クレイジーソルトキャンディ

瀬模 拓也

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僕の戦い

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「ポー!なにしてるポー!!」



そこでようやく僕の存在に気付いた白衣のお化けが体をバタバタさせながら怒鳴る。

その怒りに合わせるように新しいお化けが僕の所に現れると僕の足を思いっきり引っ張った。





「うっ・・・わっ・・・・・」



バランスを崩した僕は顎を棚に打ち付ける。



頭がグラグラして涙が落ちて来た。

掴んだ手を離してしまい自分の体もずり落ちて両手でどうにか棚にぶら下がっている状態だ。



「ジャマするなポー」



目眩がする。



「イヤだ・・・・イヤだ・・・イヤだ」



手が痺れる。



「もう見ないフリをするのは・・・・」



弱虫だって。そう笑ってからかっても、皆僕を置いて行かなかった。

僕が追いつくまで待っていてくれた。

いつだってそうだった。

のろい僕を残して行ったりしなかった。



きっとあの日だって僕が行くのを待ってた。



「僕だけ・・・逃げるのは」



棚の縁を噛んで体の重さを支える部分を増やす。

顎が変になる位、痛い。



それでも構わず腕に力を入れて棚の上に這いずって上がる。





弱虫でもいい。



お化けと戦う事は出来ないけど。



それでも。



「えいっ」



棚からジャンプする。チャンスはきっと一回きりだ。

お化けが再び足をひっぱるけど、それよりも先に腕を掴む事が出来だ。



ヤッケ達が霧から引きだされる。上手い具合に三人ともズルズルと繋がるように外に出てきた。



「やった・・・」



僕はそのまま棚から落下する。



瞬間、ソルトと目が合った。



『やるじゃねーか』



ソルトの目がそう言っているような気がした。



地面にお腹から着地して息が止まった。体中の空気がどこかに行ってしまったように動けない。

それでもどうにかソルトの方を見上げる。





ソルトは相変わらず偉そうに笑っていた。



「やっぱりデカいだけだな」



そう言ってお化けのパンチを避けるといつも食べている棒付きの飴を3本ポケットから出す。



「まだオワリは来ないみてーだな」



お化けの口に飴を押し込むと大爆発が起きる。僕の方まで吹き飛ばされそうな風圧。



けれどもソルトはその爆風に乗って軽々と宙を舞う。ポケットからチョコバーを取り出すとそれが四角い剣に変わる。



「バーカ」



誰が見たって腹立たしくなる笑いを浮かべてソルトは既に半分消えかかったお化けのてっぺんに剣を突き刺した。



「ポ――」



最後の悲鳴を上げて真っ二つになったお化けは空気に溶けて行った。



「こっ・・・これで終わったと思うな!ポー!」



白衣のお化けはそう叫んではいるものの体の方は既に出口の方にある。

ごていねいな事にあの機械もお化けが懸命に運んで後に続いている。



「さらば!ポー!」



カッコよく退散したかったのだろうけどソルトが足元に飴を転がした所為で爆発に吹き飛ばされる形でお化け達は消えて行った。



「た・・・・助かった」



僕は何とか体を起こす。幸いにもヤッケ達は上手く棚の上に引っ掛っているので怪我は無さそうだ。



「痛たた・・・・」



体があちこち悲鳴を上げている。



ソルトの方はあれだけの攻撃を受けたのにケロッとしていた。

「生きてる・・・・よね」



僕はそこでようやく大事な事に気づいて怖くなった。



もしここまで来て皆が死んでたら・・・・



「ンなもんオレが知るか」



やっぱりソルトはソルトだ。僕は何だかホッとしてしまった。



きっと皆大丈夫。



そして僕もこいつも。



偉そうで非常識で乱暴だけど強くて頼りになるヤツ。



「ソルト・・・ありが」



「そこまでだ」



突然響いた声に空気が凍りついた。



銃を構えてこちらを睨む男、誰だっけ?



「・・・・あ!」



そうだ、あの日土手で会った刑事の、確かつなまとか言う人だ。



「また派手に暴れたな」



ツナマの目はソルトの方だけを捉えてる。



刑事に追われているなんてやっぱりソルトには僕が見て来た以上の秘密がまだある、そう思えた。



でも、幾ら何でも子供に銃を向けるなんて。

それ以上にここは日本だ。こんなアメリカみたいな状態はどう考えてもおかしい。

この刑事さんもあのお化けみたいに異質な存在みたいだ。



「今日こそは決着をつけさせてもらう」



そう言って引き金に手を掛ける。その現実はさっきのお化けよりも恐ろしく感じられた。





でもソルトは相変わらずふてぶてしく笑っている。





「ヤなこった。テメーの相手なんかするかよ。ここら辺にいるのも飽きたしな」



そう言うとソルトは綿菓子の袋を破いた。



上に流れながら綿菓子がピンクの雲に変わっていくと雨が降り出した。



「この雨?」



なんだか甘い匂いがする。それに―



「ひやぁあぁ~~~!ベタベタするっ!気持ち悪い!」



流石は綿菓子から出来た雲だ。



でも今の声は僕じゃ無くて刑事さんの方だ。

さっきまでソルトとは別の感じで偉そうだったのに今は甘い雨から逃げようと走り回っている。



この人、あの白衣のお化けより情けない。



呆れる僕を甘い霧が包んでいく。



そう言えばさっきソルトは『ここに居るの飽きたって』じゃあソルトは、もう。



僕が慌ててソルトの方を見るとその姿はもう半分以上霧が隠してしまっている。



それでもいつもの偉そうな顔な見る事が出来た。



僕が何かを言うよりも先にソルトの口が動く。



「弱虫」



「さよなら」でも「またね」でも無くてソルトはお気に入りの言葉みたいにそれだけ言うとふてぶてしい笑みを浮かべたまま霧の中に消えて行った。

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