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16.温泉
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部屋の奥にある障子を開けると、硝子戸越しに湯気がふわりと広がった。
檜造りの大きな湯船。窓の外はすぐ海で、水平線まで視界を遮るものがない。
夕暮れの光が水面に反射して、金色の揺らぎが天井に踊っている。
「……すげぇ」
思わず足を踏み入れると、窓は肩の高さまでしかない強化ガラス。
外からこちらは見えないだろう、とは頭ではわかる。けれど——。
「なぁ、これ……海から見えてない?」
湯船を覗き込みながら声を落とすと、後ろから颯真が笑った。
「漁船でも寄ってこなきゃ大丈夫だ」
「そういう問題じゃ……」
振り返れば、颯真はすでに上着を脱ぎかけている。
「ほら、入れ」
当然のようにタオルを渡され、逃げ場がふさがれる。
湯気と潮の香り、檜の甘い匂い。
鼓動が海の音と重なり、逃げる言い訳が思いつかない。
湯船に足を入れた瞬間、熱と共に檜の香りがふわっと広がった。
肩まで沈むと、外の海と視線が一直線になる。
遠くで波が砕ける音が、湯面を揺らすように聞こえてくる。
「……やっぱり見えてるだろ、これ」
小声で呟くと、すぐ横から低い笑い声。
「じゃあ——見せとくか」
「は? おい、押すなっ——」
背中に温かい手が触れ、ゆっくりと窓際まで追い詰められる。
ガラス越しの夕焼けが、肌の水滴を黄金色に照らす。
心臓の鼓動が、波音と同じテンポで響く。
「……やめろって」
「声、海まで届くぞ」
耳元に落ちた囁きに、息が詰まる。
湯の中で脚をなぞる指先。触れるたびに、熱いのか湯のせいなのかわからなくなる。
「……っ、ほんとに……見えるから……」
「見られて困るのか?」
わざと揺らすような動きで、湯面に小さな波紋が広がる。
外の空と海が金から群青に変わっていくのを、視界の端で捉えながら、もう抵抗の言葉が続かなかった。
「ちょっ……ここは……やば……っ」
湯気に混じる吐息が、自分の耳にも震えて聞こえる。
湯の中、太ももをなぞる指先がゆっくりと強くなるたび、熱いのか溺れてるのかわからなくなる。
「……声、もう少し抑えろよ」
耳元で低く囁かれ、ぞくりと背筋が震える。
その震えすら見透かしたように、颯真はさらに窓際へ押しやる。
外には、群青色に沈んだ海と、点き始めた漁船の灯り。
「や……ほんとに……見え……っ、あ……っ」
言葉の途中で喉が詰まる。
湯の中で押し広げられる感覚に、膝から力が抜ける。
波音と、水中で揺れる自分の呼吸音が混ざって、頭の奥まで熱が上がる。
「……顔、海に向けろ」
「……っ、やだ……」
「見られてるかもしれない方が——気持ちいいだろ」
耳朶をかすめる吐息。首筋に触れる唇。
湯が跳ね、檜の香りがさらに濃くなる。
「……あ、っ……だめ、も……」
湯面にこぼれた声が波紋になって、黄金色の光を揺らす。
外の海も、窓ガラスも、もうどこまで見えているのかわからない。
熱と水音と吐息だけが、部屋いっぱいに満ちていった——。
畳に座ると、開け放たれた窓から夜風が入り込み、火照った肌を撫でていく。
浴衣の襟元が少しずれて、首筋にひやりとした空気が触れた瞬間——。
「……ずれてる」
颯真が近寄り、指先でゆっくりと襟を正す……ふりをして、逆に胸元を大きく開いた。
「っ……おい」
「隙間から見えるの、好きなんだよ」
指が鎖骨をなぞり、布の中へと滑り込む。
浴衣の中、湯の余熱で敏感になった肌をゆっくり探るように撫でられ、息が上ずる。
「……は、っ……」
「声、抑えられないのか?」
耳元に熱い吐息。夜の波音と重なって、全身に広がっていく。
腰を引こうとしても、畳に手をつかれて動けない。
「……あ、っ……颯真……」
「名前呼ぶのも……反則だな」
唇が重なり、舌が遠慮なく入り込む。絡まった瞬間、浴衣の帯がするりと解け、布が畳の上に落ちた。
窓の外、月明かりが二人の肌を淡く照らす。
見られてはいない——はずだ。
けれど、もしも……という予感が、熱をさらに上げていく。
檜造りの大きな湯船。窓の外はすぐ海で、水平線まで視界を遮るものがない。
夕暮れの光が水面に反射して、金色の揺らぎが天井に踊っている。
「……すげぇ」
思わず足を踏み入れると、窓は肩の高さまでしかない強化ガラス。
外からこちらは見えないだろう、とは頭ではわかる。けれど——。
「なぁ、これ……海から見えてない?」
湯船を覗き込みながら声を落とすと、後ろから颯真が笑った。
「漁船でも寄ってこなきゃ大丈夫だ」
「そういう問題じゃ……」
振り返れば、颯真はすでに上着を脱ぎかけている。
「ほら、入れ」
当然のようにタオルを渡され、逃げ場がふさがれる。
湯気と潮の香り、檜の甘い匂い。
鼓動が海の音と重なり、逃げる言い訳が思いつかない。
湯船に足を入れた瞬間、熱と共に檜の香りがふわっと広がった。
肩まで沈むと、外の海と視線が一直線になる。
遠くで波が砕ける音が、湯面を揺らすように聞こえてくる。
「……やっぱり見えてるだろ、これ」
小声で呟くと、すぐ横から低い笑い声。
「じゃあ——見せとくか」
「は? おい、押すなっ——」
背中に温かい手が触れ、ゆっくりと窓際まで追い詰められる。
ガラス越しの夕焼けが、肌の水滴を黄金色に照らす。
心臓の鼓動が、波音と同じテンポで響く。
「……やめろって」
「声、海まで届くぞ」
耳元に落ちた囁きに、息が詰まる。
湯の中で脚をなぞる指先。触れるたびに、熱いのか湯のせいなのかわからなくなる。
「……っ、ほんとに……見えるから……」
「見られて困るのか?」
わざと揺らすような動きで、湯面に小さな波紋が広がる。
外の空と海が金から群青に変わっていくのを、視界の端で捉えながら、もう抵抗の言葉が続かなかった。
「ちょっ……ここは……やば……っ」
湯気に混じる吐息が、自分の耳にも震えて聞こえる。
湯の中、太ももをなぞる指先がゆっくりと強くなるたび、熱いのか溺れてるのかわからなくなる。
「……声、もう少し抑えろよ」
耳元で低く囁かれ、ぞくりと背筋が震える。
その震えすら見透かしたように、颯真はさらに窓際へ押しやる。
外には、群青色に沈んだ海と、点き始めた漁船の灯り。
「や……ほんとに……見え……っ、あ……っ」
言葉の途中で喉が詰まる。
湯の中で押し広げられる感覚に、膝から力が抜ける。
波音と、水中で揺れる自分の呼吸音が混ざって、頭の奥まで熱が上がる。
「……顔、海に向けろ」
「……っ、やだ……」
「見られてるかもしれない方が——気持ちいいだろ」
耳朶をかすめる吐息。首筋に触れる唇。
湯が跳ね、檜の香りがさらに濃くなる。
「……あ、っ……だめ、も……」
湯面にこぼれた声が波紋になって、黄金色の光を揺らす。
外の海も、窓ガラスも、もうどこまで見えているのかわからない。
熱と水音と吐息だけが、部屋いっぱいに満ちていった——。
畳に座ると、開け放たれた窓から夜風が入り込み、火照った肌を撫でていく。
浴衣の襟元が少しずれて、首筋にひやりとした空気が触れた瞬間——。
「……ずれてる」
颯真が近寄り、指先でゆっくりと襟を正す……ふりをして、逆に胸元を大きく開いた。
「っ……おい」
「隙間から見えるの、好きなんだよ」
指が鎖骨をなぞり、布の中へと滑り込む。
浴衣の中、湯の余熱で敏感になった肌をゆっくり探るように撫でられ、息が上ずる。
「……は、っ……」
「声、抑えられないのか?」
耳元に熱い吐息。夜の波音と重なって、全身に広がっていく。
腰を引こうとしても、畳に手をつかれて動けない。
「……あ、っ……颯真……」
「名前呼ぶのも……反則だな」
唇が重なり、舌が遠慮なく入り込む。絡まった瞬間、浴衣の帯がするりと解け、布が畳の上に落ちた。
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けれど、もしも……という予感が、熱をさらに上げていく。
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