転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

文字の大きさ
38 / 180
第一章 

第38話 私、女の子だもん

しおりを挟む
 美味しい料理を心行くまで堪能した後、また入り組んだ迷路のような路地を戻り冒険者ギルドに帰ってきた。
 もし、次一人であの店に行けと言われたら確実に迷子になる自信がある。
 それにしても、安くて美味しいなんて地元民が羨まし過ぎる。

 そろそろ魔物の解体は終了している頃だろうか。
 慌ただしくロージスの街を発ったから、短い時間とは言え街を散策出来たのは嬉しい。
 バートンさんの後に続き裏の解体場へ向かう。
 私達が解体場に姿を見せると、待ちかねたようにデリックさんが話しかけてきた。

「おー、バートン。解体は全て終わったぞ。状態が良いから素材に肉、魔石に至るまで高額だ。で、全てこっちで買い取りしたら良いのか?それとも幾つか手元に残しておくか?」

 デリックさんの話しを受けて、バートンさんが私に向かって尋ねてきた。

「だってよ。ユーリ、お前はどうしたい?あれだけ大きなブラッディホーンボアの魔石なら相当な高値になるだろうな。あの状態なら肉だって悪かぁないはずだ。どうするかはお前の判断に任せる」

 素材に肉に魔石……。
 全てラノベで何度も読んだことのある展開に、無意識のうちに喉をごくりと鳴らしていた。
 物語では、異世界転生を果たした少年が、本人の意思とは関係なくチート無双していくのだが、冒険者ギルドで討伐した魔物を考え無しに出した結果、周囲を驚かせてしまうという話しだった。
 ……もしかして、私も何かやらかしてしまったのだろうか。
 すでに、冒険者登録をして三日目で銅級に昇級している時点で十分おかしいのだが、私はそのことに全く気づかずに無駄に悩んでいた。
 すると、肩に乗っていたメイスが脳内に話しかけてきた。

『まだまだ旅は長い。全て買い取ってもらえ。食糧のことならこの俺が居るから何も問題はない』

 当初の目的である家を出たのは良いが、私にはこれといった目的は無い。
 メイスの言うように、旅を続けるのならお金は出来るだけ沢山あった方が良いだろう。

「あの、それでは全て買い取りでお願いします」

 返事を待っているデリックさんに声をかけると、満面の笑みでデリックさんが応えた。

「おっ、そうか。それは助かる。久しぶりの大物だからな。きっと、飛ぶように売れるぞ」

 心なしか、デリックさんの目にドルマークが浮かんで見えた。
 その後、解体費用を差し引いた報酬を受け取ったのだが、その破格な金額に驚愕したのは言うまでもない。
 受付の女性から預かっていた冒険者カードを手にしたデリックさんが、素早く手続きを済ませてカードを返してくれた。
 その時、ニヤリと口の端を上げて、したり顔でボソッと呟いた。

「坊主、一気に金持ちになったな。いいか、坊主は世間の常識ってぇのを知らねぇ。くれぐれも美人には気をつけろよ。綺麗な女には棘があるって言うしな」

 何となくだが、デリックさんの言いたいことは理解した。
 お金に群がるのは何も美人に限ったことではないのだが、この世界でもその認識にあまり大差ないようだ。
 用心に越したことはないが、今世あまりにも優しさに飢えていた私の耳には痛い言葉である。
 でも、私が美人な女性に騙されることは無いと思う。
 だって、私、女の子だもん。
 したり顔のデリックさんに向かって笑顔で返事をした。

「はい、美味い話にも見た目が良い人にも十分気をつけます。ですからデリックさんも、この事を口外しないでくださいね。一応、個人情報になりますので」

 この世界にも守秘義務というものがあるのかは知らない。
 それでも、念のため情報を漏らさないように笑顔でお願いした。
 デリックさんの隣で私達のやり取りを聞いていたバートンさんが、いきなり腹を抱えて笑い始めた。

「ぶっ!あっはははは!ユーリに一本取られたなデリック。それにしても、ユーリはちっこいのに難しい言葉を知っているんだな。そうだぞ、個人に関する情報はたとえ身内であっても、本人の了承が無い限り教えてはならねぇ。ちゃんと規則で決められている。お前は本当に賢いな」

 バートンさんが豪快に笑う隣で、デリックさんは寂しくなった頭をガシガシと搔いて苦笑いを浮かべた。
 そんなデリックさんに視線を向けた後、バートンさんのごつごつとした手が私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
 乱暴ではあったが、力を加減してくれたのか首がぐらつくことはなかった。
 ただし、きちんと整えられた髪は乱れてしまったが。

 そんなこんなで会話を終え解体場を後にした私達は、次の街を目指して足早にカントーリの街を発った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。

ソラリアル
ファンタジー
※本作は改題・改稿をして場所を移動しました。 現在は 『従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々』 として連載中です。2026.1.31 どうして、魔獣と呼ばれる存在は悪者扱いされてしまうんだろう。 あんなに癒しをくれる、優しい子たちなのに。 そんな思いを抱いていた俺は、ある日突然、命を落とした――はずだった。 だけど、目を開けるとそこには女神さまがいて、俺は転生を勧められる。 そして与えられた力は、【嫌われ者とされる子たちを助けられる力】。 異世界で目覚めた俺は、頼りになる魔獣たちに囲まれて穏やかな暮らしを始めた。 畑を耕し、一緒にごはんを食べて、笑い合う日々。 ……なのに、人々の噂はこうだ。 「森に魔王がいる」 「強大な魔物を従えている」 「街を襲う準備をしている」 ――なんでそうなるの? 俺はただ、みんなと平和に暮らしたいだけなのに。 これは、嫌われ者と呼ばれるもふもふな魔獣たちと過ごす、 のんびり?ドタバタ?異世界スローライフの物語。 ■小説家になろう、カクヨムでも同時連載中です■

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...