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二人の男
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しおりを挟む言われなくとも。と思いながら、グッと気を静める。
この老人は今の世で確かに桃の精霊。
そして龍の祖父で、ゆうつきの父親だった。
頭の隅にある前世の記憶。その気配を確かに感じて、
...
あの時の怒りが沸き上がる。
「「貴方様がお怒りになるのは当たり前です。
貴方様はゆうつきを救って下さった。
私は、見殺しにした。
いや、喜んで差し出したのですから」」
どんな言葉も言い訳にしかならない。
潔く自身の罪を淡々と語る老人に、それでも怒る心は閻魔のもの。
だが、生け贄と成った事で閻魔はゆうつきと出逢えた。
河童で在る現在の私は、それも理解して居た。
「お前は龍を立派に育てた。それも事実だ。
信じよう。関わった者達を連れて来る。
───繰り返す悲劇を断ち切る為に」
これで最後にする為に。
† 再び水先家
*クロスside*
優月の膝に乗り、顔を見上げる。
今は猫の姿に戻って居た。この方が優月の癒しになると思って。
河童が出て行ってから河童の両親と、優良は離れに残り、優月と水先の両親と優星と龍は本宅の各自室戻ってた。
優月はベッドに腰掛け、窓から外を見ていた。
俺の背中を撫でながら、見ている先は、河童の池。
心配そうに眉根を寄せていた。
優月の癒しに、とか思っていたのに、撫でられて気持ち良くなって来て、こんな時自分が猫だって感じる。
河童には悪いけど、こんなまったりした時間がずっと続いたら良いのに。
ふと思う。こんな時間を持ったのは何時ぶりだろう?
自分の記憶がしっかりしてないのは自覚している。
満足いくまで輪廻をするつもりだったから。
..
輪廻を?
何言ってんだろ。
“輪廻”をして居るのは、あの河童の優良。
優良。可愛いって思う。
近くに居るだけでドギマギして、切ない気持ちになる。
長い事探してた何かを見つけた様な気になって、嬉しくなる。
けど、彼女に、あんまり近付いちゃいけないって何かが言ってる。
....
俺はきっと彼女を傷付ける。変な確信があった。
優良に対して、愛しい気持ちと罪悪感が俺を支配してた。
「あ……朗!」
物思いに耽っていた時、優月が河童の名を呼んで立ち上がった。
俺は優月の膝から転げ落ちる様に布団の上に飛び降り、部屋を駆け出した優月の後を追った。
ザワザワとした胸の奥の何とも言い難い違和感を押し殺して、優月の背中を追い掛けた。
河童の池の前に河童は佇んで居た。
その肩に小さな座敷わらしが笑顔でぶら下がっていた。
「朗! お帰りっ。良かったぁ」
優月が河童の懐に飛び込んだ。
「あぁ。ただいま優月」
嬉しそうに笑顔を浮かべた河童。
この二人を見ていたら、何だか心が締め付けられた。
優月は俺のって前なら間に入り込んだけど、今はそんな隙なんて全く無い。
あんな絆、見せ付けられたら誰だって躊躇する。
俺って何だろう?
モヤモヤする胸につかえた思い。
それが何か判らないから余計にイライラして、優月の足元で不貞腐れて一鳴きする。
「ニャ~!」
まるで猫の様に。
そしたら優月が俺を見てくれた。
「クロス。まるで普通の猫みたいだ」
って。
何だかヤな感じ!
憤慨し、腹癒せに変化する。
手足を伸ばし、首を回し、俺より小さくなった優月を背後から抱き締める。
「そうだな。俺は“人間”にだって成れるからな」
..
人間にだって成れる。
人間……。
次の瞬間、耳の先から尻尾の先まで、電流が走り抜けた。
実際はそんな気がしただけなんだけど。
自分の考えた事で体が震えるなんて。
「さすがは化け猫殿。だがな、私の妹に丸出しの尻を向けて、恥ずかしくはないのか?」
河童の言葉に息を呑む。
俺の背後には離れが在った。
二股尻尾で尻を隠して、そろりと仰ぎ見た。
ガラス戸前に座ってこちらを見る優良が、にっこりと微笑んで座って居た。
「なぁんニャ───……!?」
言葉にならない声が口から零れる。そんな事は無視して来た道を戻った。
家に飛び込んで一息吐く。
恥ずかしがる必要なんかないのに。
実際に最初人型に成った時、全然恥ずかしくなかったし……。て、優良は赤ん坊だったっけ。
何でこんなに彼女が気になるんだ?
*優月side*
クロスの慌て振りさが何だか可愛くて、くすりと笑ってしまった。
「クロス、どうしちゃったんだろう?」
「優良が気になるんだろう」
難しい顔をした朗が答えた言葉に驚いた。
「えぇっ?! クロス、ばあちゃんに恋してるって言うの?」
思ってもなかった事に大きな声で叫んでしまった。
...
「それに疎い私でも、初めから気付いてたよ」
朗がさらりと言った。
クロスってば。
「ヤツの事はいい。優月。皆にも伝えなければならない事がある」
ガラリと雰囲気が変わる。
「右。水先の両親と龍達を呼んで来い」
そして僕らは再び離れに集まった。
朗が持って帰って来た事実に、今度こそ覚悟を決める事になる。
先輩のお母さんの中に居る黄泉のイザナミ。
その傍に居る白龍。
護神樹の桃の精霊。
精霊の前世と自分達との関わり。
そして黄泉のイザナミを龍羽神社に結界で留めて居る事。
今度こそ、
今度こそ救けに、そして決着をつけに行かなきゃならない。
その為に僕達は揃って居るんだから。
「私自身と向き合って、どう言う結果になるか正直判らない」
優良がうなだれる。
でもすぐに顔を上げて力強く拳を握り口を開いた。
「だが、どうしても通らなければならない道だと思う。私は、イザナギの血を受け継ぐ者達を護らないといけないのだ」
決意揺るがない瞳を輝かせた優良がその目を閉じて言った。
「こちらに来た時に感じたイザナギの魂の輝き、それを受け継いでいる人間を私は護りたい」
千五百の人間に成ったイザナギの子孫はそれこそ無限に増えて居て、僕の中にもそれは在って……。
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