175 / 180
第三章
第175話 ファンヒーターもどき
しおりを挟む
温暖な気候とはいえ、真冬ともなれば寒さはそれなりに厳しさを増していた。
そんなある日のこと、ヒデさんが満面の笑みを浮かべて魔道具を見せて言った。
「じゃじゃーん!ちょっと遅くなったけど、魔道具が完成したよ」
そう言って床に置いて見せてくれたのは、前世でよく見たファンヒーターだった。
といっても、ボタンは無く赤い魔石が埋め込んであるだけの簡素なものなのだが。
なんちゃってファンヒーターもどきの前に立ち、ヒデさんがドヤ顔で説明をし始めた。
「この赤い魔石に魔力を流せばこの部分から暖かい風が出る仕組みになっているんだ。じゃあ、ちょっとやってみるから」
赤い魔石に魔力を流すと暖かい風が勢いよく出てきた。
「わっ!暖かい!それに思っていたよりも音がしない!」
記憶にあるファンヒーターと比べても動作音は非常に静かな上に、短時間で室内が暖まっていることに驚いた。
私の驚いた表情を見て、ヒデさんが自慢気な顔をする。
「でしょ?もっと音がすると思っていたんだけど、使用しているのが魔石だからなのか想像していたより静かなんだよね。あと、コストを抑えられたのが良かった。これなら利益を確保出来ると思う。ようやく商売として目途がつきそうで安心したよ」
明らかに安堵の表情を浮かべたヒデさんに、私はこれまでのヒデさんの苦労を思い出して苦笑する。
便利な魔道具を造るには素材は欠かせないし、モノによっては素材が高額だったり手に入らなかったりと供給が安定しないこともあって一定の利益を確保するのが難しかった。
ちなみに、コーラも量産は難しいので販売に至っていないことを補足しておく。
それと、冷蔵庫は数量限定で販売しているものの、良心価格に設定しているため利益はほとんどないらしい。
いずれ庶民にも購入してもらえるように価格を考えて試行錯誤しているみたいなのだが、如何せん人を雇う余裕がないこととヒデさん一人で魔道具造りをしているため、時間がいくらあっても足りないとのことだった。
「ねぇ、資金を出すからそろそろ人を雇ったらどうかな?このままだと新たに魔道具造りをするにしても集中出来ないでしょう?」
「……う~ん。それはそうなんだけど……ユーリさんにお世話になりっぱなしっていうのもなぁ……」
眉尻をへにょりと下げて口ごもるヒデさんに、私は諭すように語りかけた。
「そんなことないよ。私だってヒデさんに色々と助けてもらっているし、ヒデさんのおかげで生活も便利になったと実感しているのだから。それに、庶民の暮らしが便利になれば良いなって私も思っているの。ヒデさんの庶民に寄り添った考え方は尊敬しているしその手助けになるのなら私にも手伝わせてほしい」
以前ヒデさんは、便利な魔道具をより安価で一般に広めたいと言っていた。
私もその考えには大賛成だ。
だけど、そのためにはある程度の資金と人材が必要となる。
私には冷蔵庫やファンヒーターを造る知識も技術もないけれど、幸いにもブロンとメイスのおかげで潤沢な資金が手元にある。
せめてそれくらいはさせてほしい。
そんな想いで提案してみたのだけど、ヒデさんには一度断られていた。
しかし、今回は私も引くつもりはない。
カミール領に来てから数か月、ヒデさんのやり方を黙って見守っていたけれど、彼のやり方では事業を拡大するのは疎か、このままではいつまで経っても魔道具を一般に普及させるのは難しいだろうと思うようになっていた。
ヒデさんも一度断ったものの、どうしたら良いのか分からずに困っていたようだ。
私の申し出を受けて明らかに安堵の表情を浮かべたヒデさんは、おずおずとした様子で尋ねてきた。
「……じゃあ、ユーリさんに甘えようかな。実はちょっと困っていたんだよね。僕、魔道具造りは苦じゃないんだけど、料金設定とか交渉とか苦手で……お願いしてもいいかな?」
「もちろんだよ!人には得手不得手があるんだから出来ることをしたら良いと思う。無理して苦手なことをする必要はないし、それを補える人を雇えば済む話だしね。資金に関しては心配しなくて大丈夫だから安心して私に任せて」
頼ってくれたのが嬉しくてまっ平の胸をとんと叩く。
ヒデさんは申し訳なさそうに眉尻を下げていたけど、困った時はお互いさまだ。
次の日から人員の確保や店舗探しに走り回った私は、忙しくも充実した毎日を送った。
そんなある日のこと、ヒデさんが満面の笑みを浮かべて魔道具を見せて言った。
「じゃじゃーん!ちょっと遅くなったけど、魔道具が完成したよ」
そう言って床に置いて見せてくれたのは、前世でよく見たファンヒーターだった。
といっても、ボタンは無く赤い魔石が埋め込んであるだけの簡素なものなのだが。
なんちゃってファンヒーターもどきの前に立ち、ヒデさんがドヤ顔で説明をし始めた。
「この赤い魔石に魔力を流せばこの部分から暖かい風が出る仕組みになっているんだ。じゃあ、ちょっとやってみるから」
赤い魔石に魔力を流すと暖かい風が勢いよく出てきた。
「わっ!暖かい!それに思っていたよりも音がしない!」
記憶にあるファンヒーターと比べても動作音は非常に静かな上に、短時間で室内が暖まっていることに驚いた。
私の驚いた表情を見て、ヒデさんが自慢気な顔をする。
「でしょ?もっと音がすると思っていたんだけど、使用しているのが魔石だからなのか想像していたより静かなんだよね。あと、コストを抑えられたのが良かった。これなら利益を確保出来ると思う。ようやく商売として目途がつきそうで安心したよ」
明らかに安堵の表情を浮かべたヒデさんに、私はこれまでのヒデさんの苦労を思い出して苦笑する。
便利な魔道具を造るには素材は欠かせないし、モノによっては素材が高額だったり手に入らなかったりと供給が安定しないこともあって一定の利益を確保するのが難しかった。
ちなみに、コーラも量産は難しいので販売に至っていないことを補足しておく。
それと、冷蔵庫は数量限定で販売しているものの、良心価格に設定しているため利益はほとんどないらしい。
いずれ庶民にも購入してもらえるように価格を考えて試行錯誤しているみたいなのだが、如何せん人を雇う余裕がないこととヒデさん一人で魔道具造りをしているため、時間がいくらあっても足りないとのことだった。
「ねぇ、資金を出すからそろそろ人を雇ったらどうかな?このままだと新たに魔道具造りをするにしても集中出来ないでしょう?」
「……う~ん。それはそうなんだけど……ユーリさんにお世話になりっぱなしっていうのもなぁ……」
眉尻をへにょりと下げて口ごもるヒデさんに、私は諭すように語りかけた。
「そんなことないよ。私だってヒデさんに色々と助けてもらっているし、ヒデさんのおかげで生活も便利になったと実感しているのだから。それに、庶民の暮らしが便利になれば良いなって私も思っているの。ヒデさんの庶民に寄り添った考え方は尊敬しているしその手助けになるのなら私にも手伝わせてほしい」
以前ヒデさんは、便利な魔道具をより安価で一般に広めたいと言っていた。
私もその考えには大賛成だ。
だけど、そのためにはある程度の資金と人材が必要となる。
私には冷蔵庫やファンヒーターを造る知識も技術もないけれど、幸いにもブロンとメイスのおかげで潤沢な資金が手元にある。
せめてそれくらいはさせてほしい。
そんな想いで提案してみたのだけど、ヒデさんには一度断られていた。
しかし、今回は私も引くつもりはない。
カミール領に来てから数か月、ヒデさんのやり方を黙って見守っていたけれど、彼のやり方では事業を拡大するのは疎か、このままではいつまで経っても魔道具を一般に普及させるのは難しいだろうと思うようになっていた。
ヒデさんも一度断ったものの、どうしたら良いのか分からずに困っていたようだ。
私の申し出を受けて明らかに安堵の表情を浮かべたヒデさんは、おずおずとした様子で尋ねてきた。
「……じゃあ、ユーリさんに甘えようかな。実はちょっと困っていたんだよね。僕、魔道具造りは苦じゃないんだけど、料金設定とか交渉とか苦手で……お願いしてもいいかな?」
「もちろんだよ!人には得手不得手があるんだから出来ることをしたら良いと思う。無理して苦手なことをする必要はないし、それを補える人を雇えば済む話だしね。資金に関しては心配しなくて大丈夫だから安心して私に任せて」
頼ってくれたのが嬉しくてまっ平の胸をとんと叩く。
ヒデさんは申し訳なさそうに眉尻を下げていたけど、困った時はお互いさまだ。
次の日から人員の確保や店舗探しに走り回った私は、忙しくも充実した毎日を送った。
22
あなたにおすすめの小説
異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
元チート大賢者の転生幼女物語
こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。)
とある孤児院で私は暮らしていた。
ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。
そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。
「あれ?私って…」
そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。
魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。
ソラリアル
ファンタジー
※本作は改題・改稿をして場所を移動しました。
現在は
『従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々』
として連載中です。2026.1.31
どうして、魔獣と呼ばれる存在は悪者扱いされてしまうんだろう。
あんなに癒しをくれる、優しい子たちなのに。
そんな思いを抱いていた俺は、ある日突然、命を落とした――はずだった。
だけど、目を開けるとそこには女神さまがいて、俺は転生を勧められる。
そして与えられた力は、【嫌われ者とされる子たちを助けられる力】。
異世界で目覚めた俺は、頼りになる魔獣たちに囲まれて穏やかな暮らしを始めた。
畑を耕し、一緒にごはんを食べて、笑い合う日々。
……なのに、人々の噂はこうだ。
「森に魔王がいる」
「強大な魔物を従えている」
「街を襲う準備をしている」
――なんでそうなるの?
俺はただ、みんなと平和に暮らしたいだけなのに。
これは、嫌われ者と呼ばれるもふもふな魔獣たちと過ごす、
のんびり?ドタバタ?異世界スローライフの物語。
■小説家になろう、カクヨムでも同時連載中です■
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる