泣きたがりの君に優しい歌をあげる

佐野川ゆず

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 鳴海健人くん……、かあ。

 珍しい時期からの転校だなと思った。だって新学年が始まったばかり。
 何か問題でも起こして学校を変わったのかな?なんて事が頭をよぎる。
 クラスも皆もそう思っている子が多いようで、腫れ物を触るような目で見ている。何真質問したそうだけれど、でも何を聞けばいいのか……なんて、そんな雰囲気を感じるのだ。 けれども当人は飄々とした態度で顔色一つ変えない。というか、髪の毛と眼鏡で表情が読めないのだ。なんだか真面目そうだけれど不思議な雰囲気の子だな……と思った。

 でも、わかりやすい表現で一言で言えば「イケてない男子」だった。
 いわゆる陰キャの類いにはいりそうな感じ。

 そんな事を考えていると先生が口を開いた。教室の中を見回して私の隣にぽつんといきなり置いてあった席に目を止める。

「鳴海の席はっと…」

 今朝学校に来たらいきなり席が用意してあったのだ。少し不思議に思ったのだけれど、今日鳴海くんがくるというのならそういう事だったのか…と思う。

「私の隣?ですが?」
「お、良く気づいたな、瀬野川」
「朝来たらいきなり席が増えていれば」
「そう、じゃ鳴海。隣の瀬野川だ。何かわからない事があれば聞けばいい。いいやつだぞ」
「わかりました」


鳴海くんは私をチラリと見ると、先生にそう応えて隣の席に座った。

「鳴海くん。私、瀬野川さくらです。よろしく」
「あ?うん。よろしく」

鳴海くんが隣の席に座ったタイミングで私は笑顔を作って話しかける。
するとそっけないけれど返事が返ってくる。
彼は私の方を少し見て頭を下げると綺麗な仕草で席に座った。


(鳴海くんって…横顔綺麗だな…)


先ほど見た印象とは少し違う。
隣に座っている鳴海くんからは「少しイケてない男子」ではない雰囲気が漂っている。


そんなことを考えてながらつい横顔に見惚れていると、彼が私の方を向く。


「どうしたの?」
「ん?あ、ごめん、横顔に見惚れていた」
「え?」
「ああ、なんでもない!」


恥ずかしい事を口走ってしまった。
絶対に鳴海くん、変な子だと思ったはず。


私は熱くなった頬を両手で覆う。
少し冷たい温度が気持ち良い。


「あの…」
「え?」


そんな事を考えていると鳴海くんが私に声をかけた。

「あの、瀬野川さん」
「え?どうしたの?」


突然自分の名前を呼ばれたので驚いてしまった。
ちょっと変な顔をしているかもしれない。


「ふ、何そんなにびっくりしてるの?」
「し、してないよ!」
「それならいいのだけれど…」


鳴海くんはくくっと笑いを一生懸命にこらえている。
それが余計に恥ずかしくて、先ほど少しだ火照りのおさまった頬がまた熱をもつ。


(鳴海くんってやっぱりイケてない男子なんかじゃない!)


なぜか彼の声を聞くと心臓がドキドキとする。


「ねえ、瀬野川さん?」
「あ、うん」
「僕、教科書まだ持ってないから見せてくれないかな?」
「そ、そうだよね!気が付かなくてごめん」


そんな事を言っていると鳴海くんが席を寄せてくる。


(いい香り…)


私の机に彼の机がくっついた瞬間に柑橘系の香りがした。


(香水とかつけてるのかな?)


意外とおしゃれな…わけないか…。


「どうしたの?」
「ううん、なんでもない」


ボサボサ頭、分厚いメガネをかけている彼を見て「おしゃれ」なんて思った自分の考えを急いで訂正した。
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