33 / 180
第一章
第33話 ランクが上がってしまった
バートンさんに腕を掴まれたまま解体場へ到着すると、椅子に腰かけて休憩していた男性が私達に気がついて立ち上がる。
彼もなかなか立派な体格をしており、さっきまで腰を下していた椅子が、その重みから解放されるのと同時に軋む音がした。
厳つい顔のバートンさんとは違い、彼は人の良さそうな顔で大股で歩いて近寄ると、白い歯を見せて嬉しそうに言った。
「おお、バートンじゃねぇか!こんな所に顔を出すなんて珍しいな」
「デリック、久しいな。実は一つ仕事を頼まれて欲しいんだが、今、大丈夫か?」
だいぶ頭が寂しくなったデリックさんと会話をし始めたバートンさん。
大柄な二人が並ぶと、それだけで圧を感じてしまう。
私は、バートンさんの陰に隠れて二人の様子を窺った。
二人が会話をしている間、解体場を興味深げに眺める。
まだ午前中ということもあってか大きなテーブルの上は綺麗に片付いており、作業員の姿も少ない。
長年この場所で解体をしていれば、血がこびり付いたり生臭かったりしてもおかしくないはずなのに、どういうわけか全くそんな気配はなかった。
意外にも清潔に保たれていたことに驚きを覚えてしまう。
不意に、頭上からバートンさんの低い声が降りかかって顔を上げる。
「ユーリ、さっそくで悪いが魔物を出してもらえるか」
そう口にするなり、バートンさんに腕を引かれて大きなテーブルの前に連れて行かれた。
このテーブルに魔物を出せば良いのね。
頷いた私は、バートンさんに言われるまま斜め掛けのバッグから魔物を取り出してテーブルに置いていく。
だが、思っていたよりブラッディホーンボアが大き過ぎて、他の魔物の置き場所が無い。
困り果てた私は、床に並べて置くことにした。
それを見たバートンさんが、大きく目を見開いて覗き込んできた。
「お、おいおいおい……。これだけの魔物を冒険者になって僅か三日の坊主が仕留めたってぇのか?とてもじゃねぇが信じられん……」
茫然としながらバートンさんの呟きを耳にしたデリックさんが、大きな声で間の抜けた声をあげた。
「はぁ!?冒険者になってまだ三日だって!?マジかよ!」
茫然とする二人を前に、私は何か間違ってしまったかと不安になり無言で見守っていた。
ようやく我に返ったバートンさんが口を開いた。
「ユーリ、ランクを上げるぞ。お前は今日から銅級冒険者だ」
バートンさんから言い放たれた言葉に、今度は私の方が驚愕に目を見開いてしまう。
「えぇっ!?」
冒険者登録をしてまだ三日目だというのに、もうランクを上げるの!?
私、十歳の子供なんですけどっ!
ついでに言わせてもらえれば、この世界の常識すら碌に知らない中身は平和ボケした異世界人なんですが!?
たった三日で鉄級から銅級にランクを上げられた私の気持ちは吹き荒れていた。
私の気持ちが表情に出ていたのだろう。
バートンさんは大きな体を屈めて目線を合わせると、申し訳なさそうに眉尻を下げて語り始めた。
「あ―。その、だな。俺としても経験不足のお前のランクを上げるのは悩んだ。だがな、実力があると分かっている者を低いランクのままにしておくのは勿体ないと思ってな。……本当なら銀級でも問題ないと思ったんだが……。ランクを一つ上げるだけに留めておいた」
ふぇ!?
銀級!?
考えることを放棄してしまった私の脳は、そこで思考を止めてしまう。
私と視線を合わせて、申し訳なさそうにしながら頬をぽりぽりと掻いていた手を止めたバートンさんが徐に立ち上がった。
「デリック。これらの魔物の解体はいつまでに終わりそうだ?」
唐突に声をかけられたデリックさんだったが、さっきまでの呆けた顔から急に職人の顔になってテーブルに置かれた魔物に視線を向けた。
「……そうだな。急いでも昼過ぎになる。なんせ、こんな大きなブラッディホーンボアは久しぶりだからなぁ」
デリックさんは瞳を輝かせて楽しげに言った。
どうやら職人魂に火がついたようだ。
そんなデリックさんを残して、私達は一旦個室へと戻ることにした。
彼もなかなか立派な体格をしており、さっきまで腰を下していた椅子が、その重みから解放されるのと同時に軋む音がした。
厳つい顔のバートンさんとは違い、彼は人の良さそうな顔で大股で歩いて近寄ると、白い歯を見せて嬉しそうに言った。
「おお、バートンじゃねぇか!こんな所に顔を出すなんて珍しいな」
「デリック、久しいな。実は一つ仕事を頼まれて欲しいんだが、今、大丈夫か?」
だいぶ頭が寂しくなったデリックさんと会話をし始めたバートンさん。
大柄な二人が並ぶと、それだけで圧を感じてしまう。
私は、バートンさんの陰に隠れて二人の様子を窺った。
二人が会話をしている間、解体場を興味深げに眺める。
まだ午前中ということもあってか大きなテーブルの上は綺麗に片付いており、作業員の姿も少ない。
長年この場所で解体をしていれば、血がこびり付いたり生臭かったりしてもおかしくないはずなのに、どういうわけか全くそんな気配はなかった。
意外にも清潔に保たれていたことに驚きを覚えてしまう。
不意に、頭上からバートンさんの低い声が降りかかって顔を上げる。
「ユーリ、さっそくで悪いが魔物を出してもらえるか」
そう口にするなり、バートンさんに腕を引かれて大きなテーブルの前に連れて行かれた。
このテーブルに魔物を出せば良いのね。
頷いた私は、バートンさんに言われるまま斜め掛けのバッグから魔物を取り出してテーブルに置いていく。
だが、思っていたよりブラッディホーンボアが大き過ぎて、他の魔物の置き場所が無い。
困り果てた私は、床に並べて置くことにした。
それを見たバートンさんが、大きく目を見開いて覗き込んできた。
「お、おいおいおい……。これだけの魔物を冒険者になって僅か三日の坊主が仕留めたってぇのか?とてもじゃねぇが信じられん……」
茫然としながらバートンさんの呟きを耳にしたデリックさんが、大きな声で間の抜けた声をあげた。
「はぁ!?冒険者になってまだ三日だって!?マジかよ!」
茫然とする二人を前に、私は何か間違ってしまったかと不安になり無言で見守っていた。
ようやく我に返ったバートンさんが口を開いた。
「ユーリ、ランクを上げるぞ。お前は今日から銅級冒険者だ」
バートンさんから言い放たれた言葉に、今度は私の方が驚愕に目を見開いてしまう。
「えぇっ!?」
冒険者登録をしてまだ三日目だというのに、もうランクを上げるの!?
私、十歳の子供なんですけどっ!
ついでに言わせてもらえれば、この世界の常識すら碌に知らない中身は平和ボケした異世界人なんですが!?
たった三日で鉄級から銅級にランクを上げられた私の気持ちは吹き荒れていた。
私の気持ちが表情に出ていたのだろう。
バートンさんは大きな体を屈めて目線を合わせると、申し訳なさそうに眉尻を下げて語り始めた。
「あ―。その、だな。俺としても経験不足のお前のランクを上げるのは悩んだ。だがな、実力があると分かっている者を低いランクのままにしておくのは勿体ないと思ってな。……本当なら銀級でも問題ないと思ったんだが……。ランクを一つ上げるだけに留めておいた」
ふぇ!?
銀級!?
考えることを放棄してしまった私の脳は、そこで思考を止めてしまう。
私と視線を合わせて、申し訳なさそうにしながら頬をぽりぽりと掻いていた手を止めたバートンさんが徐に立ち上がった。
「デリック。これらの魔物の解体はいつまでに終わりそうだ?」
唐突に声をかけられたデリックさんだったが、さっきまでの呆けた顔から急に職人の顔になってテーブルに置かれた魔物に視線を向けた。
「……そうだな。急いでも昼過ぎになる。なんせ、こんな大きなブラッディホーンボアは久しぶりだからなぁ」
デリックさんは瞳を輝かせて楽しげに言った。
どうやら職人魂に火がついたようだ。
そんなデリックさんを残して、私達は一旦個室へと戻ることにした。
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について
水定ゆう
ファンタジー
【火曜、木曜、土曜、に投稿中!】
千年前に起こった大戦を鎮めたのは、最強と恐れられ畏怖された「魔女」を冠する魔法使いだった。
月日は流れ千年後。「永久の魔女」の二つ名を持つ最強の魔法使いトキワ・ルカはふとしたことで眠ってしまいようやく目が覚める。
気がつくとそこは魔力の濃度が下がり魔法がおとぎ話と呼ばれるまでに落ちた世界だった。
代わりに魔術が存在している中、ルカは魔術師になるためアルカード魔術学校に転入する。
けれど最強の魔女は、有り余る力を隠しながらも周囲に存在をアピールしてしまい……
最強の魔法使い「魔女」の名を冠するトキワ・ルカは、現代の魔術師たちを軽く凌駕し、さまざまな問題に現代の魔術師たちと巻き込まれていくのだった。
※こちらの作品は小説家になろうやカクヨムでも投稿しています。
スラム街の幼女、魔導書を拾う。
海夏世もみじ
ファンタジー
スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。
それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。
これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
犬の散歩中に異世界召喚されました
おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。
何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。
カミサマの許可はもらいました。
今日からはじめる錬金生活〜家から追い出されたので王都の片隅で錬金術店はじめました〜
束原ミヤコ
ファンタジー
マユラは優秀な魔導師を輩出するレイクフィア家に生まれたが、魔導の才能に恵まれなかった。
そのため幼い頃から小間使いのように扱われ、十六になるとアルティナ公爵家に爵位と金を引き換えに嫁ぐことになった。
だが夫であるオルソンは、初夜の晩に現れない。
マユラはオルソンが義理の妹リンカと愛し合っているところを目撃する。
全てを諦めたマユラは、領地の立て直しにひたすら尽力し続けていた。
それから四年。リンカとの間に子ができたという理由で、マユラは離縁を言い渡される。
マユラは喜び勇んで家を出た。今日からはもう誰かのために働かなくていい。
自由だ。
魔法は苦手だが、物作りは好きだ。商才も少しはある。
マユラは王都の片隅で、錬金術店を営むことにした。
これは、マユラが偉大な錬金術師になるまでの、初めの一歩の話──。