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毒鬼
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しおりを挟む*元気side*
頭が混乱して来た。
空羅寿は超能力者と言う人間で、羅刹も人間。
俺は鬼に成ったから……空羅寿と話さなきゃ。
でも今は島へ行く事は出来ない。
俺が狙われてるから。
今も見えない目で監視されているみたいで気持ちが悪い。
「龍太郎さん」
ライの声に振り向くと、重々しい雰囲気の龍太郎が戸口に立っていた。
「大丈夫か? すぐに来たかったんだが」
樹利亜がその腕に飛び込んだ。
「分かったの?」
「樹利亜の恐怖はすぐに感じられた。飛んで来たかったんだが……皆うちに来てくれ問題が起きてな。車で来ている」
急かされるまま車に乗る。デカい黒塗りの車。
運転手が居て、後ろの席が向かい合わせになっていた。
前に龍太郎と樹利亜が、後ろ側にまほろばとライと俺が座る。
「樹利亜から大体の事は分かった。
その悪鬼達の事でこちらにも情報が届いた」
「届いた?」
「文字通り、郵送で届いたんだ。
前に土地土地に護りが居て交流は無いと言っていただろう?」
皆が軽く頷く。
「目には見えない“境界線”があって、そこからは入らない古い口頭での約束。それが強敵が現れたと北の護りから知らせが届いた。
倒し切れずこちらに逃げたと。あちら側は大打撃を受け、沢山の鬼の末裔が“鬼力”と共に命を奪われたらしい」
「奪われた?」
まほろばが怪訝な顔をする。
「丁度、お前達が鬼に成る為にして居る事と似た様な事をしているんだ」
「“鬼力”を奪う?」
「ただの人間にして、命まで奪う。それも残酷なやり方で」
「それは男女の二人組か?」
間違いないだろう。
「そうだ」
龍太郎の言葉に解っていたとは言え身体が震え出すのを止められなかった。
*
*ライside*
市松家の大広間に通され、待つ事数分。
市松のお父さんと、すらりと背の高い男性がそれに寄り添って居た。
「ご足労頂いて申し訳ありません」
労いの言葉をかけてくる彼は見るからに弱って居て、歩くのがやっとなのだろう。
「こやつは、道彩前妻との子だ」
男性は、龍太郎さんよりも若く見えた。
細身で後ろ髪は短く前髪は長く優しい顔立ちを隠している。
「よろしくお願いします」
頭を下げる。その立ち振る舞いは静かで、目を魅くものがある。
「皆様に集まって頂いたのは、龍太郎から簡単な説明があったと思いますが」
座布団に座すると、ボクらを見回しながら話だす。
「私達の連絡手段は郵送です。
直接動いたり電波で送るよりも確実に真意が解り、安全だからです。
封筒に“封”をした時点で、その情報は安全に人の手を介してこちらまで届きます」
一息置き、
「私達の護る土地に非常に邪悪な悪鬼が侵入した模様です。
それらは人間よりも主に鬼を喰っている者の様です」
「もう接触があった。
既に狙いをつけたらしい」
まほろばの言葉に、元気が頭を上げる。
「俺が狙われてる。今も奴等の気配を身近に感じてる。二人を目で確認もした」
「追跡者も居た。人の顔を持つ鴉だ」
そのまほろばの言葉に一目置くと、
「道彩。ここは、大丈夫か?」
「はい。気配はありません。元気様の周りにある鬼気も残像の様なもの」
前髪から覗いた道彩の眼が真っ白で驚いた。
「ライ様。私は見えぬ者。眼を持たず生まれました。故に、気配等を敏感に感じる事が出来るのです。テレパスでもあります。皆様と同じ様に」
「千里眼?」
「いえ、私は“過去視”は出来ませんから。分類するならば、透視能力者となるかと」
「未来も視るんだろう?」
龍太郎さんが促す様に言うと、気の進まないといった溜め息を吐いて、
「確かに、たまに予知を視ます。それは鮮明で無く不確かで、未来は定まっていませんからその都度変わるもので当てになりません」
渋々言った感じ。
「長くを生きて居ると、知恵がつき、不自由な身故に能力も人より多く何かしら目覚めるものです。
私にも鬼の血が流れていますから」
ほほ笑むと、親父さんに話を促す。
「この悪鬼は、男ばかりを好んで狙います。
どうすれば良いか、共に考えましょう。
この土地は、最初の鬼が固めた護りがあります。
その土台は、歴代の鬼の命。
私もこの土地の土になるのです。
あれも共に連れて行きますから、安心されて下さい」
深々と頭を下げる。
「すみません。話が逸れましたが、解決するまでは、皆様はこの家にとどまって頂けたら安全です」
「それぞれの部屋も用意してある。
この場所が安全なのは保証するが、念の為二人一組で部屋割した。その方が安心出来るからな」
龍太郎さんの心配が的外れなら笑えるのに。
心底安心出来ないでいる自分が居て、何か落ち着かない。
「ライ様」
不意に呼ばれて視線を向けると、
「雰囲気が変わられましたな。何か、力ある気をまとっていらっしゃる」
親父さんが静かに言った。
「貴方様が、私を逝かせて下さるのですね」
悟った様に目を細めボクを見る。
「まだ。その時が来たなら」
請負って、頭を下げる。
ボクは、自分でも不思議とそれを悟っていた。
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