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第27話 真の下剋上
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「クソッ! もう来たのか」
レオンの舌打ち。
「何だ、この音……?」
「ソラル、早く服を着て! ……中はあとでちゃんとかきだしてあげるから、ちょっと我慢してね」
耳元で囁かれ、俺は思わず赤面する。
「お、お前はっ……!」
「さ、早く! 時間がない、アイツらが来た!」
――アイツら‥‥‥‥。
そして、地鳴りはどんどん近づいてきて、部屋中が振動し始めた。
そして、バリバリバリバリッという音がして、扉から煙が立ち込める。
「な、いったい、何が……」
「ソラル。何も心配しないで。俺に全部任せて!」
「レオン、ちょっと、このことについて、ちゃんと説明を……」
シュン、と小気味良い音が響いたかと思うと、固く閉ざされていた扉に一筋の太刀傷が入った。
そして、頑丈に見えた扉はガラガラと崩れ落ちた。
「下がって」
レオンは俺を守るように自分の背に隠した。
そして……、
現れたのは二人のシルエット。
白煙ではっきりとは見えないが、俺が見間違えるはずもない、懐かしい二人の人影。
「ソラルっ、無事かっ、もう大丈夫だ!」
ユーゴ様は相変わらず俺の憧れの騎士様そのものだった。年を重ねてさらに渋みを増した姿が、重厚感を増していてますますカッコいい!
「ソラルっ、貴様っ、こんなことをしてただで済むと思うなよっ!!!!」
そして相変わらずルイ王子は麗しかった。怒髪天をつく勢いだが、それもまた美しいと思わせる圧倒的な存在感。
今日は戦闘モードなのか、長い髪を一つに束ねて、高い位置で結い上げている。
「殿下、ユーゴ様……」
「レオン、貴様っ! どういうことか説明しろ!」
ルイ王子が手にしていた剣を、レオンに向ける。
「どうもこうもありません。兄上、ソラルは私がもらいます」
「なん、だと!?」
ルイ王子が剣を握り直す。攻撃の体制だ。
「ジラール副団長、君は、ソラルに、薬を使ったのか? それで、ソラルを無理やり、こんな目に……」
ユーゴ様は、床に転がっていたあの薬の瓶を見つけ、レオンに突きつけた。
「釈明するつもりはありません」
「貴様ッ!!!」
ルイ王子は、どこをどう解釈しても事後としか思えない寝乱れた寝台と、俺の乱れた衣服を見た。
「レオン、貴様は、男には虫唾が走るといっていただろう! なぜだっ!」
ルイ王子の糾弾に、レオンはにやりと笑った。
「兄上は少し思い違いをされていたのかもしれません。
俺はたしかに、いまも男には微塵も興味もありません。触れられるとゾッとするほどだ。
だが、同じように女にも興味がなかった。
俺が興味があったのは、ずっとソラル一人です」
「は……? 貴様……っ、何を」
ルイ王子は眉間にしわを寄せる。
「飼い犬に手を噛まれる、とはこのことですね」
ユーゴ様がため息をつき、優しい琥珀色の瞳で俺を見つめた。
「ソラル。怖かっただろう。でももう大丈夫だよ。
おいで。私と一緒に帰ろう。新しい職も、家も全部用意したよ!」
ユーゴ様が、俺に手を伸ばす。
「ユーゴ様……!」
「下心しかない助平爺にソラルは渡さない!」
レオンは俺の手を掴む。
「レオン、お前の考えはよくわかった。俺を裏切るとはいい度胸だ。
お前のことは買っていたのに、こうなっては仕方がない。
俺は、お前を倒す! 今ここでっ」
ルイ王子は剣を構えた。
「ええ、もちろん。受けて立ちます。
もとより、俺は兄上に決闘を申し込むつもりだったんです。俺が勝ったら、
――第一騎士団長の座は、俺に譲ってもらいますよ!」
レオンも自身の魔法剣を抜いた。
「なんだと?!」
――今、レオンは何と言った!?
第一騎士団長!!??
レオンの舌打ち。
「何だ、この音……?」
「ソラル、早く服を着て! ……中はあとでちゃんとかきだしてあげるから、ちょっと我慢してね」
耳元で囁かれ、俺は思わず赤面する。
「お、お前はっ……!」
「さ、早く! 時間がない、アイツらが来た!」
――アイツら‥‥‥‥。
そして、地鳴りはどんどん近づいてきて、部屋中が振動し始めた。
そして、バリバリバリバリッという音がして、扉から煙が立ち込める。
「な、いったい、何が……」
「ソラル。何も心配しないで。俺に全部任せて!」
「レオン、ちょっと、このことについて、ちゃんと説明を……」
シュン、と小気味良い音が響いたかと思うと、固く閉ざされていた扉に一筋の太刀傷が入った。
そして、頑丈に見えた扉はガラガラと崩れ落ちた。
「下がって」
レオンは俺を守るように自分の背に隠した。
そして……、
現れたのは二人のシルエット。
白煙ではっきりとは見えないが、俺が見間違えるはずもない、懐かしい二人の人影。
「ソラルっ、無事かっ、もう大丈夫だ!」
ユーゴ様は相変わらず俺の憧れの騎士様そのものだった。年を重ねてさらに渋みを増した姿が、重厚感を増していてますますカッコいい!
「ソラルっ、貴様っ、こんなことをしてただで済むと思うなよっ!!!!」
そして相変わらずルイ王子は麗しかった。怒髪天をつく勢いだが、それもまた美しいと思わせる圧倒的な存在感。
今日は戦闘モードなのか、長い髪を一つに束ねて、高い位置で結い上げている。
「殿下、ユーゴ様……」
「レオン、貴様っ! どういうことか説明しろ!」
ルイ王子が手にしていた剣を、レオンに向ける。
「どうもこうもありません。兄上、ソラルは私がもらいます」
「なん、だと!?」
ルイ王子が剣を握り直す。攻撃の体制だ。
「ジラール副団長、君は、ソラルに、薬を使ったのか? それで、ソラルを無理やり、こんな目に……」
ユーゴ様は、床に転がっていたあの薬の瓶を見つけ、レオンに突きつけた。
「釈明するつもりはありません」
「貴様ッ!!!」
ルイ王子は、どこをどう解釈しても事後としか思えない寝乱れた寝台と、俺の乱れた衣服を見た。
「レオン、貴様は、男には虫唾が走るといっていただろう! なぜだっ!」
ルイ王子の糾弾に、レオンはにやりと笑った。
「兄上は少し思い違いをされていたのかもしれません。
俺はたしかに、いまも男には微塵も興味もありません。触れられるとゾッとするほどだ。
だが、同じように女にも興味がなかった。
俺が興味があったのは、ずっとソラル一人です」
「は……? 貴様……っ、何を」
ルイ王子は眉間にしわを寄せる。
「飼い犬に手を噛まれる、とはこのことですね」
ユーゴ様がため息をつき、優しい琥珀色の瞳で俺を見つめた。
「ソラル。怖かっただろう。でももう大丈夫だよ。
おいで。私と一緒に帰ろう。新しい職も、家も全部用意したよ!」
ユーゴ様が、俺に手を伸ばす。
「ユーゴ様……!」
「下心しかない助平爺にソラルは渡さない!」
レオンは俺の手を掴む。
「レオン、お前の考えはよくわかった。俺を裏切るとはいい度胸だ。
お前のことは買っていたのに、こうなっては仕方がない。
俺は、お前を倒す! 今ここでっ」
ルイ王子は剣を構えた。
「ええ、もちろん。受けて立ちます。
もとより、俺は兄上に決闘を申し込むつもりだったんです。俺が勝ったら、
――第一騎士団長の座は、俺に譲ってもらいますよ!」
レオンも自身の魔法剣を抜いた。
「なんだと?!」
――今、レオンは何と言った!?
第一騎士団長!!??
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