転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第二章

第104話 アルファイド王国での王都観光 その七

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 翌日、就寝が遅くなったこともあり、目を覚ましたのは随分と陽射しが高くなってからのことだった。
 さすがに今日はメイスも気を遣ってくれたようだ。
 寝ぼけ眼のまま身支度を整えてヒデさんの部屋に向かう。
 まだ寝ているのかもしれないと考えて控えめに扉を叩くと、すぐにヒデさんが扉を開けて部屋に招き入れてくれた。

「おはよう。てか、もうこんにちはだね」

 そう言った私に、ヒデさんはニコッと微笑んで答える。

「おはよう。昨夜は遅くまでマヨネーズを作っていたんだから仕方ないよ。たまにはのんびりとするのも良いんじゃない?」

 明るく答えたヒデさんに、私もそれはそうかと笑みを浮かべる。

「そうだね。今日くらいだらだらしても良いよね?」

 王都に来たからといって、必ずしも王都観光に出掛けなければならないわけではない。
 一日くらい何もせずにだらだらと過ごすのも有りだろう。

「ヒデさんはどうするの?」

 私の問いかけにヒデさんは考える素振りを見せた後、口を開いた。

「ブロンと出かけようと思う。ずっと体を動かせないとストレスが溜まるだろう?王都の西側に広い草原があるみたいだから行ってみようと思ってる」

 確かに、アルファイド王国に入ってからというもの、ほとんど運動をする機会がなかった。
 すっかりそのことを失念していた私は、眉尻を下げてヒデさんとブロンに謝った。

「すっかり忘れてた。ブロン、ごめんね。ヒデさん、ありがとう」

 謝罪の言葉を口にした私に向かってブロンが元気に答えた。

『いいよぉ~。おにいちゃんと遊んでくるから、おねえちゃんはゆっくりしてて。おにいちゃん、はやく行こう!』

 久しぶりに体を動かせるのが嬉しいのか、ヒデさんの足元をくるくると走り回っている。
 そんなブロンを見ながらヒデさんが笑い声を上げた。

「はははっ!その前にご飯食べなくていいのか?朝ご飯もまだだろ?」

『あっ!ごはん!』

 ヒデさんに指摘されて思い出したブロンが途端に『ごはん!ごはん!』と連呼し出したので、私達は食堂で朝食兼昼食を済ませた後、別行動をとることにした。







 部屋に戻りベッドでごろごろと過ごしていた。
 だらだらと過ごすと決めたものの、何もしないことがこんなに退屈だとは思わなかった。
 一時間も経たないうちに暇を持て余した私は、亜空間に仕舞った荷物の整理をすることにした。
 と言っても、整理整頓されているし表示されたリストを眺めているだけなんだけど。
 私はベッドに寝転びながら、表示されたリストを眺めてポツリと呟いた。

「意外と多くの物が収納されているんだぁ。あんまり気にしていなかったからびっくりだわ」

 ブロンが狩ってきた大量の魔物もそうだが、グローブフォレスト商会で購入した米や調味料、お母様の形見のドレスや宝石、小物類など実に多くの物が亜空間に収納されているのをじっくりと見るのは初めてだった。
 いつも何の気なしにぽいぽいと亜空間に収納していたが、これも魔力量が多い私だからこそなせる業なのだろう。
 ご先祖様には本当に感謝だ。
 そんなことを考えているうちに、いつの間にか私は眠りに落ちていた。







 ゆったりとした静かな時間もブロンの元気な声で終わりを迎える。

『たっだいま―!』

 その元気な声を耳にして一気に意識が浮上する。
 たたたたっと軽快な足音がしたと思ったら、ベッドに飛び乗ったブロンが顔をペロペロと舐めて起こす。

「ふ、ふふふ。くすぐったいよ。ブロン、お帰り」

 顔中を舐めまわすブロンを制止して体を抱きしめると、ブロンは尻尾をパタパタと激しく振って答える。

『ただいまー』

 それから、ブロンの後について部屋に入ってきたヒデさんを見上げて、上半身を起こすと声をかけた。

「ヒデさん、お帰りなさい。ブロンの面倒をみてくれてありがとう。疲れたでしょう?」

 ベッドに座りなおして声をかけると、ヒデさんは苦笑を漏らしながら答えた。

「いや、疲れてはいないよ。ブロンと居ると僕もいい運動になるからね」

 そう答えたヒデさんの顔は、ますます日に焼けて黒くなっていた。
 そんなヒデさんを見て、私は一人だけだらだらと過ごしてしまったことを申し訳なく思った。
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