泣きたがりの君に優しい歌をあげる

佐野川ゆず

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鳴海くんから衝撃的な事実を聞いた後の授業はまったく頭に入らなかった。
 それもそのはずだ。
 私はずっとあの時の男の子を探していて、それが真夏くんだと知った。それもテレビの中の芸能人として彼をだ。
 これで彼との接点はもう無くなった。正直そう思ったのだ。けれども真夏くんファンを語る事でどこかで何かが繋がっていると思っていた。
 
 でも、所詮は一般人と芸能人。

 どれだけ自分が想った所で彼との距離が縮まったり、まして彼氏彼女になるなんて絶対にない。私はあの時の男の子にそういう線引きをされてしまったのだ。

 けれども、彼は目の前に現れた。
 そして私の事を覚えてくれている。
 私は学校の帰り道、家の近くの公園へと足を向けた。小さな頃に遊んだ公園は今改めて見るとこんなに小さかったかな?なんて思いながらブランコへと向かった。
 ぐんっと力を入れて地面を蹴る。今ならこのままジャンプ出来そう。なんて思った時だった。

「スカートの中、見えそう」
「えっ?!」

 突然の声に私は急いでブランコの速度を落とした。そして声の方へと顔を向けた。

「鳴海くん、どうしてここに?」
「俺、今は一人暮らしだから。新宿に住んでたけれど、こっちの学校に通うために近くに引っ越して来たし」
「そうなの?」
「うん。さくらの家ってこの辺りなの?」
「そう。すぐそこの角を曲がった所」
「マジで?すげー近いじゃん。俺、そこのアパート」
「え?あの高級な」
「まあ、事務所が借りてくれてるんだけれど」
「そっか。っていうか、スカートの中、見た?」
「冗談に決まってんじゃん。さくらのスカートん中見ても嬉しくねぇよ」

 あっけらかんと鳴海くんがいうのでさくらは恥ずかしさから思わずむっとくる。そして、自分の思っていた真夏くん像とはかなりかけ離れてしまっているけれど、あの時の男の子なんだって事を実感する。

(あの時も凄く口悪かったもんなー。私は真夏くんに憧れていただけだったんだ)

「どうしたの?」
「んーん。やっぱり鳴海くんはあの時の男の子、真夏くんなんだなって思ってた」

 私がクスッと笑ったので鳴海くんは少しだけ怪訝そうな顔をして「それっていい思い出なの?」と聞いてくる。

「どうだろ?私が思っていた真夏くんとはかけ離れているけれどね」
「どうなんだよ、それ」
「変わっていなくて良かったって事かな?」
「そっか、それなら良かった」

 そう言いながら少しだけ寂しそうに鳴海くんは笑った。
 けれども私が思っているよりも物事は深刻な方向へと進んでいくなんて今の私には全く想像なんてできなかった。
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