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第2章 星屑のビキニアーマー
臆病な大魔法使い
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真新しいローブに身を包んだ仏頂面の男は、禍々しい形をした杖の先をタケルに向け、ブツブツと呪文を唱えている。彼こそがラグラークの大神官であり大魔法使いのガーランド。タケルを異世界へ飛ばした張本人だ。
タケルの記憶にあるガーランドは初老だったが、目の前にいる男は肌にも張りがあり、ローブもビリビリに破れていない。タケルは改めて確信した。やはり自分は過去に飛ばされてきたのだと。
「なるほど……。確かにこの少年からは、私の魔法の名残が感じられる。しかも、まだ完成させていない時空魔法であることが興味深い。キミは未来の私によってこの世界へ飛ばされてきたと言っているが、近い将来、ラグラークが滅びると言う話は本当なのだな?」
ガーランドは表情一つ変えず、タケルに質問した。
「本当のことです。だって、あのケレンさんが言っていたんだから。ケレンさんは少し変わっているけど、決して嘘をつくような人じゃないんです」
「ふむ。ケレン・アルヴァロークか。賢者の腕輪を使えば、時空の扉を開いて亜空間を通ることは可能かもしれぬが。魔王を倒して尚、魔物が攻めてくるのであれば、早急に対策を練らねばならぬな……」
「僕の話を信じてくれるんですか?」
クロナの計らいでガーランドに会うことができたものの、物分かりが良すぎるその振る舞いに、タケルは動揺を隠せずにはいられなかった。それはクロナも感じていた。ガーランドが異国者のタケルをからかっているのだと。しかし、そんな心の内を覗き見るかのように、ガーランドは口を開いた。
「時空魔法は、私が長年密かに研究している魔法なのだ。故に、その名が少年の口から出ることなど、あり得えるはずが無いのだよ」
「ガーランドさまは異世界の存在を信じるの?」
「クロナよ。気持ちは分かるが、少年は真実を語っている。何故なら、この空間には真実の魔法がかけられているのだ」
真実の魔法とは、大魔法使いにのみ使えることができる禁断魔法の一種である。この魔法がかけられている空間で嘘を語れば、その者は激しい苦痛と共に命を落とすことになるのだ。
「真実の魔法ですって……? そんなの正気じゃないわ! いくら、ガーランドさまだからって……」
「私は警戒心が人一倍強いのでね。見ず知らずの少年を招き入れるとなれば、保険を幾重にもかけたくなるのだよ。この少年が魔王の手先で人間に化けているとも限らないからね」
「やり過ぎだわ……」
クロナは軽蔑の眼差しを向けた。これが大魔法使いのすることなのかと。
「少年よ。キミの要求を聞く代わりに、この国を救う手助けをしてくれないか? 難しいことは何もない……。まずはキミが知っている全てのことを私に話して欲しいのだ」
「分かりました。だったら……」
タケルはクロナをチラリと見た。
「クロナさん。僕をガーランドと二人きりにしてもらえますか」
クロナの死を本人に聞かせるわけにはいかない。タケルはクロナの絶望する姿を見たくないのだ。
「私に聞かれちゃマズいことでもあるかのような言い方ね。まぁ良いわ。だけどガーランドさま。一つ私のお願いを聞いてください。どうか私が出ていく前に、この部屋にかけられている危険な魔法を解いてくださいな」
「それは聞けない願いだ……。クロナよ、私を臆病者と笑いたければ笑うが良い。私はラグラークの未来のためならば、どんな汚い手でも使う覚悟なのだよ」
「……私だって、タケルの身の安全を願いたいのよ。二人きりで話し合いをするなら、公平な状況下でするべきだわ! タケルだけに命の危険があるなんて、そんなの不公平だもの」
「不公平か。むしろ公平を望む方が愚かだと思わないかね?」
「タケルに何かあったら、相手がガーランドさまであろうと容赦しないわ……」
クロナはガーランドに静かな怒りを向けつつ、部屋の外へと出て行った。
タケルの記憶にあるガーランドは初老だったが、目の前にいる男は肌にも張りがあり、ローブもビリビリに破れていない。タケルは改めて確信した。やはり自分は過去に飛ばされてきたのだと。
「なるほど……。確かにこの少年からは、私の魔法の名残が感じられる。しかも、まだ完成させていない時空魔法であることが興味深い。キミは未来の私によってこの世界へ飛ばされてきたと言っているが、近い将来、ラグラークが滅びると言う話は本当なのだな?」
ガーランドは表情一つ変えず、タケルに質問した。
「本当のことです。だって、あのケレンさんが言っていたんだから。ケレンさんは少し変わっているけど、決して嘘をつくような人じゃないんです」
「ふむ。ケレン・アルヴァロークか。賢者の腕輪を使えば、時空の扉を開いて亜空間を通ることは可能かもしれぬが。魔王を倒して尚、魔物が攻めてくるのであれば、早急に対策を練らねばならぬな……」
「僕の話を信じてくれるんですか?」
クロナの計らいでガーランドに会うことができたものの、物分かりが良すぎるその振る舞いに、タケルは動揺を隠せずにはいられなかった。それはクロナも感じていた。ガーランドが異国者のタケルをからかっているのだと。しかし、そんな心の内を覗き見るかのように、ガーランドは口を開いた。
「時空魔法は、私が長年密かに研究している魔法なのだ。故に、その名が少年の口から出ることなど、あり得えるはずが無いのだよ」
「ガーランドさまは異世界の存在を信じるの?」
「クロナよ。気持ちは分かるが、少年は真実を語っている。何故なら、この空間には真実の魔法がかけられているのだ」
真実の魔法とは、大魔法使いにのみ使えることができる禁断魔法の一種である。この魔法がかけられている空間で嘘を語れば、その者は激しい苦痛と共に命を落とすことになるのだ。
「真実の魔法ですって……? そんなの正気じゃないわ! いくら、ガーランドさまだからって……」
「私は警戒心が人一倍強いのでね。見ず知らずの少年を招き入れるとなれば、保険を幾重にもかけたくなるのだよ。この少年が魔王の手先で人間に化けているとも限らないからね」
「やり過ぎだわ……」
クロナは軽蔑の眼差しを向けた。これが大魔法使いのすることなのかと。
「少年よ。キミの要求を聞く代わりに、この国を救う手助けをしてくれないか? 難しいことは何もない……。まずはキミが知っている全てのことを私に話して欲しいのだ」
「分かりました。だったら……」
タケルはクロナをチラリと見た。
「クロナさん。僕をガーランドと二人きりにしてもらえますか」
クロナの死を本人に聞かせるわけにはいかない。タケルはクロナの絶望する姿を見たくないのだ。
「私に聞かれちゃマズいことでもあるかのような言い方ね。まぁ良いわ。だけどガーランドさま。一つ私のお願いを聞いてください。どうか私が出ていく前に、この部屋にかけられている危険な魔法を解いてくださいな」
「それは聞けない願いだ……。クロナよ、私を臆病者と笑いたければ笑うが良い。私はラグラークの未来のためならば、どんな汚い手でも使う覚悟なのだよ」
「……私だって、タケルの身の安全を願いたいのよ。二人きりで話し合いをするなら、公平な状況下でするべきだわ! タケルだけに命の危険があるなんて、そんなの不公平だもの」
「不公平か。むしろ公平を望む方が愚かだと思わないかね?」
「タケルに何かあったら、相手がガーランドさまであろうと容赦しないわ……」
クロナはガーランドに静かな怒りを向けつつ、部屋の外へと出て行った。
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