単なるセフレだったはずの王宮騎士団のイケメンエースが、なぜか身分違いの俺に激しく執着しはじめて、周囲をドン引きさせているって本当ですか!?

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21.ミルス蜜たっぷりの月花ブレンドティー

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 『炎のステーキ』は、俺の得意料理の一つで、火炎のような強い色合いの赤身肉を使用し、強い火力で表面をカリっと焼き上げつつ、中身は柔らかくジューシーに仕上げた豪快な肉料理だ。

 火を入れて温め直したステーキの皿を目の前に、シヴァはごくりと唾を飲みこんだ。

「この橙色のソースはなんだ?」

「何種類かの野菜とスパイスを煮詰めて作っているんです。俺の特製で『夜火のソース』って呼んでます」

 シヴァは上品な手つきで、肉にナイフを入れた。

 一口サイズの肉を咀嚼したシヴァは、一瞬目を見開き、ギラリとした目つきで俺を見た。


「この付け合わせの揚げ物は?」

「月桂芋のフライです。サクサクして食感がいいんです」

 フライを突き刺すと、ナイフで切らずに一口で食べてしまったシヴァ。

「どう、ですか?」

「……」

 そわそわと見守る俺を無視し、無言でひたすら食べ続けるシヴァ。


 やっぱり、肉がもう固くなっちゃってた!?

 っていうか、そもそもこんな大衆的な料理、位の高い貴族でもあるシヴァの口になんか、合うはずない!?

 思わず謝罪の言葉を口にしようとする俺に、あっというまに皿の上すべて平らげてしまったシヴァは、優雅に口元をナプキンでぬぐった。


「夕日の色と同じ……、お前の髪と目の色も思わせるこのソースは、深い味わいだな。肉の良さを、引き出している」

「ファッ!!?? あ、ありがとう、ございますっ!!」

 ちなみに俺は人参の色とそっくりといわれる髪色と瞳をしている。「夕日の色」なんて素敵な表現を使って俺を形容したのはシヴァが初めてだ。

 たぶん、褒められて、いるんだよな?


「あっ、お茶、入れますね。すみません、気が付かなくて!」

 俺は弾かれたように立ちあがると、沸騰した湯でお茶をいれた。

 本当は、昨日の高級葡萄酒があればもっと良かったのだが、あいにくキリカが持ってきた葡萄酒は昨夜三人で全部飲み切ってしまっていた!


「いい香りだ」

 いれたてのお茶を前に、シヴァは静かに言った。

「月花ブレンドティーです。月影葉と星夜花のミックスで、香りづけに焔花実を入れています。あ、甘いのがお好みなら、ミルス蜜をスプーンで一杯足してみてください。とても温まりますよ」

 シヴァは言われた通り、蜜の入った壺からティーカップにミルス蜜をたっぷりとすくいあげた。


 ――うん、なかなかの甘党とみた!


「本当だ、なんだかホッとするな……」

 リラックス効果もあるといわれる月影葉を煎じた月花ブレンドティーに、強張っていたシヴァの表情もやわらいでいた。

「お口にあったなら、良かったです」

 どぎまぎしながら、俺は言った。



 こんな風に、テーブルで俺の料理をはさんで二人で向かい合っていたら、まるで俺たち新婚さんみたい!!


 ――まあ、そんなこと、実際にはありえないんだけど!

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