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羅刹鬼
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しおりを挟む*ライside*
まほろばと絡む様にして部屋へ入る。
唇は重なり、息も出来ない。
「ま……ほろば!」呼ぶだけで精一杯で。
いつの間にかベッドに寝転んでまさぐられる肌。
「ライ……」彼の声は、低く甘い。
「んん!」
首に痛みと、同時に吸われる快感。
***
ただ“食事”をしただけなんだけど。
濃厚過ぎて、刺激が……躰の一部に変化を起こさせてた。
気持ちを落ち着かせて、
「まほろば。何で最近は毎回キス込みなんだよ」
「……気持ち良いから」
―――言われた言葉に溜め息。
「戦前で若干興奮しているんだ。今はこれ以上する事は出来ない。
始めてしまえばいつ終わるか分からないからな」
「何?……あっ!!」
すぐには理解出来なかった。
理解して一気に熱くなった頬に、まほろばの唇が軽く触れて離れる。
笑顔のまほろば。
唇に置かれた親指の腹が敏感な皮膚を擦り離れた。
躰が高ぶり……ーーー震える。
それを抑えて、仕返しとばかりに顔を寄せ口付ける。
深く、浅く。
絡んだ舌を強く吸って、溜め息と共に離れる。
間近で金の瞳と絡む視線。
「……後で、覚悟しておけ」
唇が離れたと同時に呟かれ、躰全身が興奮と期待とで震えた。
悔しいけど、ボクはまほろばに夢中なんだ。
***
*元気side*
潮風が頬を撫でる。
虎之介の船が夜海にエンジン音も軽やかに走り出す。
かなり沖に来た時、風音に負けないくらいの声で止める様伝える。
頷いた大輝がエンジンを止めた。
波音がゆっくりと静まる。
「覚悟は出来てる?」
真っ直ぐこちらを見る虎之介が訊く。
「もちろん。この場所が空羅寿との繋がりを感じられる。
迷わず道案内出来る」
「元気は送ったら即帰るのよ!」
樹利亜の言葉を曖昧に聞き流すと、
「虎之介、どうしたら良い?」
「元気くんはあたしの隣りに。皆は輪になってそれぞれの手を取って」
言われるまま、広い船首で輪を作る。
虎之介、俺、まほろば、ライ、樹利亜、龍太郎。の順で輪になる。
龍太郎が虎之介の手を握ると、
「大輝。待っていて……後は、“飛ぶ”だけ。」
言った瞬間、
周りの風景が流れる。
無音で、風景だけが流れる空間。
“飛ぶ”とは、文字通り、飛んでる感覚。
見える風景の中に、捜して居た気配を感じて、
「虎之介!」
「了解」
それは突然止まった。
目に映るその場所は、確かに空羅寿が居る島の中。
霧掛かる海岸を踏み締めて歩く。
暗い雰囲気をかもし出したこの世界は“生”をまるで感じられない。
「元気。帰って」
樹利亜がささやく様に言う。
「約束はしていない」
その言葉にふて腐れた樹利亜が虎之介を見る。
虎之介は困った様に肩をすくめる。
「無理強いは出来ないわ……」
「虎之介、すべてが終われば俺が呼ぶからな」
龍太郎の言葉に頷いた虎之介が、軽く手を振って消えた。
「もう!」
そんな樹利亜の前を歩き続ける。
皆静かに歩く。砂浜の感覚がなくなり、砂利道に出る。
濃くなって来た霧が周りを霞ませ、視界を遮る。
「元気?」
ライの声が後方から聞こえる。振り向いても肉眼では見えない状態に。
霧が全身にまとわりつく。
「皆居るか?」
その答えは無く、すぐ後ろに居た筈の樹利亜でさえ、気配も無くなっていた。
「まほろば?」
言葉で、ココロで呼ぶも、まったく反応が無い。
足下の土を踏み締める感覚さえもが幻の様に消えて、
「樹利亜? 龍太郎? ……ライ!」
呼んでも返る反応は無く、立ち込める霧がさらに濃さを増す。
全身を覆われ、息が……苦しくなる。
まとわる霧がまるで生き物の様で、鼻から、口から、体内に侵入して来た感じがして手を添えるも時すでに遅く。
朦朧として来た意識。
その中で無意識に口をついて出た名前……
「空羅寿……」呼んで、意識が途切れた。
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