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6.神様からのプレゼント
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「ここか。……なるほど、ここなら城からも近いから商売がしやすいだろうな」
俺に無理やり案内させた森小屋を一目見て、シヴァは言った。
「ごめんなさい、俺やっぱり無理です! 全然部屋も片付いてないし、そもそもここは、あなたみたいな高貴な方を招き入れていい場所では……!」
シヴァに担がれたままの俺は叫ぶが、問答無用とばかりにシヴァは俺の住んでいる森小屋のドアを蹴り開けた。
「ヒっ……」
目の前に広がるのは、今日朝出てきたそのままの、俺の居住空間。
入ってすぐに目に入るのは、俺が食事をしたり、書き物をしたりするために置かれている粗末な木のテーブル。
それとおそろいの椅子には、乱雑にタオルや衣類がかけられている。
そして間仕切りもなにもないその部屋のドン付きにあるのが、これまた粗末な木のベッド!
もちろんシーツは寝乱れたまま!
――ああ、こんなみっともない状態の俺の部屋を、憧れのシヴァ様に見られてしまうとは!
穴があったら入りたい!!
「ここがお前の商売部屋、というわけだな」
何かを勝手に納得したシヴァが呟く。
「あの、俺っ、決して商売をしているわけでは……」
「フン、表向きはそういうことにしているというわけか」
これまた勝手に何かを理解したシヴァは、そのまま部屋の奥に進むと、俺の身体をどさりとベッドに落とした。
「狭いな……」
そして当然のように、俺の上に乗ってくる。
「本当にここでいつも男の相手をしているのか?」
「ちょっと待ってください!!」
マントを脱ぎ捨てるシヴァに、俺は待ったをかけた。
翡翠の瞳が、細められる。
「なんだ? 俺にあんな誘いをかけてきて、怖気づいたとは言わせない。
確か、俺をお前が慰めてくれるんだったな?
俺は今、何もかも全部に猛烈に腹が立っているんだ、お前のご自慢の性技で、今夜は何もかも忘れさせてくれるんだろう?」
まさに、王女に捨てられ失意のどん底、やけくそになっているシヴァは、俺のシャツに手をかけた。
俺はその手をむんずとつかむ。
「考え直してください! ほら、目をしっかり開けてよく見て! 俺、男ですよ!
しかも、別に可愛くもないフツーの見た目です! 王女様とは似ても似つかない……」
「男だからいいと言ったのはお前だろうが! それに、殿下のことは口にするなっ!!」
乱暴にシャツを引き寄せられ、ボタンがはじけ飛んだ。
――やばい、火に油を注いじゃった!?
俺は慌ててはだけたシャツを掴んだ。
「お、落ち着いてくださいっ! ……だから、俺はあなたが一夜の過ちを犯す相手としてだって、絶対にふさわしくないんですってば!
あなたなら、どんな美女も、もちろん美少年だって、思いのまま……」
「……そうか、わかった。お前まで、俺を拒絶する気だな!
……そうだ、俺は、殿下に捨てられた男だ。俺にはもう、価値など、ないんだ……」
低い声に顔を上げると……、
これ以上なく悲しそうな顔のシヴァがそこにいた。
その切なげな表情に、俺の胸はきゅうっと締め付けられる。
傷ついた小さな子どもみたいな顔ですら、壮絶に、美しい……!
っていうか、好き。
大好き!!!!
そして俺は、心に決めた。
そう、これはこんなショボい俺に神様がくれた、一生に一度のとっておきのプレゼントなのだと。
だから俺は……、
両手を広げてシヴァをぎゅっと抱きしめた。
「あなたは誰が何と言おうと素晴らしい人です!
価値がないなんて、あるはずありませんっ!!」
俺に無理やり案内させた森小屋を一目見て、シヴァは言った。
「ごめんなさい、俺やっぱり無理です! 全然部屋も片付いてないし、そもそもここは、あなたみたいな高貴な方を招き入れていい場所では……!」
シヴァに担がれたままの俺は叫ぶが、問答無用とばかりにシヴァは俺の住んでいる森小屋のドアを蹴り開けた。
「ヒっ……」
目の前に広がるのは、今日朝出てきたそのままの、俺の居住空間。
入ってすぐに目に入るのは、俺が食事をしたり、書き物をしたりするために置かれている粗末な木のテーブル。
それとおそろいの椅子には、乱雑にタオルや衣類がかけられている。
そして間仕切りもなにもないその部屋のドン付きにあるのが、これまた粗末な木のベッド!
もちろんシーツは寝乱れたまま!
――ああ、こんなみっともない状態の俺の部屋を、憧れのシヴァ様に見られてしまうとは!
穴があったら入りたい!!
「ここがお前の商売部屋、というわけだな」
何かを勝手に納得したシヴァが呟く。
「あの、俺っ、決して商売をしているわけでは……」
「フン、表向きはそういうことにしているというわけか」
これまた勝手に何かを理解したシヴァは、そのまま部屋の奥に進むと、俺の身体をどさりとベッドに落とした。
「狭いな……」
そして当然のように、俺の上に乗ってくる。
「本当にここでいつも男の相手をしているのか?」
「ちょっと待ってください!!」
マントを脱ぎ捨てるシヴァに、俺は待ったをかけた。
翡翠の瞳が、細められる。
「なんだ? 俺にあんな誘いをかけてきて、怖気づいたとは言わせない。
確か、俺をお前が慰めてくれるんだったな?
俺は今、何もかも全部に猛烈に腹が立っているんだ、お前のご自慢の性技で、今夜は何もかも忘れさせてくれるんだろう?」
まさに、王女に捨てられ失意のどん底、やけくそになっているシヴァは、俺のシャツに手をかけた。
俺はその手をむんずとつかむ。
「考え直してください! ほら、目をしっかり開けてよく見て! 俺、男ですよ!
しかも、別に可愛くもないフツーの見た目です! 王女様とは似ても似つかない……」
「男だからいいと言ったのはお前だろうが! それに、殿下のことは口にするなっ!!」
乱暴にシャツを引き寄せられ、ボタンがはじけ飛んだ。
――やばい、火に油を注いじゃった!?
俺は慌ててはだけたシャツを掴んだ。
「お、落ち着いてくださいっ! ……だから、俺はあなたが一夜の過ちを犯す相手としてだって、絶対にふさわしくないんですってば!
あなたなら、どんな美女も、もちろん美少年だって、思いのまま……」
「……そうか、わかった。お前まで、俺を拒絶する気だな!
……そうだ、俺は、殿下に捨てられた男だ。俺にはもう、価値など、ないんだ……」
低い声に顔を上げると……、
これ以上なく悲しそうな顔のシヴァがそこにいた。
その切なげな表情に、俺の胸はきゅうっと締め付けられる。
傷ついた小さな子どもみたいな顔ですら、壮絶に、美しい……!
っていうか、好き。
大好き!!!!
そして俺は、心に決めた。
そう、これはこんなショボい俺に神様がくれた、一生に一度のとっておきのプレゼントなのだと。
だから俺は……、
両手を広げてシヴァをぎゅっと抱きしめた。
「あなたは誰が何と言おうと素晴らしい人です!
価値がないなんて、あるはずありませんっ!!」
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