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帰りみちを、ゆっくりと歩いていると、学校のそばの木の下で、立ち止まった。
この木は、ずっと入学したときから、帰りみちに見ていた。
大きな木。フサフサした、梢は、ゆったりと緑の葉を豊かにつけていた。
僕は、静かに、木の根元に、手を置いてみた。
理科の時間に習った。木や植物は、光を吸収して、酸素を出しているそうなのだ。
木の根元に、手をふれていると、自然にどくん、どくん、と息づかいが、伝わって来るような気がする。
しばらく、じっとしていると、かれんのように目を閉じてみた。
高山かれん。
静かに気がおちついてくるのを、感じた。気がつくとかれんのことをずっと考えていた。
しばらく木の下にいると、僕は、その側をはなれた。
夕日が落ちていて、僕は、本屋のそばを歩いていた。
ゆらゆらと、少し迷ったように、本屋のまえを、歩いているかれんがいた。
「高山さん?」
かれんは、僕の声にきがつかずに、いつも付けている、学校のノートに、目を落としている。そして、唇を動かして、何かを確かめているように、つぶやいていた。
かれん? 本屋の前に、どうして居るのだろうか、と僕は思う。
学校の制服のまま、本屋や町中を、ぶらつくと、学校の先生に怒られるはず。
そのまま、かれんは、少し緊張したように、本屋の中に入っていった。
いつも眠たげな、おじいさんが、一人でレジをつとめている、小さな本屋だった。あまり、新しい、コミック雑誌や、まんがはない。
僕は、少し本屋の前にいたが、あまり待っていたりするのも、嫌だったので、そのまま家へと帰った。
かれん? どうして、隠れるようにして、本屋に入っていったのだろうか?
午後近くから、あがった雨は、家の窓のすみに、水滴を残していた。
母は、どさりと一固まり、チラシくばりのチラシを、テーブルの上に置いていた。
僕は、雑巾で、窓をふいていた。
「お母さん、もうイヤになっちゃった」
母が、急に話しをきりだす。僕は手をとめて、ふりかえった。
「森さん、朝から元気ですねなんて、会うひと会うひとに言われるのよ。そろそろお父さんに代わってほしいわ」
父は、あまり聞こえないフリをして、新聞を読みだしている。
「チラシくばり良くないかな?」
僕が言うと、父が新聞の折りこみの、広告をなぜかそろえて、一枚一枚ていねいに読み始めた。
「仕事はすごく良いんだけど。ご近所の人に、挨拶とか」
僕は、あまり水滴の出ない雑巾をしぼって、話しを聞いていた。
父が苦々しく、お父さんもサイドワークと言った。そのために、新聞の広告を見ていたのだった。
「そろそろ二階に行くね」
母が、どうぞ、と言う。二階に上がると、僕はまた、色々と考えを始める。
モーツァルトと、ドビュッシーというひとがいるらしい。
モーツァルトというひとは知っている。ドビュッシーというのは、誰だろう?
同じ音楽のひとだということは、分かったが、モーツァルトの名前と、言葉の響きがちがう感じがした。それで、僕はドビュッシーを覚えていた。
音楽の教科書を開く。そして、最後の索引から開き、ドビュッシーを探した。
見つかったので、そのままページ数に合わせて、ページを開いた。
アラベスク、亜麻色の髪の乙女、海……。
作曲した、曲名が、ずいぶんと詩的な感じがした。
しばらく、それらを見ていて、僕はモーツァルトよりも、ドビュッシーが好きになれる気がした。かれんは、モーツァルトのソナタを、弾いていたという。ソナタというのは、何だろうか?
色々と考えていたら、時計の時間がすすんで、遅くになってしまった。
そろそろ布団に入ることにする。
かれん。本屋さんに、どうして隠れるようにして、入ったのだろうか。
秋の夜が、やさしく動いているのを、感じた。
この木は、ずっと入学したときから、帰りみちに見ていた。
大きな木。フサフサした、梢は、ゆったりと緑の葉を豊かにつけていた。
僕は、静かに、木の根元に、手を置いてみた。
理科の時間に習った。木や植物は、光を吸収して、酸素を出しているそうなのだ。
木の根元に、手をふれていると、自然にどくん、どくん、と息づかいが、伝わって来るような気がする。
しばらく、じっとしていると、かれんのように目を閉じてみた。
高山かれん。
静かに気がおちついてくるのを、感じた。気がつくとかれんのことをずっと考えていた。
しばらく木の下にいると、僕は、その側をはなれた。
夕日が落ちていて、僕は、本屋のそばを歩いていた。
ゆらゆらと、少し迷ったように、本屋のまえを、歩いているかれんがいた。
「高山さん?」
かれんは、僕の声にきがつかずに、いつも付けている、学校のノートに、目を落としている。そして、唇を動かして、何かを確かめているように、つぶやいていた。
かれん? 本屋の前に、どうして居るのだろうか、と僕は思う。
学校の制服のまま、本屋や町中を、ぶらつくと、学校の先生に怒られるはず。
そのまま、かれんは、少し緊張したように、本屋の中に入っていった。
いつも眠たげな、おじいさんが、一人でレジをつとめている、小さな本屋だった。あまり、新しい、コミック雑誌や、まんがはない。
僕は、少し本屋の前にいたが、あまり待っていたりするのも、嫌だったので、そのまま家へと帰った。
かれん? どうして、隠れるようにして、本屋に入っていったのだろうか?
午後近くから、あがった雨は、家の窓のすみに、水滴を残していた。
母は、どさりと一固まり、チラシくばりのチラシを、テーブルの上に置いていた。
僕は、雑巾で、窓をふいていた。
「お母さん、もうイヤになっちゃった」
母が、急に話しをきりだす。僕は手をとめて、ふりかえった。
「森さん、朝から元気ですねなんて、会うひと会うひとに言われるのよ。そろそろお父さんに代わってほしいわ」
父は、あまり聞こえないフリをして、新聞を読みだしている。
「チラシくばり良くないかな?」
僕が言うと、父が新聞の折りこみの、広告をなぜかそろえて、一枚一枚ていねいに読み始めた。
「仕事はすごく良いんだけど。ご近所の人に、挨拶とか」
僕は、あまり水滴の出ない雑巾をしぼって、話しを聞いていた。
父が苦々しく、お父さんもサイドワークと言った。そのために、新聞の広告を見ていたのだった。
「そろそろ二階に行くね」
母が、どうぞ、と言う。二階に上がると、僕はまた、色々と考えを始める。
モーツァルトと、ドビュッシーというひとがいるらしい。
モーツァルトというひとは知っている。ドビュッシーというのは、誰だろう?
同じ音楽のひとだということは、分かったが、モーツァルトの名前と、言葉の響きがちがう感じがした。それで、僕はドビュッシーを覚えていた。
音楽の教科書を開く。そして、最後の索引から開き、ドビュッシーを探した。
見つかったので、そのままページ数に合わせて、ページを開いた。
アラベスク、亜麻色の髪の乙女、海……。
作曲した、曲名が、ずいぶんと詩的な感じがした。
しばらく、それらを見ていて、僕はモーツァルトよりも、ドビュッシーが好きになれる気がした。かれんは、モーツァルトのソナタを、弾いていたという。ソナタというのは、何だろうか?
色々と考えていたら、時計の時間がすすんで、遅くになってしまった。
そろそろ布団に入ることにする。
かれん。本屋さんに、どうして隠れるようにして、入ったのだろうか。
秋の夜が、やさしく動いているのを、感じた。
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