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炎鬼
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しおりを挟む裏口から逃げようにももう遅く。
戦いを見守るしかない。
まほろばより躰の大きくなった朱色の鬼、有利だと思ったのか、大きく唸り両手に力を込めた。
まほろばは静かにそれを受け止め……
「「ガァ!!」」
いきなり力が抜けた様に両膝を付いた朱色の鬼が、全身から蒸気を発しながら縮まって行く。
そこから出る熱風が店内を駆け抜けた。
「熱っ!」
とっさに二人の盾になった俺の身体が高熱を浴び服が半焼けし、そこから覗く肌が チリチリ と熱くなる。
「礼くん!!」
「大丈夫。桃井さん達は?」
「あたしは平気。大輝が……」
相楽が大きな身体で桃井を抱き包んで守って、両腕の袖が焼け落ちていた。
「俺は大丈夫だ。礼くんのおかげで焼けたのは服だけですんだ」
熱風が止むと、甘いアルコールのニオイが辺りに立ち込める。
「まほろばは?」
振り向くと、熱に服が焼け落ち全裸になったまほろばが仁王立ち。彼の手にぶら下がった人型の皮が揺れて居た。
「“血珠”は取れない。体液全てが“酒”奴の炎は、アルコールが燃えたもの。
炎を内に閉じ込め、全てを蒸発させた」
人で在った皮を離すと、それは揺れながら床に落ちた。
ゆっくり上向くまほろばの、金の瞳が俺を見つめる。
綺麗なまほろば。
白い二本角が闇に輝いて、赤い長髪が全身を彩って腰まで流れて居る。
差し出される手の平。
迷う事なくその手を取ると、静かに引き寄せられ抱きしめられる。
首筋に触れて来た唇に首を傾げて差し出す。
牙が肌に食い込む。この感覚は……快感。
躰から吸い取られる血液。同時に癒される火傷の痛みと傷。
「……はぁ」
唇が離れる時、舌で噛み痕を舐めるとその痕が消える。
「………まぁ。なんて……」
忘れてた!
桃井さん達が居たんだ。
「綺麗」
桃井さんは、何て言うか、スゴい人だ。
「これは、酷い惨状だな」
相楽さんの言葉に改めて周りを見渡すと、ボコボコにえぐれた床に天井はヘコみ半分が落ちて居る。
明日から営業……何て出来そうにない。
それ以前に、ボク達はクビになるんじゃ?
「有給を使えば良いわ」
「え?」
「この際だから改装もしちゃいましょう」
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そう言った桃井さんの笑顔はとても優しくて嬉しかった。
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「ハッ! 頼もしいな。そう言うトコが好きなんだ!」
そう言った相楽さんが桃井さんを抱きしめた。
「貴方だってあたしのペットちゃんでしょ? 可愛いワンちゃん」
抱き返す桃井さんは幸せそうに笑った。
“飼ってあげる”その言葉に愛情を感じて。甘えて良いのかな?
「彼なら信じても大丈夫だ。こんなに強い人間は珍しい」
まほろばが頷くと、
「そうよ。あたしはこの中で一番強いの! そして好奇心も人一倍強い。貴方達が“鬼”なのは解ったわ。でも、それはどうしてなのか、鬼が何なのか教えて欲しい。嫌じゃなければね」
断れる筈もなく
「……遠い昔、鬼は故郷を捨て地上の楽土へ移住した。この日本国へ……
人との間に子を成すものも居て、その子孫が超能力者と呼ばれる者と、その力を使って悪事を働き人を傷付ける者が“朱色の鬼”に変貌する。
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ボクは……前世が鬼の鬼に成る事を選んだ者」
「そう……なの? 何だか壮大な話しね。今目の前で見た事は夢で無いって、まほろばくんの角を見たら分かる」
バチッ
天井から覗く線から火花が出る。
遠くからサイレンの音。
「この場所から移動しよう」
相楽さんの言葉に皆頷いた。
「さて、まほろばくんのその立派なモノを隠して行かなきゃね」
そうだ。全裸のまほろば。
ボクも半裸だ。
「裏口に車を停めている。皆それに乗れば良い」
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