単なるセフレだったはずの王宮騎士団のイケメンエースが、なぜか身分違いの俺に激しく執着しはじめて、周囲をドン引きさせているって本当ですか!?

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8.麗しの男娼

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 さすがは王女様の護衛騎士。

 気が立っているという言葉とは裏腹に、俺に触れるシヴァの指はとても紳士的だった。


「あ……っ、ん……」

 ベッドの上で抱き寄せられ、首筋に優しくキスを落とされた。

 ――もう、この時点で死んでもなにも悔いはない!!!!


 シヴァの温かい手が、俺のシャツなかにもぐりこむ。


「は、あ、ああ……っ」

 背中をまさぐられると、ビクビクと身体が震えた。俺は思わずシヴァの騎士服の背中を握り締めた。


「ずいぶん、敏感だな。さすがに、慣れているだけのことはある……」


 慣れているどころか、他人に触れられることも初めての俺。

 だが、シヴァがいい感じに誤解をしてくれているみたいだから、そのままこれ幸いと流れに任せる。

 ――ああ願わくば、このまま時が止まって欲しい!!


 俺の力が抜けたところで、シヴァがおもむろに身体を離した。


「口づけても、いいのか?」

 翡翠の瞳が、俺を伺う。

「は、い……」

 俺が見つめ返すと、シヴァは無言で俺に頬を寄せてきた。


 そういう商売をしている人たちは、唇だけは客に許さない……、そんなことを思い出したときには、もうすでに二人の唇は重なっていて……。



 ――もちろん、これが俺のファーストキス!!

 ――神様、ありがとうございますっ!!!!



 最初は触れるだけだった口づけは、どんどん激しくなってきて、ぬるりとした舌が俺の舌に絡みつくと、もう俺は何も考えられなくなっていた。

「ん、あ……」

「……ふっ……」


 俺は夢中で、シヴァの口づけに応えていた。
 
 もう、何もかもが夢みたいで!!

 唇が離れると、熱っぽい目でシヴァが俺の腰を引き寄せた。


「なかなか、悪くない……。だが、悪いが俺は男との情事について知識がないんだ。だから……」

 はだけさせられたシャツから覗く俺の裸の胸に、シヴァは手を這わす。


「大丈夫です。あなたは、何もしなくていいです。俺が、全部、しますから……」

 俺はシヴァの手を取って、その長い指に口づけた。


 だが、そういう俺の知識のすべては、すべて友人のラムから借りた男同士のロマンス小説から得たもののみ!!

 ――俺は、この難局を乗り切れるのか!?



 とにかく、心を落ち着けて……。


 俺は深呼吸すると、目の前のシヴァの首元までしっかり止められた騎士服の金のボタンに手を伸ばした。

 ――そうだ、思い出すんだ。たしか、ラムから借りた小説の中に「騎士と男娼の切ない恋物語」があったじゃないか!

 どう見ても俺は、はかなげな美貌で男たちを虜にする魔性の男娼ってタイプではないが、この際そんなことはどうでもいい!


 ――あの思わず俺が10回は読み返してしまった騎士と男娼の初めてのベッドシーンを思い出すんだ!


 そして、その通り手順を進めることができたら、きっと俺だって!


「あなたは、何もしなくていい……」

 気持ちだけは麗しの男娼『ファム』になりきった俺は、一つずつシヴァのボタンをはずしていく。

 騎士服は頑丈なつくりで、ボタンがかっちりと留められているため、俺の震える指では大変苦戦したが、何とかすべて外すことができた。
 シヴァがその中に来ていた上等の絹のシャツに手を伸ばそうとしたところで、俺はシヴァに力強く引き寄せられていた。


「あ、あのっ……」

 どうしよう、小説のなかじゃ、こんな手順じゃなかったはず!
 たしか『ファム』は騎士の服を脱がせて、自分も素っ裸になるとその逞しい身体に覆いかぶさってご自慢のテクニックで……。


「これ以上焦らすな、もう待てない!」

 シヴァの言葉通り、固く立ちあがったものが、俺の腹に当たる。


 ――あのシヴァが俺で勃起してるなんて!!


 妙な感動に打ち震えたのもつかの間、俺は半ば破かれるようにしてシャツをはぎ取られていた。


 ――こんな強引なシヴァ様! ますます惚れる!!!!


 っていうか俺は、決してもったいぶって焦らしてるわけじゃなく、単に手際が悪いだけなんですが……。


「もう、いい。お前は、何もしなくていい!」

 覆いかぶさってくるシヴァの潤んだ瞳に見下ろされた俺!


「俺に、全て委ねろ!」


 ――わーん、これじゃ、立場が逆になっちゃうんですけどっ!?

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