クレイジーソルトキャンディ

瀬模 拓也

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お化け

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「でもまぁ、行かなくて正解だな」



ソルトの声が僕を現実へと引き戻した。



ニヤリと大きく笑う口からは牙が見える。



「本物だぜ。ソレ」



「本物って・・・?」



聞き返す僕の声が裏返る。

そう言えば喉が渇いて張り付きそうだ。



「だーかーら。本物はホンモノだよ」





ユーレーって言うの?



何故か慣れない言葉の様にソルトが話す。



「何で分かるの?」



「会った事あるから」



嘘だ。と言う言葉はもう僕の口から何処かへ行ってしまっていた。

ソルトならきっと幽霊にもお化けにも会った事があるんだ。



「じゃあ・・・・ヤッケ達・・・は?」



さっきからずっと寒気がする。まるで僕の周りだけ冬になってしまったみたいだ。



「んなモンオレが知る訳ないじゃん」



小馬鹿にした様にソルトはまたポップコーンを食べ出す。



「でもまぁ、取り込まれたかもなー」



口いっぱいにポップコーンを頬張りながらソルトが当たり前な事みたいに話した。



「とりこまれる・・・・って?」



この黒い影に取り込まれるって事だろうか。



「そいつらと一体になる」



珍しくソルトがちゃんと質問に答えてくれた。

でもその所為で僕はもう叫びたくなる位怖くなった。





僕の頭の中には黒い影に取り込まれたヤッケ達が浮かんだ。

恐怖で叫びながら逃げるヤッケやラーコを黒い影が覆って行く。

悲鳴も、助けを伸ばした手も黒に染まって。

やがて手も目も白くなったヤッケ達がフラフラと行き場も無く彷徨い歩いて。



そんなの映画やゲームの中だけだと思っていた。



「じゃ・・・じゃあ・・・ヤッケ達はこいつらの仲間に?」



「んにゃ」



あっさりと僕の考えをソルトは否定した。



「じゃあ、どうなるの?取り込まれて・・・・」



「それで終わり」



そこでソルトがポップコーンの袋をパンっと潰した。



何だか随分と拍子抜けした答えだ。

でもそれだって考えれば大変な事だ。



「何とか逃げ出せないかな?ヤッケ達」



「無理だと思うぜー。そいつ達に取り込まれると意識無くなるし」



僅かに閃いた希望もあっさり打ち砕かれた。



「まぁ、時間の流れも無くなるけどな」



時間の枠組みから外れた暗闇の揺り籠。

そんなモノにヤッケ達は取り込まれてしまったのか。



絶望的な表情の僕とは対照的にソルトは口の端を上げてニヤリとした。



「案外良いんじゃねーの?」



『ゲンセノシガラミ』から解放されてよー



あっさりと突き放したソルトの言葉が僕を奈落へと叩き落とした。





ヤッケが目覚め無くても僕の意識はある。

ラーコが忘れても僕はラーコを覚えている。

メン太が世界から隔離されても僕はこの世界に居る。





あの場所に行くのは怖い。



でも僕は生きて意識があるんだ。

毎日夜に眠って朝には起きて、そのたびにヤッケ達の事を思いだすんだ。きっと死ぬまで毎日毎日繰り返し思い出すんだ。





僕は―。





「・・・・・・・・」





どうしようも無くぐちゃぐちゃになった僕の頭にソルトが丸めて投げた袋があたった。





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