誰にも君の淫紋は解除できなかった……。
だから俺はわかったんだ。
やっぱり君には、俺が必要だったんだってね!
ジュール、俺が君に本当の愛を教えてあげる」
「……っ、馬鹿にするなっ!!」
俺は掴まれた右腕を軸に、大きく振りかぶってマリユスの頬に左拳をめり込ませた。
手ごたえはあった。マリユスの身体は大きく傾いで、その場で片膝をついた。
「……これは、ちょっと効いたな……。まさか、ジュールが俺を攻撃するなんて」
俺の腕は自由になり、マリユスはその場でうずくまり、頬を手で覆った。
「なにが……っ、なにが本当の愛、だ!!
お前のせいで俺の人生はめちゃくちゃになった。俺だけじゃない、俺の家族も、そこにいるテオドールも、みんなお前の身勝手な行動に巻き込まれた!
俺は、お前だけは、絶対に許さない!!」
ふらふらと立ち上がったマリユスの胴体に、もう一発拳を打ち込もうと俺は右手と右足を引いた。
だが……。
俺はあっという間にテオドールと同じように、マリユスの魔法で拘束されてしまった。
「……くっ」
「ジュール。すごく大切なことを、君に伝えておくよ」
マリユスは動けなくなった俺の周りをゆっくりと歩きはじめた。
「淫紋解除の唯一の鍵は、君が『真実の愛』を知ることだ」
マリユスは俺に手を伸ばし、耳たぶをそっと撫でた。
「……」
「わかっただろう? だから、これから、俺が君に本当の愛を教えてあげる。そうすれば、君は……」
「ふっ、ははっ、あはっ、あははははっ……!!」
突然笑い出した俺に、マリユスの手が止まった。
「……ジュール?」
「『真実の愛』だって!? 最高じゃないか! 本当に、……最高に笑えるよ! それをお前の口から聞くことになるなんて!
教えてやるよ! ……聞いて驚くなよ、マリユス!
『真実の愛』なんて、そんなの、俺はもうとっくに知ってるんだ!!」
俺はマリユスを睨みつけた。
「マリユス、確かに以前、俺はお前を愛した気になってた。でも、今から思えばあんなの全然愛じゃなかったよ。ただの憧れか、遊びの恋ってところだったかな?
俺は全然経験がなかったから、すっかりのぼせあがって、お前を愛したつもりになってただけだ。
……でも、あれが本当の愛なら、どんなによかったか! キラキラして、ドキドキして、ハラハラして、毎日が楽しくて……、できることなら、あれが真実の愛だって思ったまま、俺は死にたかったよ! でも」
俺は、拘束されたまま、唖然とした表情で俺を見つめているテオドールに目をやった。
テオドールの唇のはじからは、血が一筋伝っていた。
「俺はついに愛を知ったよ、マリユス! でも、あいにく俺は本当の愛なんて全然知りたくなかった。
俺は、自分がこんなに醜くて、汚くて、嫌らしい人間だって、思ってもみなかったよ。
今だって、こんな状況になっても、俺は心の奥ではこう思ってる。
――このまま、テオドールがこの試合で優勝しなければいい! そうしたら、テオドールはシャルロット王女と結婚しないで、ずっと俺の側にいてくれるはずだってね!!」
171
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話
あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」
トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。
お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。
攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。
兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。
攻め:水瀬真広
受け:神崎彼方
⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。
途中でモブおじが出てきます。
義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。
初投稿です。
初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
国民的アイドルの元ライバルが、俺の底辺配信をなぜか認知している
逢 舞夏
BL
「高校に行っても、お前には負けないからな!」
「……もう、俺を追いかけるな」
中三の卒業式。幼馴染であり、唯一無二のライバルだった蓮田深月(はすだ みつき)にそう突き放されたあの日から、俺の時間は止まったままだ。
あれから15年。深月は国民的アイドルグループのセンターとして芸能界の頂点に立ち、俺、梅本陸(うめもと りく)は、アパートでコンビニのサラミを齧る、しがない30歳の社畜になった。
誰にも祝われない30歳の誕生日。孤独と酒に酔った勢いで、俺は『おでん』という名の猫耳アバターを被り、VTuberとして配信を始めた。
どうせ誰も来ない。チラ裏の愚痴配信だ。
そう思っていた俺の画面を、見たことのない金額の赤スパ(投げ銭)が埋め尽くした。
『K:¥50,000 誕生日おめでとう。いい声だ、もっと話して』
『K』と名乗る謎の太客。
【執着強めの国民的アイドル】×【酒飲みツンデレおじさんV】
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました
水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。
新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。
それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。
「お前は俺の運命の番だ」
彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。
不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる