永遠の鍵

佐野川ゆず

文字の大きさ
上 下
4 / 10
それはいつものようにここにあった

しおりを挟む
すると今までの静寂が嘘だったかのように喧騒が戻って来ていた。回りには帰宅途中の学生が沢山居る。私の事なんてまるで見えてないかのように皆が通りすぎて行く。私はその風景を異質な空間に入り込んでしまったかのように見ていた。そして我に返る。そうだ。今までが異質だったのだ。私は後ろの路地を確認しようと後ろを振り向いた…が…。そこには何も無かった。路地といえる隙間も何も…。


(夢でも見てたのかな??)


そう思って制服のポケットを触ると金属が指に当たった。急いで取り出すと先ほど貰った鍵が手の中にある。


「どういう事??」


私は訳がわからないまま家路へと急いだ。疲れているのかもしれない。早く家に帰って自分の部屋でゆっくりしたかった。いつもの道を歩いて、いつもの公園の前を通って、それはいつもと同じ毎日だった。先ほどの数時間が異質な時間だったのだ。自分の家が見えて来た頃にはどきどきいっていた心臓も少しだけ落ち着いて来て、先ほどの事が夢だったのでは…??と冷静に考えれるようになっていた。けれど…手の中には先ほどのお婆さんにもらった鍵がある。頭を触ると先ほどまでは付けていなかった筈の髪飾りが付いていた。


「私、今日買い物してたのかも…。そっか。そうだよね…」


そう思いながら私は家の鍵穴に鍵を差し込んで回す。いつもと同じだ。けれど、私はガチャリという鍵が開く音がした後で気づいたのだ。私が使った鍵はいつもの家の鍵で無い事。先ほどお婆さんに貰った鍵だったという事に…。
しおりを挟む

処理中です...