カメラの外で抱きしめて

かれは

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1.配信者

15.旅行出発

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炎上から一週間。
 SNSのタイムラインも、少しずついつものゲームネタや日常ツイートで埋まりはじめた頃だった。

『空いてる? 週末』
 颯真から突然のメッセージ。
『……一応』と返すと、すぐに『じゃ、出かけるぞ』とだけ送られてきた。
 行き先も理由もない誘いは、昔からだ。



 週末の朝、待ち合わせの駅前。
 颯真は黒いキャップにサングラス、いつもの無駄に目立つ長身で立っていた。
「どこ行くんだよ」
「着いてからのお楽しみ」
 有無を言わせず切符を渡され、新幹線のホームへ向かう。

 座席に腰を下ろすと、窓の外がゆっくりと流れ始めた。
「炎上、お疲れさん」
 突然の一言に視線を向けると、颯真は缶コーヒーを片手に景色を見ている。
「……なんだよ」
「よくやったなって」
 その声は、仕事場でも配信でも聞けない柔らかさだった。


新幹線を降りると、そこは海沿いの小さな温泉街だった。
 駅前には足湯、潮の香り、ゆったり歩く観光客。
「……なんで温泉」
「たまにはネットもカメラもない場所にいろ」
 颯真は当然のように俺のキャリーを持ち、予約していたらしい旅館へ向かう。

 木造三階建ての老舗旅館。
 案内された部屋の障子を開けると、青く光る海が広がっていた。
「うわ……」と思わず声が漏れる。
「いいだろ」
 颯真は靴を脱ぎ、縁側に腰を下ろす。

「……二部屋取った?」
「一部屋」
 短く答えて、当たり前のように荷物を置く。
 返す言葉が詰まり、潮騒だけが部屋を満たした。
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