単なるセフレだったはずの王宮騎士団のイケメンエースが、なぜか身分違いの俺に激しく執着しはじめて、周囲をドン引きさせているって本当ですか!?

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70.本当の目的

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「はぁ!? それは、いったい……」

 サンカルの整った顏が歪む。


「シヴァ様はきっと覚えてなんかいないと思うけど、俺は昔、住んでいたリリュナ村に魔獣討伐に来ていたシヴァ様に、命を助けてもらったことがあるんだっ!」

 俺の言葉に、事の成り行きを見守っていたシヴァが驚いた表情をするのが見えた。
 
 評議席にならぶローブの貴族たちも、お互い顔を見合わせている。


「シヴァ様はそのとき、まだ見習い騎士だった。
でも、そのころからすごく勇敢で! 山道で迷った俺に襲い掛かってきた魔獣から、俺をたった一人で救ってくれたんだ!
その時、俺は助けてくれたシヴァ様に恋をして!
でも王宮の騎士様が、平民の俺なんか相手にしてくれるわけない。そんなことはわかりきっていたけど、未練がましい俺は、どうしてももう一度シヴァ様に会いたくて!
だから、王宮の食堂の働き口に応募したんだ。
どこか遠くからでもシヴァ様を一目見たい、俺のことになんか気づいてもらえなくてもいいから、少しでもシヴァ様の近くにいたいって、そう思って……。
だから俺は、得意だった料理の腕を磨くためにめちゃくちゃ頑張って、食材とかスパイスとかチーズの名前とか、いっぱい勉強して、テーブルマナーも覚えて……」


「はっ、馬鹿馬鹿しい、そんなこと、口ではなんとでも言える!」

 サンカルは吐き捨てるように言ったが、最奥に座るマヤ王女は、なぜか食い入るように、何度も頷きながら俺の話に聞き入っていた。
 

「よっ、イーサン、よく言った! それでこそ男よっ!」

 傍聴席のキリカが、わけのわからない声をかけてくれる。


「イーサン、俺は信じてるぜ! お前は絶対悪いことのできる男じゃねえ!」

 チョプラさんも感極まって立ちあがっていた。


 まわりの傍聴者たちも、なにやら囁き合っている。


「み、みなさん! 騙されてはいけません! これこそ、この男の手口なのです!
この無害そうな外見を利用して、この男はまんまと白魔導士長や、騎士団のシヴァ・ミシュラなどを篭絡していたのですぞ!」

 サンカルは両手を広げて騒がしくなった周囲を鎮めようとするが、突然目の前に現れたシヴァに一歩後ずさった。


「おい、シヴァ、なにをしている!? ちゃんと着席していろ!」

「うるさいっ!」

 シヴァはサンカルと突き飛ばして尻餅をつかせると、審問の椅子に座る俺の前にひざまずいた。


「……シヴァ、あの、まだ席に、いたほうが……」

 慌てる俺に、シヴァは周りの様子などまるで気にならない様子でほほ笑みかけた。


「イーサン、今、俺がどれだけ感動に打ち震えているかわかるか?
そうだ、王宮で君に初めて声をかけられた時、俺はたしかに君に見覚えがあった。
夕日の色と同じ髪と瞳……。君は……、あの時リリュナ村で出会った人だったんだ。
君は、ずっとあの時から、俺のことを……。
それなのに、俺ときたら……!」

 シヴァの翡翠色の目は潤み、心からの感動からなのかキラキラと輝きを増していた。

「あの、シヴァ……、俺、まだ……」


「確かに、シヴァ・ミシュラが見習い騎士として所属していた第2騎士団は、6年前にリリュナ村へ魔獣討伐へ向かったと記録に残っております」

 法務長が手元の文書を見ながら発言する。


 サンカルはふらふらと立ち上がると、その波打つ金髪の髪をかき上げた。

「そ、それがなんだというのです!
イーサンがシヴァ・ミシュラと顔見知りだったことが、この男の無実を証明することにはなりません!
現に、この男の住処で『月光のアミュレット』は見つかったのですから! それに……」

 サンカルは、上着を両手で払うと、俺に何ともいやらしい笑みをむけてきた。


「あの、忌まわしい男の形を模した卑猥な物体はどう説明するのだ?
あれこそ、お前が王宮の男たちをくわえこんでいたことの明らかな証拠だろう!」

 証拠品として、白い箱に入った張り型がが審問官たちの前に置かれる。

 箱の中を確認した評議席の貴族たちは、皆顔をしかめて箱を閉じる。


「それは……」


「それは僕から説明するよ!」

 突然、審問室の扉が開き、二人の人物が姿を現した。









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