13 / 26
1.配信者
13.打ち上げ
しおりを挟む
イベントが終わると、会場近くのホテル宴会場でスタッフ打ち上げが開かれた。
大きな丸テーブルがいくつも並び、中央にはオードブルやピザ、飲み物のボトルが山積みになっている。
照明はステージより柔らかく、客席のざわめきも低く穏やかだ。
けれど、俺の胸の奥はまだ、照明の熱が残っているみたいに落ち着かなかった。
「RENくん、こっち空いてるよ」
進行役だったMCに呼ばれ、スタッフや出演者のテーブルへ腰を下ろす。グラスにジンジャーエールを注ぐと、背後の少し離れたテーブルに、黒いスタッフベストの颯真が視界に入った。
彼は他のカメラマンや技術スタッフと談笑し、グラスを軽く傾けている。
俺の視線に気づいたのか、一瞬だけ目が合う。
すぐに視線を外したはずなのに、心臓がわずかに跳ねた。
「今日のRENくん、キレキレだったね!」
向かいの出演者が笑顔でビールを掲げる。
「ありがとうございます」
笑顔で返すけれど、意識の半分は後ろのテーブルに残っている。
あれだけ近くにいるのに、さっきから一言も声をかけてこない。それが逆に、落ち着かない。
宴もたけなわになり、各テーブルを回るスタッフがカメラを持って記念写真を撮り始めた。
「RENくん、こっち向いて!」
何枚か笑顔で撮られ、別のテーブルへ移動しようと立ち上がる。
その瞬間、後ろから軽く肘をつつかれた。
振り返ると、颯真がすぐそこに立っていた。
「お疲れ」
「……ああ」
わずかな間。
スタッフカメラマンが近づいてくるのに気づいた瞬間、颯真が肩に手を置いた。
「ほら、笑え」
低い声。自然な距離感。——第三者の目には、ただの旧友か仕事仲間にしか見えない。
なのに、触れられた肩の温もりで呼吸が浅くなる。
——カシャ。
フラッシュと共に、その瞬間が切り取られた。
後で知った。
その写真はSNSに上がり、すぐに数万リツイートされた。
《#RENくん彼氏説 再燃》のタグが、再びトレンド入りしたのは、その数時間後のことだった。
大きな丸テーブルがいくつも並び、中央にはオードブルやピザ、飲み物のボトルが山積みになっている。
照明はステージより柔らかく、客席のざわめきも低く穏やかだ。
けれど、俺の胸の奥はまだ、照明の熱が残っているみたいに落ち着かなかった。
「RENくん、こっち空いてるよ」
進行役だったMCに呼ばれ、スタッフや出演者のテーブルへ腰を下ろす。グラスにジンジャーエールを注ぐと、背後の少し離れたテーブルに、黒いスタッフベストの颯真が視界に入った。
彼は他のカメラマンや技術スタッフと談笑し、グラスを軽く傾けている。
俺の視線に気づいたのか、一瞬だけ目が合う。
すぐに視線を外したはずなのに、心臓がわずかに跳ねた。
「今日のRENくん、キレキレだったね!」
向かいの出演者が笑顔でビールを掲げる。
「ありがとうございます」
笑顔で返すけれど、意識の半分は後ろのテーブルに残っている。
あれだけ近くにいるのに、さっきから一言も声をかけてこない。それが逆に、落ち着かない。
宴もたけなわになり、各テーブルを回るスタッフがカメラを持って記念写真を撮り始めた。
「RENくん、こっち向いて!」
何枚か笑顔で撮られ、別のテーブルへ移動しようと立ち上がる。
その瞬間、後ろから軽く肘をつつかれた。
振り返ると、颯真がすぐそこに立っていた。
「お疲れ」
「……ああ」
わずかな間。
スタッフカメラマンが近づいてくるのに気づいた瞬間、颯真が肩に手を置いた。
「ほら、笑え」
低い声。自然な距離感。——第三者の目には、ただの旧友か仕事仲間にしか見えない。
なのに、触れられた肩の温もりで呼吸が浅くなる。
——カシャ。
フラッシュと共に、その瞬間が切り取られた。
後で知った。
その写真はSNSに上がり、すぐに数万リツイートされた。
《#RENくん彼氏説 再燃》のタグが、再びトレンド入りしたのは、その数時間後のことだった。
0
あなたにおすすめの小説
泣き虫な俺と泣かせたいお前
ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。
アパートも隣同士で同じ大学に通っている。
直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。
そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。
溺愛前提のちょっといじわるなタイプの短編集
あかさたな!
BL
全話独立したお話です。
溺愛前提のラブラブ感と
ちょっぴりいじわるをしちゃうスパイスを加えた短編集になっております。
いきなりオトナな内容に入るので、ご注意を!
【片思いしていた相手の数年越しに知った裏の顔】【モテ男に徐々に心を開いていく恋愛初心者】【久しぶりの夜は燃える】【伝説の狼男と恋に落ちる】【ヤンキーを喰う生徒会長】【犬の躾に抜かりがないご主人様】【取引先の年下に屈服するリーマン】【優秀な弟子に可愛がられる師匠】【ケンカの後の夜は甘い】【好きな子を守りたい故に】【マンネリを打ち明けると進み出す】【キスだけじゃあ我慢できない】【マッサージという名目だけど】【尿道攻めというやつ】【ミニスカといえば】【ステージで新人に喰われる】
------------------
【2021/10/29を持って、こちらの短編集を完結致します。
同シリーズの[完結済み・年上が溺愛される短編集]
等もあるので、詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。
ありがとうございました。
引き続き応援いただけると幸いです。】
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
溺愛幼馴染
すずかけあおい
BL
意地悪だった幼馴染攻め×攻めが苦手な受け
隣に住んでいた幼馴染の高臣とは、彼が引っ越してから陽彩はずっと会っていなかった。
ある日、新條家が隣の家に戻ってくると知り、意地悪な高臣と再会することに陽彩はショックを受けるが――。
〔攻め〕新條 高臣
〔受け〕佐坂 陽彩
タトゥーの甘い檻
マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代)
どのお話も単体でお楽しみいただけます。
「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」
真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。
それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。
「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。
アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。
ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。
愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。
「……お前のわがままには、最後まで付き合う」
針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。
執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる