鬼に成る者

なぁ恋

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隠れ鬼

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*元気side*
 
トイレだと思って開けて驚いた。

ほんの少しのドアの隙間から暗い室内でもはっきりと見える赤と青。
服は着ていても、ものすごく……怪しげで、まほろばにまたがり首を傾げるライ。

かと思った。

でも?
はっきりと見えた。
ライの首筋に唇を寄せたまほろばが牙をたてるのが。

驚いて後退る。

同時にまほろばと視線が合ったのが判った。


『待っていろ』


頭に響いた声に動く事が出来なかった。




彼らは自らを“鬼”と言った。
にわかには信じがたく、初めて差し出された救いの手を簡単に受け取った。
今でもココロは間違ってないと感じてる。
だから逃げない。
ここが一番安全な場所だと解っているから。
俺の身に起こっている事を理解出来るのは、救えるのは、彼らだけ。
 
俺は危うい状態にあると、自分でも解っている。
いつまでも隠れていられない。

今までみたいには……
 
  


目を覚ますとソファの上で。
向かい合った一人用のソファにまほろばは座り金の瞳がこちらを見て居た。
静かに視線を合わせ、何もかもを見透かした様な強い声色で、

「あの時“俺の力”に呼応され、自ら封じていた“能力”を開放してしまったんだ」

彼の、まほろばの言葉が、何故かすんなり頷けた。

「“超能力者”は“鬼”の血の流れを持つ者は理解出来たな?」

「何にでも理由がある。と言う事だろう?」

例えば、まほろばとライの関係。

「───数千年を生きて来た。
ライの前世の体を食した事で“不老不死”の肉体と成り……」

口を閉じ、少し考えてから、理由が知りたいのだろう?
と、まほろばが手を取って来た。

口下手な彼から直接流れて来た記憶の断片。

楽しく、充実した二人の友情。
そして生々しく悲しい別れの場面まで。
その理由となった“朱色の鬼”が、

「“朱色の鬼”が姉を連れ去った?」

何故か“連れ去られた”とはっきりと解っていた。

「お前の失くした記憶は“隠れる”為に自ら封じたんだ。その能力と共に」

まほろばの言葉は、まるで暗示を解く様に俺に浸透する。

うっすらと思い出される記憶。
頭に浮かぶ映像。


もう、思い出さなきゃならない。

まほろばが居れば安心出来る。

繋がれたままの手を強く握り、彼に身を任せ、自分の内にココロの中へ入る。

封じた記憶を開放する為に。
 
 

 
暗転。


落ちる。

くるくると、
上から下へ
或いは、
下から上に昇っているのか?

何もない、
暗い闇の中を
落ちて行く感覚。

視覚より先に聴覚が反応する。

聞こえたのは悲鳴。






「きゃあぁああ!!!! お母さんっ! お父さん!?」


姉。

の、甲高い悲鳴。


「おかあさん??」

声色が変わる。


───おかあさん?


視界が開ける。


当時の自分と目が合う。
その瞳に映ったモノは?



首を切られて膝をついた両親に。

返り血を着けた姉。
その後ろから有り得ない程の長い手を伸ばした白い顔がこちらを見ていた。
姉に巻きついた複数の長い手?



「「樹利亜じゅりあ」」
しわがれた不気味な声。


そいつは姉の耳元で彼女の名を呼び、
姉は「おかあさん」とそいつを呼んだ。
 
 
 
 
 
  
 
 
 
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