128 / 210
毒鬼
3
しおりを挟むまほろばを見ると考え深げに眉根を寄せていた。
問う様に視線を向けると、難しい顔で話し出す。
「朱色の鬼では在る。だが、そこにある“魔力”が気になる」
「魔力?」
「“鬼気”に混じる“魔力”の存在。
鬼は能力を持っている者は多い。“超能力”は、多種多様でその者の潜在的能力が目覚めるものだ。
“魔力”とは、生まれ持っている能力。いわゆる魔法の様な事が出来る者が持つ能力だ。霊能者もこちらの部類に入る。」
それは……
「ボクも?」
「そうだな。俺の“癒し”も魔力の部類だ。血の流れを持つ元気も或いは持っているかもしれない」
それを聞いた樹利亜が不思議そうに訊く。
「千里眼とは違うの?」
「それは、透視能力類の超能力だ。人に直接的に影響を与える事が出来る能力を魔力と言う」
「違いは大差無い気がするけど?」
「超能力は、自分だけが使える能力。
魔力とは、人に対して害を及ぼす危険性があるもの。と言えば解るか?」
まほろばが言う事に頷けた。
霊力は霊魂を操る事が出来る。
使い方次第で良い方にも悪い方にも出来ると言う事。
「まほろばの癒しも、癒す為に使うなら良し。でも、癒せるなら……」
「反対もしかり。悪化させる事も出来る」
考えもしなかったけど。
能力、魔力とは、恐ろしいものなんだ。
「持っている者は気を付けて使わないと、取返しつかなくなる事もあるんじゃないかな?」
まほろばが静かに頷いた。
「その魔力が何か関係あるのか?」
元気が訊くと、
「大いにありそうだ。その女の影に魔力。男は使役されて居る。
元気の言う“死人”は、間違ってない。
その男は死人そのもの」
*
*静side*
「なるほど。あの子の魔力はさらに魔力の強い者から受け継いだものなのねぇ」
水鏡に映る元気の姿と、聞こえて来た周りの思考。
彼らは鬼。
この地にも生命が溢れてる。
「ねぇ鬼若。あれら全部を摂取すれば貴方は完璧に成れるかしら?」
隣りで腕組みし直立不動で立つ鬼若に視線を送る。
「貴女の思うままに」
そうね。貴方は私の言う事など何とも思ってないものね。
水鏡に手を入れると、水面が揺れて、ただ冷たい感触が指先を冷やす。
私のココロみたいに。
貴方のココロみたいに。
私は昔から、ただ幸せになりたいと思っていただけ。
私は鬼の子だから、鬼そのものの鬼若に魅了された。
でも、鬼若はすでに義経のもので、貴方は義経の為なら命さえ投げ出した。
その身を挺して、義経を逃した。
彼に鬼だと知られたくはなくて、されるに任せて人間どもに生きながら八つ裂きにされた。
でも、貴方は気付いてた?
義経は分かってた、貴方が鬼だと、分かっていて利用していた事。
なのに、貴方は自ら死を選んだ。
もしかしたら義経を失うのが怖くて、人間で在る彼が年老いて死ぬのを見たくなかったから?
義経の、人間の生の儚さを憂いて自ら進んで死んだの?
私はココロを読む術を知っていた。
なのに鬼若と義経のココロだけは見えず。
私は白拍子だから、求められるままに義経の女になった。
そうして傍に居た貴方を知って、その額に在る白い角を見て、ココロは貴方に夢中になった。
ただ姿を見るだけで幸せを感じてたあの頃が一番良かったのかもしれない。
貴方のココロは未だに義経を求めていて、
私を見ようとはしないのだもの。
****
*まほろばside*
「しっ!」
視られている。
そう感じて皆を黙らしたが、それは遅かったと気付いた。
「まほろば?」
ライに頷くと、
「遅かった。聞かれてしまった。」
その魔力を辿ると、窓際に飛ぶ黒い鳥が見えた。
人の顔を持つ小さな鳥。その躰は鴉。
「「ギャアッ!」」
滲んだ鳴き声を残し、飛び立った鴉。
その眼は赤。
「何? あの鳥、人の顔してた」
樹利亜が呟く。
「あれも朱色の鬼だな。女に使役されている様だ」
「あれに覗かれていた?」
カップをテーブルに置きながら元気が訊く。
「いつもならあれの追跡を頼む所だが、無理はしない方が良い」
得体の知れない相手を追うのは無謀だ。
「ごめん」
「何も気にやむ事はない。これまでにない相手で、何をされるか想像もつかないんだ。
無理はしない方がいい」
「私が……」
「樹利亜。ダメだ捕まる恐れがある。どの道いずれ接触して来るだろう」
「使役された鬼。島のゾンビとは違うのか?」
元気の疑問はもっともで、空羅寿と羅刹を心配する気持ちが感じられた。
「羅刹の場合は本人に魔力があった訳ではなく、彼女に宿っていた白蛇の力。
死者を使役したのも白蛇のそれだ。
空羅寿は生きたまま魂を与えられた、だから使役されているのとは違う。寿命を延ばされたと考えた方がいい」
「二人は……人間?」
元気が訊きたい事はココロを読まなくても分かる。
「空羅寿と、転生した羅刹は鬼に成れる要素を持った人間」
「いずれは、死ぬ。と言う事か。」
「このままならな」
元気が溜め息一つ吐いた。
考えなければならない事が沢山ある。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる