転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第二章

第88話 もふもふは最高

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 時間はかかったが無事アルファイド王国に入国した私達は、お互いに顔を見合わせて安堵の表情を浮かべた。

「はぁ……。国境を越えるだけであんなに時間がかかるなんて思わなかった……」

 そう零した私に続いて、ヒデさんも深いため息を吐きながら口を開いた。

「本当、もっとスムーズに入国出来ると思ってた。……考えが甘かった」

 ヒデさんの言葉に私は頷き返す。
 魔法がある世界だからといって、何もかもがそう都合良くいくとは限らない。
 もし、また国境越えをすることがあれば、早めに行動しようと決めた。
 その前に、胸に抱きかかえたブロンに視線を向けて、門での出来事を注意しようと口を開いた。

「……ブロン。シルバーウルフと間違われたからといって、すぐに吠えちゃ駄目よ。相手はブロンの言葉が分からないんだから。あと、フェンリルだってことは内緒にしておきたいの。シルバーウルフってことにしたいんだけどいいかな?」

 フェンリルといえば、ラノベでもその扱いは上位の魔物とか聖獣とか重要な役回りが多く、国の象徴として扱われたり神の遣いだったりと、とにかく人目を引く存在なのだ。
 私としては、出来るだけ目立つようなことは避けたい。
 
『……むむぅ。あんな弱いのといっしょなのは嫌だけど、おねえちゃんを困らせたくないからがまんする。……ものすごく嫌だけど』

 心底嫌だと言わんばかりの声音に、私は苦笑する。
 精神が幼いとは言え、やはりフェンリルとしてのプライドがあるのだろう。
 それでも、私のためにプライドよりも我慢する方を選んでくれたブロンの気持ちが嬉しい。
 ブロンのふわふわの毛並みに頬ずりをして感謝の言葉を口にした。

「ありがとう、ブロン。我慢ばかりさせてごめんね。ブロンは本当にいい子ね」

『えへへ。おねえちゃんの傍に居られるならぼく我慢できるよ。だってぼく、いい子だもん』

 抱きかかえられたブロンはこちらに振り返って尻尾をパタパタと振ると、胸に頭を擦りつけてきた。
 ブロンと出会った当初から、なぜか私には従順で好意的だった。
 その態度は今も変わらない。
 ブロンのそんな態度に、私は心を癒された。
 きっと、ヒデさんも同じ気持ちだろう。
 現に今、胸に頭を擦り付けているブロンを見てヒデさんの目尻は垂れ下がり、頬は緩みまくっているのだから。
 
 よしよしとブロンの頭を撫でていたら、左肩から不意に重低音の声が降ってきた。

『……最近はそいつばかり可愛がっていないか?俺だってお前の言うもふもふだぞ』

 ブロンばかり可愛がっていたのが気に入らなかったのか、メイスの声色には不満が滲んでいる。
 艶のあるビロードのような黒い尻尾が不機嫌に揺れているのを視界に捉えて、私は苦笑いを浮かべてメイスに謝った。

「そんなつもりはなかったんだけどな。もちろん、メイスのもふもふも最高だよ。だから機嫌を直して」

 両手はブロンを抱きかかえて塞がれていたため、私は頬をメイスの頭にすり寄せた。

『……そうか。俺のもふもふは最高なのか』

 そう呟いたメイスの声色は、どこか嬉しそうに聞こえる。
 ブロンの毛並みもメイスの毛並みも、どちらも私には最高の手触りだ。
 ブロンとメイスのもふもふを堪能していると、ブロンが私を見上げて問いかけてきた。

『おねえちゃん、ぼくのもふもふはー?』

「ふふ。もちろん、ブロンのもふもふも最高だよ」

 笑顔で答えると、ブロンの尻尾が激しく揺れる。
 ふわふわの毛並みと滑らかな毛並みに挟まれて、思わず頬が緩む。
 これ以上にない癒しに満足していると、ヒデさんが遠慮がちに声をかけてきた。

「あのぅ……。お楽しみのところ悪いんだけど。そろそろ出発した方がよくない?」

 その声に私はハッと我に返る。

「そ、そうだね。国境を越えて安心したせいでつい気が緩んじゃった」

 アルファイド王国に入ったことで安心していたが、ここはまだ国境で王都までは遠い。
 先ずは王都を目指そう。
 そう決意して顔を上げた私は、皆に向かって口を開いた。

「それじゃあ、先ずは王都に行こう。王都なら情報が手に入りやすいと思うの」

『ふむ。ユーリの言う通りだな。では、さっさと行こう』

 私の提案にメイスが賛同すると、ヒデさんも頷いた。
 


 その後、王都までの乗り合い馬車を見つけると、私達は急いで馬車に乗り込んだ。
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