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宵闇
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「・・・・」
日が暮れても気温が下がった気配は無い。
生暖かい風が首筋を撫でて行く。
僕は自転車を降りて目の前の大きな建物を見上げた。
暗い夜の街に大型スーパーは更に黒い影となって聳え立っている。
結局僕は写真を撮った時と同じ場所に立っていた。
確かにまたここに来るのは怖いし嫌だった。
今だって震えが止まらない。
でもヤッケもラーコもメン太も放っておく事なんで出来ない。
弱虫だってからかっても何時だって皆僕を置いて行かなかった。
あの日だってきっと。
用心深く辺りを見回すけど妖しいものは無い。
遠くに街灯の明かりが見えるけれど動いているのは僕だけだ。
(本当に)影も形も無い。
「・・・・・・ふぅ」
緊張の糸が切れたのと落胆したので僕は大きく息を吐いた。
やっぱりソルトにも来て貰えば良かっただろうか?
でも出窓から殆ど離れないアイツを連れ出すのは無理に近い気がした。頼み込んだって「何でオレが?」って言われて返されるに違いない。きっと拳か蹴りのおまけ付きで。
でも僕が此処で右往左往しても何かが変わる気配は無い。
だったらせめてソルトから何か聞いてくれば良かった。
出る場所とか弱点とか、ソルトならあの黒い影についてもっと知っている様子だったし。
「痛っ!」
考え倦ねている僕の頭に何かが当たった。
「うわわっ」
吃驚して逃げ出そうとした気持と恐怖で動かない足が合わさって自転車の車輪に蹴躓くと僕は自転車ごとひっくり返ってしまった。
「ダセェ」
てっきり黒い影の攻撃だと思っていた僕の目にソルトが映った。
相変わらず飴を食べながらポケットに両手を突っ込んでいる。
本当に座ってても立っててもふてぶてしいヤツだ。
「・・・て。えぇ?」
僕はさっきより更に吃驚して慌てて飛び起きた。
ちゃんと見てもそこに居たのは本物のソルトだった。
「何でここに・・・・?」
ソルトが出窓以外の場所に居るのを見るなんて初めてかもしれない。
万が一にも僕を助けに来てくれたのかなぁ、と思ってしまう。
「知り合いにアイサツに来ただけだ」
そうあっさり返されてしまった。
特に照れ隠しで言っている様にも見えないし、ソルトが言うならきっとそうなのだろう。
僕は妙に納得してしまった。
「影・・・・いないんだ・・」
デジカメに映っていた場所を見ても動くものもに何も無い。
ソルトも目的は何であっても此処に来てくれた事はありがたい。きっと僕では分からない何かを知っている筈だ。
相変わらず辺りは薄暗いけどもうそんなに怖く無い。
衝撃度で言ったら黒い影よりソルトの方が大きかったからだ。
「日の光が嫌いだからな。当たらない場所に避難してんだ」
そう言うとソルトは地面に落ちていた棒付きの飴を拾い上げた。
どうやらさっき僕の頭に当たったのはソルトが投げたコレらしい。
「日の当たらない場所って?」
僕の質問にソルトは拾い上げた飴である場所を指し示した。
その先が指す場所は。
「建物の・・・なか?」
シャッターが下りていて良く見えないが飴は確かにスーパーを指していた。
「そんな・・・だって」
確かに中は暗くて日の光も当たらなそうだけど僕には一つ腑に落ちない点があった。
「明日開店するんだよ。人とか日の光とか入って来るんだよ?」
駐車場には記念の花輪とか建物にはオープンを告げる賑やかな飾りとかがされていて準備は万端と言った感じだ。
人が居て賑やかな場所が好きなお化けなんて聞いた事が無いけど、もし居たとしても店自体が営業を始めれば日の光からは逃れられない。
最近のエコブームからなのか建物は日光を沢山取り入れられる硝子張りの作りになっているからだ。
「そしたらどっか行くだろ?」
ソルトが建物をぐるりと見渡しながら続ける。
「日の当たらない場所、日の当たらない場所に逃げてくんだ。アイツら事態大した事は出来ないからな」
その言葉を聞いて納得した僕は新たな問題に気付いた。
「じゃあ、今日しか無いって事じゃん!」
スーパーがオープンになってしまえば黒い影はヤッケ達を取り込んだまま何処かへ逃げてしまう。そうなればもう行方は分からない。
日が明けるまで、いや搬入で業者とかが入って来るだろうからもっと短い時間にヤッケ達を見つけて助けなければいけない。
「・・・・・・」
僕は呼吸を止めるて両手をぎゅっと握った。
「連れてって。僕も」
「ハァ?」
ソルトが怪訝な顔をしたけど僕は構わず続けた。
「ソルトも用があるんだろ。ここに」
確信は無いけどそんな気がした。
「だったら一緒に行こう」
力を合わせて、とは言えない。
どう考えても僕がソルトに頼る形になるだろう。
「弱虫」
ソルトにもそれを見透かされそう言われた。
それでも―
「それでも良い」
ヤッケ達を助けられるなら弱虫でも臆病でもそれをさらけ出しても構わない。
僕は僕なりの、弱虫の抗いをするんだ。
「・・・・・・」
真っ直ぐに見詰めた僕をソルトがにやりと牙を見せながら笑った。
日が暮れても気温が下がった気配は無い。
生暖かい風が首筋を撫でて行く。
僕は自転車を降りて目の前の大きな建物を見上げた。
暗い夜の街に大型スーパーは更に黒い影となって聳え立っている。
結局僕は写真を撮った時と同じ場所に立っていた。
確かにまたここに来るのは怖いし嫌だった。
今だって震えが止まらない。
でもヤッケもラーコもメン太も放っておく事なんで出来ない。
弱虫だってからかっても何時だって皆僕を置いて行かなかった。
あの日だってきっと。
用心深く辺りを見回すけど妖しいものは無い。
遠くに街灯の明かりが見えるけれど動いているのは僕だけだ。
(本当に)影も形も無い。
「・・・・・・ふぅ」
緊張の糸が切れたのと落胆したので僕は大きく息を吐いた。
やっぱりソルトにも来て貰えば良かっただろうか?
でも出窓から殆ど離れないアイツを連れ出すのは無理に近い気がした。頼み込んだって「何でオレが?」って言われて返されるに違いない。きっと拳か蹴りのおまけ付きで。
でも僕が此処で右往左往しても何かが変わる気配は無い。
だったらせめてソルトから何か聞いてくれば良かった。
出る場所とか弱点とか、ソルトならあの黒い影についてもっと知っている様子だったし。
「痛っ!」
考え倦ねている僕の頭に何かが当たった。
「うわわっ」
吃驚して逃げ出そうとした気持と恐怖で動かない足が合わさって自転車の車輪に蹴躓くと僕は自転車ごとひっくり返ってしまった。
「ダセェ」
てっきり黒い影の攻撃だと思っていた僕の目にソルトが映った。
相変わらず飴を食べながらポケットに両手を突っ込んでいる。
本当に座ってても立っててもふてぶてしいヤツだ。
「・・・て。えぇ?」
僕はさっきより更に吃驚して慌てて飛び起きた。
ちゃんと見てもそこに居たのは本物のソルトだった。
「何でここに・・・・?」
ソルトが出窓以外の場所に居るのを見るなんて初めてかもしれない。
万が一にも僕を助けに来てくれたのかなぁ、と思ってしまう。
「知り合いにアイサツに来ただけだ」
そうあっさり返されてしまった。
特に照れ隠しで言っている様にも見えないし、ソルトが言うならきっとそうなのだろう。
僕は妙に納得してしまった。
「影・・・・いないんだ・・」
デジカメに映っていた場所を見ても動くものもに何も無い。
ソルトも目的は何であっても此処に来てくれた事はありがたい。きっと僕では分からない何かを知っている筈だ。
相変わらず辺りは薄暗いけどもうそんなに怖く無い。
衝撃度で言ったら黒い影よりソルトの方が大きかったからだ。
「日の光が嫌いだからな。当たらない場所に避難してんだ」
そう言うとソルトは地面に落ちていた棒付きの飴を拾い上げた。
どうやらさっき僕の頭に当たったのはソルトが投げたコレらしい。
「日の当たらない場所って?」
僕の質問にソルトは拾い上げた飴である場所を指し示した。
その先が指す場所は。
「建物の・・・なか?」
シャッターが下りていて良く見えないが飴は確かにスーパーを指していた。
「そんな・・・だって」
確かに中は暗くて日の光も当たらなそうだけど僕には一つ腑に落ちない点があった。
「明日開店するんだよ。人とか日の光とか入って来るんだよ?」
駐車場には記念の花輪とか建物にはオープンを告げる賑やかな飾りとかがされていて準備は万端と言った感じだ。
人が居て賑やかな場所が好きなお化けなんて聞いた事が無いけど、もし居たとしても店自体が営業を始めれば日の光からは逃れられない。
最近のエコブームからなのか建物は日光を沢山取り入れられる硝子張りの作りになっているからだ。
「そしたらどっか行くだろ?」
ソルトが建物をぐるりと見渡しながら続ける。
「日の当たらない場所、日の当たらない場所に逃げてくんだ。アイツら事態大した事は出来ないからな」
その言葉を聞いて納得した僕は新たな問題に気付いた。
「じゃあ、今日しか無いって事じゃん!」
スーパーがオープンになってしまえば黒い影はヤッケ達を取り込んだまま何処かへ逃げてしまう。そうなればもう行方は分からない。
日が明けるまで、いや搬入で業者とかが入って来るだろうからもっと短い時間にヤッケ達を見つけて助けなければいけない。
「・・・・・・」
僕は呼吸を止めるて両手をぎゅっと握った。
「連れてって。僕も」
「ハァ?」
ソルトが怪訝な顔をしたけど僕は構わず続けた。
「ソルトも用があるんだろ。ここに」
確信は無いけどそんな気がした。
「だったら一緒に行こう」
力を合わせて、とは言えない。
どう考えても僕がソルトに頼る形になるだろう。
「弱虫」
ソルトにもそれを見透かされそう言われた。
それでも―
「それでも良い」
ヤッケ達を助けられるなら弱虫でも臆病でもそれをさらけ出しても構わない。
僕は僕なりの、弱虫の抗いをするんだ。
「・・・・・・」
真っ直ぐに見詰めた僕をソルトがにやりと牙を見せながら笑った。
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