泣きたがりの君に優しい歌をあげる

佐野川ゆず

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「さくら、早速鳴海くんと仲良くなってるじゃん」
「そ、そんな事ないって!」
「その驚き方怪しいなー」
「なんでよ!仲良くなってないって!」
「ふふ、さくらにもやっと春がやってくるのかな?」
「やめてよ!由真ちゃん!」


今はお昼休憩。
お弁当を食べながら由真ちゃんと話していると早速転校生くんの話題になる。
由真ちゃんの席からは私と鳴海くんがバッチリ見えていたようで、あらぬ誤解を受けてしまった。


「恋なんてね、え?ってところから変わっていくものよ」
「由真ちゃん、わかった風だけれど…私と一緒じゃん」
「それを言わないで!でも中学の時には好きな先輩がいたもん」
「そっか、そうだよね」
「って、本気で落ち込まないでよ」


しゅん、としてしまった私を見て由真ちゃんが慌てた。


「落ち込んでないよ、ただ…」
「ただ?」


そう言ってニマニマした顔で私を見るから先ほど感じた妙な感覚を言うのをやめた。


「なんでもない!」
「なーんだ、恋しちゃったって言うのかと思った」
「違うって。だって私は真夏くん一筋だもん」
「あー、つまんない!」
「もうっ!つまんないとか言わないでよ」
「だって本当だもの」


そう言いながら由真ちゃんは卵焼きを頬張った。


つまんないとか言われても困るよ。
だって、恋なんてわかんないし、私は真夏くんが好きだし。


もし、自分が恋をしているとしたら真夏くんへの気持ちが恋なんだと思う。


「でもさー…」


由真ちゃんがまた鳴海くんの話を始めたので私は黙って聞くことにした。


お昼休憩が終わった後、鳴海くんと席をくっつけたまま同じ教科書を見る。
相変わらずの柑橘系の香りは私を心地よい気分にさせてくれる。
そして心臓がドキドキと音を立てる。


(絶対に恋じゃない!だって鳴海くんだよ?っていうかまだ今日転校してきた人で、どんな人かもわかんないし…)


「うーん…」
「どうしたの?瀬野川さん」
「あ、声出てた?」
「うん」


横を振り向くと鳴海くんが私をじっと見ていた。
その時、眼鏡の奥の瞳が見えた気がした。


(え?瞳、綺麗?)


「瀬野川さんって本当に面白いよね。今日初めてあったとは思えない感じ」
「そうかな?」
「うん。しかもすごく話しやすいし」
「それなら良かった」
「僕、あんまりこうして同い年の人と話した事ってないから、すっごく新鮮だな」
「そうなの?兄弟とかは?」
「僕、一人っ子なんだ」
「そうなんだ…」


うんうん、と頷いて


「一人っ子かぁー、私はお兄ちゃんがいる」
「そうなの?羨ましいな。お兄さんって憧れてた」
「うるさいよー、兄は」


そう言って顔を歪ませると、また鳴海くんは楽しそうに笑う。


「瀬野川さんって、なんだかいいよね」
「なんで?」
「いつも楽しそうだし」
「まあ、楽しいかな。特に真夏くんの事考えてると」
「ごほっ!」
「大丈夫?」


真夏くんの話題を出した瞬間に鳴海くんがむせるものだからびっくりして大きな声が出る。


「瀬野川ー、どうしたんだ?」
「あ、なんでもありません」
「ちゃんと授業聞いてろよ?次の問題当てるぞ?」
「遠慮しておきます」
「遠慮はいらないぞー」
「本当に足りてるので」


そう言いながら手を挙げるとクラスから笑いが起こった。


「鳴海くん、風邪?」
「ううん、ちょっとね」
「そっか、辛かったら言ってね」


それだけ言うと私は教科書の文字を追った。

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