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67.最後の願い
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「イーサン、大丈夫かっ!?」
ロハンの後ろから現れたのは、俺の誰よりも愛しい人だった!
「シヴァっ!!」
ロハンが倒れたことで魔法の効果が切れたのか、俺の身体はとたんに自由になった。
「君をこんな危険な目に遭わせてすまない!」
見るとシヴァは、王宮内で初めて出会ったときと同じ、黒い近衛師団の制服に身を包んでいた。
「シヴァ、その恰好は?」
「ここに紛れ込むのには、近衛師団の恰好が一番だ。こいつは俺の攻撃魔法を後ろからまともに食らったから、どうせ朝まで目覚めない。
行くぞ、早く服を着て! くそっ、この変態白魔導士がっ!」
シヴァは転がったロハンを足で思い切り蹴り上げると、俺を促す。
「行くって、どこに?」
肩からシャツをひっかけた俺は、聞いた。
「この牢から君を出す。サンカルのやつ、すっかり王とリシュ王子を丸め込んでしまった。
明日の審問で、イーサンを犯人に仕立て上げるつもりだ。このままだと君の命が危ない!
一度捕まってしまったら、もう二度と疑いを晴らすことはできなくなる!
行くぞイーサン! 俺の攻撃魔法でこの牢を壊すことくらいはできる! ひとまずは二人で国を出よう!」
「国を……」
シヴァの言葉に、俺は愕然とする。
「シヴァ、俺を信じてくれるんですか? でも、そんなことをしたら、あなたまで……」
鉄格子に近づく俺の手を、シヴァは握った。
「イーサン、君がアミュレットを盗むなんてありえない! 君はそんなことをする人間じゃない!
それに、俺のことは気にする必要はない。俺には君が必要だ!
誰が何と言おうと、俺は君を信じている!」
きらめくようなシヴァの翡翠の瞳。
だが、俺は首を振った。
「シヴァ、無理です。あなたとはいけません」
「なぜだ? 君は殺されるかもしれないんだぞ!」
「俺のせいで、あなたまで国賊扱いされるなんて、俺には耐えられません!
俺は、きっと大丈夫です」
「大丈夫なんかじゃないっ! 現に今、ロハンに君は……」
シヴァは強い視線を俺に向ける。
「シヴァ、あなたに話しておかなければいけないことがあります」
俺は鉄格子に顔を近づけた。
「俺、ずっとあなたに嘘をついていました」
「イーサン、話なら後で聞く!」
俺は焦るシヴァの手を、鉄格子越しに握りしめた。
「いえ、聞いてください。王宮で初めて会ったあの日、俺はあなたに嘘をついたんです」
「嘘を……」
俺はシヴァの瞳をじっと見つめた。
「俺、あなたの気をどうしても引きたくて、嘘をつきました。
男との経験が豊富だなんて、とんでもない嘘です。
俺は、あなたに会うまで誰とも付き合ったこともなければ、そういう経験も一度もなかったんです」
「なん、だと……」
シヴァが呆然と俺を見た。
「そんなこと言ったらシヴァはきっと俺に見向きもしてくれないと思ったから、さも経験豊富なふりをしてたんです。
だから、俺、あなたとのことが、何もかも初めてだってんです。嘘をついて本当にごめんなさい」
「俺が、はじめて……」
驚きに手を離したシヴァに、俺は泣き笑いの表情を浮かべた。
「俺、少しの間だったけど、シヴァと一緒にいられてすごく楽しかったです。
もし、シヴァも俺のことほんの少しだけでも情けをかけてくださるというのなら、俺から、最後のお願いをしてもいいですか?」
俺は、羽織ったシャツを落とし、下履きに手をかけた。
「イーサン、何をっ!?」
「シヴァ、お願いです。俺は多分、もうあなたに会うこともないかもしれない。
どうか、最後に、俺に情けをかけてください。
どうか、俺の初めてを、あなたに……」
俺は下履きをするりとはぎ取った。
ロハンの後ろから現れたのは、俺の誰よりも愛しい人だった!
「シヴァっ!!」
ロハンが倒れたことで魔法の効果が切れたのか、俺の身体はとたんに自由になった。
「君をこんな危険な目に遭わせてすまない!」
見るとシヴァは、王宮内で初めて出会ったときと同じ、黒い近衛師団の制服に身を包んでいた。
「シヴァ、その恰好は?」
「ここに紛れ込むのには、近衛師団の恰好が一番だ。こいつは俺の攻撃魔法を後ろからまともに食らったから、どうせ朝まで目覚めない。
行くぞ、早く服を着て! くそっ、この変態白魔導士がっ!」
シヴァは転がったロハンを足で思い切り蹴り上げると、俺を促す。
「行くって、どこに?」
肩からシャツをひっかけた俺は、聞いた。
「この牢から君を出す。サンカルのやつ、すっかり王とリシュ王子を丸め込んでしまった。
明日の審問で、イーサンを犯人に仕立て上げるつもりだ。このままだと君の命が危ない!
一度捕まってしまったら、もう二度と疑いを晴らすことはできなくなる!
行くぞイーサン! 俺の攻撃魔法でこの牢を壊すことくらいはできる! ひとまずは二人で国を出よう!」
「国を……」
シヴァの言葉に、俺は愕然とする。
「シヴァ、俺を信じてくれるんですか? でも、そんなことをしたら、あなたまで……」
鉄格子に近づく俺の手を、シヴァは握った。
「イーサン、君がアミュレットを盗むなんてありえない! 君はそんなことをする人間じゃない!
それに、俺のことは気にする必要はない。俺には君が必要だ!
誰が何と言おうと、俺は君を信じている!」
きらめくようなシヴァの翡翠の瞳。
だが、俺は首を振った。
「シヴァ、無理です。あなたとはいけません」
「なぜだ? 君は殺されるかもしれないんだぞ!」
「俺のせいで、あなたまで国賊扱いされるなんて、俺には耐えられません!
俺は、きっと大丈夫です」
「大丈夫なんかじゃないっ! 現に今、ロハンに君は……」
シヴァは強い視線を俺に向ける。
「シヴァ、あなたに話しておかなければいけないことがあります」
俺は鉄格子に顔を近づけた。
「俺、ずっとあなたに嘘をついていました」
「イーサン、話なら後で聞く!」
俺は焦るシヴァの手を、鉄格子越しに握りしめた。
「いえ、聞いてください。王宮で初めて会ったあの日、俺はあなたに嘘をついたんです」
「嘘を……」
俺はシヴァの瞳をじっと見つめた。
「俺、あなたの気をどうしても引きたくて、嘘をつきました。
男との経験が豊富だなんて、とんでもない嘘です。
俺は、あなたに会うまで誰とも付き合ったこともなければ、そういう経験も一度もなかったんです」
「なん、だと……」
シヴァが呆然と俺を見た。
「そんなこと言ったらシヴァはきっと俺に見向きもしてくれないと思ったから、さも経験豊富なふりをしてたんです。
だから、俺、あなたとのことが、何もかも初めてだってんです。嘘をついて本当にごめんなさい」
「俺が、はじめて……」
驚きに手を離したシヴァに、俺は泣き笑いの表情を浮かべた。
「俺、少しの間だったけど、シヴァと一緒にいられてすごく楽しかったです。
もし、シヴァも俺のことほんの少しだけでも情けをかけてくださるというのなら、俺から、最後のお願いをしてもいいですか?」
俺は、羽織ったシャツを落とし、下履きに手をかけた。
「イーサン、何をっ!?」
「シヴァ、お願いです。俺は多分、もうあなたに会うこともないかもしれない。
どうか、最後に、俺に情けをかけてください。
どうか、俺の初めてを、あなたに……」
俺は下履きをするりとはぎ取った。
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