3 / 210
泣いた赤鬼
3
しおりを挟む夜道を歩いて帰る。
赤鬼を連れて、
山の場所は判っていたから、表に出てしまえば、帰り道も判る。
まほろばの大事な所は、ボクの学ランを巻いて隠し。
それでもそれだけしか身に付けてない大男は、とても目立つ。
しかも長い赤毛!
ボクの後を足音もさせず、着いて来る。
「まほろばは、鬼?」
判りきった事を訊く。
まほろばは、ただ黙って首を傾げて、小さく笑った。
うーん……
どうしよう?
このまま連れて帰ってどうするの?
犬ネコじゃないんだから、飼うって訳にも行かないしなぁー
ため息を一つ。
「しゃべれないの?」
見遣ると、やっぱりほほ笑むだけで、唇さえ開こうとしない。
「ボクの名前は呼んだのに……」
ちょっと拗ねちゃいそ。
ここから家までは、結構遠いから、陽が上るまでに帰り着けるかな?
こんな格好の大男。見つかったりしたら、警察に捕まるんじゃないかな?
「へっくし!」
やっぱり上着無いと少し寒い。
急に体が浮かぶ感覚。
「……? まほろば?」
抱き上げられていた。
くしゃみしたから寒いと思ったんだろうか?
優しく……お姫様抱っこ。
鬼に“お姫様抱っこ”って、判るのかな?
「えっと。どう言えば良いのかな? ありがとう」
素直に感謝し、笑顔を向ける。
「でも、家まで遠いから、このまま歩くのは疲れると思うよ?」
その言葉に、頷いて、ボクを右の片腕に座らせる様に抱きかえ、深く屈伸をし、次の瞬間、
飛んでいた。
走っているのだろうけど、速度が早い上に、道路どころか、木の上を通ったり、
気付いたら、民家の屋根を駆け抜けて、
家に、着いてた。
見慣れた玄関先に、静かに舞い降りた。
ボクは振り落とされない様に、しっかりとまほろばの首に掴まっていた。
時間にして、10分も掛からなかった様な?
車でも1時間は掛かる場所から。
得した気分。
歩かなくてすんだし、暗かったから目立ちもしなかったし、
「ありがとう♪」
手を離して下に降り、隠してた合鍵でカギを開ける。
あれ?
何でココが判ったの?
玄関に先に入り、後ろを見ると、デカ過ぎる背丈を頭を下げて中に入って来る。
あぁ、鬼だから、ココロが読めたりとか、不思議な能力があるのかな?
まほろばは、黙ってボクに着いて来る。
一軒家の古い家。
ばぁちゃんが残してくれた家。
ボクの両親は、互いに違う想い人が出来て離婚した。
ボクをばぁちゃんに預けたまま。
ボクは昔から“感情”を表せない子だったから――実際に、気持ちの高ぶる事もなく。
いじめられても、実はあんまり苦痛は感じない。
唯一涙したのは、ばぁちゃんが死んだ時と、
――――まほろばと流した涙。
胸が締め付けられる様な“懐かしさ”と“切なさ”何だろう……?
考えながら、ボクの部屋の襖を開ける。
まほろばも背を丸めながら入る。
「ボクの服じゃ合わないよね? もう少し、体が小さければねぇ……」
まほろばが頷いて、目を瞑る。
「え???」
見る間に一回り小さくなる体。
それでも
ボクよりは大きいけれど、これならボクの大きめの服が入りそうだ。
上下揃いの赤いスポーツウェア。
ばぁちゃんが買って来てくれたモノ。
下着は、いらないか。
「はい。これを来て、今日はもう寝ちゃお」
時計を見ると、
23:50
お腹も空いてるけど、
何だか眠気の方が強くて。
まほろばがちゃんと服を着込む、手足が少しちんちくりんだけど。
赤い髪に、
赤い服って何だかスゴいけど。
まあ、良いか。
「明日、学校帰りに服を買って来て上げるよ」
言いながら、押し入れから出した布団を敷き、潜り込む。
何も考えずに、
「さ。まほろばはココ」
隣りを叩いて呼ぶ。
一枚の布団で、鬼と一緒に二人で眠る。
言ってる間に、目が閉じて行く。
ボクを呼ぶ声が聞こえるから……
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる