魔法少女は正義じゃない!

さき

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氷結の魔法少女は悪じゃない!

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  普段は人気のない廃ビルのとある一角。埃にまみれたそこで、なにやら騒ぎが起きていた。と言ってもそこには四人しかいないのだが。
  一人の少女ーー高下駄を履いて低い身長を誤魔化し、貧相な身体を巫女服で包み雪の結晶を模したステッキを持った、艶やかな輝きを持つ白い絹のような髪に雪のように白い肌、そんな白い彼女だからこそ一等輝くルビーの紅を持つ丸い瞳にプルプルしていて可愛らしい唇の、総合すると絶世の美少女である。ーーが三人の少女に追われていた。
「ああもう!うざったいです離れてください!」
「殺しはしないってばぁ!早く捕まってよぉ」
  耐えきれない、と声を荒げた彼女ーー氷結の魔法少女ーーに、語尾を伸ばした特徴的な口調の少女が被せるように叫んだ。よく見ると、集団の中でもこの二人には色や形状、生えている位置の違いはあれど、対になるように二本の角が生えているのがわかる。恐らく二人は同種に近いのだろう。
  残りの二人はほとんど喋らず、少しずつ氷結の魔法少女を追い詰めるように距離を詰めている。
「くっ壁が…!」
「観念しようねぇ」
  とうとう壁際まで追いやられてしまった氷結の魔法少女。そこに特段何かした訳でもない角を生やした少女がしてやったり、とわらう。残りの二人が角の少女を冷めた目で見ているのは恐らく、悪役顔が似合いすぎている彼女が何もしてないことへのクレームだろう。
  そんな、もうほとんどの大事なことが終わり、あとは氷結の魔法少女を捕まえるだけ。というときに突然それは現れた。
「どうして、キミは悪事を働いたのかな」
「クロ…!?」
  氷結の魔法少女を断罪するために現れたのだろう、赤と青色のオッドアイに二股に分かれた尻尾が特徴的な白猫のような生命体は、凛とした声音で問いかけた。白猫だが名前はクロ。お分りいただけただろうか。
  精神的にも、物理的にも追い詰められてしまった彼女は、つ…と視線を下げ、俯いた。長い前髪の下に、どんな表情が隠されているのか、と場違いにも思ってしまう、そんなとき。
「うるっせぇんですよぉ!」
 爆発した。
「世界を救うには必要なことですもん!そもそも因果応報、自業自得なことです!から!」
「…どういう、ことかな」
  クロの一言に、はっとしたように彼女は深呼吸をしてから、今度は静かに語り始めた。
「…ことのはじまりは、半年前。…僕が魔法少女になったあの日まで遡ります」
「なぁ、その話は長くなるよね。…カフェにでも行かないかい。」
  …ただし、すぐに遮られたが。



続くよ
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