鬼に成る者

なぁ恋

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吸血鬼

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千年以上前、

愛する青鬼の望みの為、
その“鬼”の身体を喰くらったせいなのか。

変化した身体。

食物を受け付けず、
ただ、
青鬼から“生”を分けて貰う……


その躰から。

………………………



永い年月を経た身体は、変化していた。


食べ物を受け付けない。

食せるのは、


――青鬼の血液。



首筋に舌を這わせる感触。

一瞬の痛み。

肌に食い込み、吸い出される感覚。




赤鬼 まほろばは、

青鬼 ライを抱え込む様にしてしっかりと抱き締め、その首筋に“牙”に変化した歯で、噛み付いていた。



千年を越えた身体。

恐らく、不老不死に変化した身体。


鬼は鬼でも、

“吸血鬼”に変化していた。


それに気付いたのは、ライの傷を治した時。

ライの血液が舌に残り、声が出せる様になった。



それが理解出来ると、自然に始まった儀式めいた行為。


眠る前に。
彼の血を食す。

そして、一緒に眠り“癒す”
赤鬼に眠りは訪れはしないけれど……
それは赤鬼にとって至福の時。


青鬼の一部で生き、
彼を感じられる瞬間。


青鬼もまた、
与える喜びと、
少しの快感、

一緒に居られる嬉しさを感じる時。

目覚めに苦痛はなく、

朝には、いつもの日常が始まる。


鬼に成る為の、


“鬼退治”


朱色の鬼を探す。





………………………





満月の夜。

抑えきれない衝動で、眠れない。

欲しい。
欲しい――――喉が渇くんだ。


ああ、あの赤い飲みモノ。


そして、今夜も街へ行くんだ。
良く切れるナイフを持って………


………………………




“切り裂き魔”



ニュースでこの数ヶ月報じられている殺人事件。


“朱色の鬼”の気配を確かに感じる。
事が起こるのは決まって満月の夜。
若いカップルが、首を半分、骨まで切られ殺される。

刃物は、一振りで肉を切っていて、尋常でない力。

「今夜、満月だったね」

朝食を頬張りながら、ボクが呟く。

「そのようだ」

後ろから答えるまほろば。
風呂上がり湯気の立つ肌を腰だけタオルを巻き、濡れた赤い長髪を拭きながら冷蔵庫を開けて水のペットボトルを取る。

「ん。じゃ、今夜、仕事早めに終わらせて街を探そう」

珈琲で最後の一口を流し込み、上着を持って立ち上がり、

「行ってきます!」

勢い良く飛び出す礼に、水を飲みながら片手を上げ、

「迎えに行く」

まほろばの声が、聞こえたのか聞こえてないのか、礼の出て行った扉が静かに閉まる。


忙しないいつもの朝の風景。


 
家を出たのは、秋の初め、
それから街に着き、家電付きの小さな安いアパートを借りて、服や、日用品等を買った。

全所持金は200万円。

何日か暮らせるだろうけど、どうせなら働こう。と、まほろばも手伝い、日雇い夜間の道路工事を始めた。

まほろばは、加減を知らなくて、水道管を破裂させてしまい、弁償。

あっという間に、残ったお金は万札数枚。

まほろばには、まずは今の世の中の仕組みを勉強して貰わなきゃ。

だから働くのは、ボク。

時間はあるのだから、朝から夕方までコンビニ。夜は、ゲイバーでバイトをしている。

ゲイバーは、時給が良かったから。

それに、オーナーの桃井さんは、優しくて融通のきく雇い主だったし。

それだけ。

淡々とコンビニのバイトが終わり、夕食がてらマックへ寄る。


大好きなんだよな♪

死にそうになった時にも浮かんだ食べ物。


セットと、単品でバーガーを3コ。


幸せだな♪


一口頬張って、ゆっくりと噛む。
ポテトも口に入れ、ホント飽きないよな。 


 

 

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