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第一章桃チャンの世界…俺がまるっとハッピーエンドにしてやるぜ!
第1話嵐は、面倒事引き連れてやってくる!?
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この日は朝からおかしかった。
何処が?って聞かれると難しいが、色々とおかしかったんだ。
いや、台風がくることは天気予報が言ってたし?…そんな日に親友の茂が「台風って言ったって、どうせ大した事なんて無いんだから、映画はその日にしようぜ?…公開が最終日近いし」何て言葉を「だよな!」と鵜呑みにした俺がバカなだけなんだってのは今更だから、それはおいとくとして…。
◇◇◇
朝、外は風やら何やらで煩かったが、気持ちよく寝ていた、俺、瞬は母親の怒鳴り声で目が覚めた。
「瞬!!休みだからって何時まで寝ているの!?…朝ごはん食べちゃって!!片付かないんだから!!」
バアアンと俺の部屋のドアを勢いよく開け放なったお母様はその勢いのまま、まるで胸ぐらを掴まれるんじゃないかって顔でベット迄近付いてきた。
その形相に……うわあ、角が生えてる鬼のようだ。
実の母親の恐ろしい怒りに、素直な俺はついうっかり本音が出てしまった。
心の声だったのに………。
俺………素直だから。
「鬼婆…」
ちゃんと、ボソッと呟いたつもりが母さんにはしっかりと聞こえていた様で、先程よりも、もっと恐ろしい顔になっていた。
何時も疑問に思うんだが、どうして聞いて欲しい事のスルースキルは高いのに、聞いてほしくない言葉だけは、繊細に拾い上げるんだ?
世の女性は全てこうなのか?
そう思うと若干違う意味でも恐ろしさが込み上げてくる。
「親に向かって鬼婆?……」
母さんの背後には、ゴゴゴゴオ!!!とまるで戦闘シーンの⚪王の様な背景が俺には確かに見えた。
「……そんな事、言ってません。お母様」
ベットの上で、つい正座をしてしまう。
「あなたのそんなところ、お父さんそっくりよ。……まったく、顔は私に似てるのに、中身は全部お父さん何だから……」
ぶちぶちと母さんは愚痴り始めた。
失敗した……こうなったら長いんだ。
あれ?…そう言えば俺………何か今日予定が有ったような?
基本、その場のノリで活きている俺は、その場の勢いと思い付きで約束事をしてしまうから、覚えていない事も多かった。
「そう言えば瞬、茂くんと今日映画に行くって無かった?」
ぶちぶち小言を言ったことで、怒りが収まって来たらしい母さんが、俺の疑問に答えてくれる。
「あ!」
急いでスマホを確認した俺は、今の時間を見て驚愕した。
確か……待ち合わせが9時半。
そして……今の時間が10時。
これは遅刻と言う奴じゃないか?
何て事だ!…俺は約束事は忘れるが、遅刻だけはしたことが無いんだよ!
「何で起こしてくれなかったんだよ!!母さん!!」
「はああ!?何回も起こしても起きなかったのは瞬でしょう!?…それに、この天候で出掛けるのは危険でしょう?!午後からもっと荒れるって言ってたわよ!…モーニングニュースで、風見キャスターが!」
朝のニュースで、お天気を担当している風見キャスターは、最近の母のお気に入りで、母さんは毎日欠かさずその時間だけはテレビを見ていた。
主婦層の人気獲得のために、お天気お姉さんならぬ、お天気お兄さんを採用している数少ないテレビ番組だ。
だが、遅れるという思いから、焦りがキャパオーバーになった俺には、もう母の声が聞こえてはいなかった。
きっと聞こえていたら俺の事だから「俺は女子アナのお姉さんの方が良い」と答えていた事だろう。
急いで身支度を整えると、階段を駆け下りた。
俺の愛車、瞬くん4号の鍵を探し玄関を飛び出る。
(ネーミングセンスの無さは、気にしないで頂きたい。無いものは無いのだからしょうがないのだ)
だけど、愛しい愛車のタイヤはパンクしていた。
そうだった。……バイトを頑張り、やっとの思いでお金を貯めて、手にいれた事が嬉しくて、バカみたいに乗り回して、ガキみたいな場所まで乗り入れて、そしてその日のうちに、パンクさせてしまった、俺の4号。
あまりにも腹が立ったから、直さずにそのままにしておいたのだ。
三輪車からカウントして、補助つき、ママチャリ、そしてこの4号迄と続くヒストリーは涙なくしては語れないから置いとくが、この4号はそんじゃそこらのチャリじゃない。
某自転車メーカーが社運を賭けて製作した肝いりだ。
お値段だって、バカ高い。
どうしても欲しくて……土下座しても、両親は首を縦には降ってくれなかった。
一生に一度だって言ったのに……。
話がそれてしまったが、自転車がないと足がない。
走って行くには距離がある。
さて困ったぞ、と思っていたら、お母様が生暖かい目をして、助け船を出してくれた。
「しょうがない子ね。私の自転車貸してあげるわよ」
この母のチャリとは、父さんと母さんが夫婦喧嘩した時に、詫びのしるしにと、母さんが父さんに買わせた曰く付きの電動機つき自転車だった。
~あの日、父さんは、下を向き……そっと独り男泣きしていた~
正直……ママチャリよりカッコ悪いが背に腹は代えられない。
最早映画館に到着することが目的になってしまった俺は、茂に連絡することも忘れて電動機つき自転車に股がり恐ろしいスピードで風を切っていた。
驚いた事に、母さんの電動機つき自転車は思いの外快適でスピードもそこそこ出ている
風だって吹いていたのに物ともせず、という奴だ。
感覚としては俺の4号に引けを取らない程。(そんな筈は無いのに……この時の俺は流石電動機!!と信じて疑っていなかった)
映画館の入っているショッピングモール迄着くと、こんな天気だからか、駐車場は疎らだった。
そう言えば、こんなに人がいないのは初めてでは無いだろうか?
駐車場が疎らなら、当然駐輪場も勿論空いていて止め放題だった。
良かった、何時もなら何処に停めようか迷うところだったから。
そこで初めて、茂に連絡をしていない事を思い出した俺は、雨が振りだした駐輪場を後に映画館側の自動ドア入り口風除室内で電話をかけた。
5回のコールの後に茂が電話に出た。
「もしもし?茂、わりー寝坊して今映画館に着いた」
「瞬、お前ラ⚪ン見てないのか?……予想以上に台風がヤバそうだから今日は中止でって、早めに連絡入れといたろ?」
「は?…いや、見てねーし」
「見てみろよ!ちゃんと送ったぞ、俺は」
茂と会話をした後、すかさずスマホを確認した俺は、茂の言葉の正しさを肯定せざるおえなかった。
急ぎすぎて、慌てすぎて何時もなら確認してたのに、今日に限って確認を怠るなんて。
やっぱり、今日の俺は少しおかしいのだろうか?
それでも意地になっている俺は映画を見て帰る事にしたのだ。
◇◇◇
「見るんじゃ無かった……」
確かこの映画は前評判がかなり良かった筈だ。
だから、俺も茂も見てみようか?ってなった訳で。
誰だよ?……この映画を評価した奴?
基本的に俺はハッピーエンドしか認めていない。
どうせ見るなら、最後は笑いたい。
それなのに、だ。
この映画はバットエンド。
「何だよ!…俺なら絶対にハッピーエンドにするのに……何であいつがあそこで死ななきゃならなかったんだ?」
そう呟いた。
映画館だから辺りは薄暗く、しかもこんな天気に映画に来ようなんておバカさんは俺ぐらいで、他人に聞かれる心配何て無かったから、気が緩んだろう。
「お兄ちゃんなら、ハッピーエンドに出来るの?」
まさか俺の呟いた言葉に返答があるなんて思わないじゃないか。
ビックリした俺は、声のする方をバッと振り向いた。
「あれ?いない?」
「下だよ、下!」
ご丁寧に声の主は俺に居場所を教えてくれた……。だが、その声の主のいた場所がよくない。
俺の座っている椅子の隣の席の足元に踞っているから、幽霊かと思い危うく悲鳴をあげる所だった。
しかも足元の方が暗いしね。
余計見えないし。
でも、よく見たら足あるし。喋れるし。
「チビ助。お前何でこんなところにいるんだよ?……かーちゃんはどうした?……まさか一人で来たわけじゃ無いだろう?」
「僕が先に質問したんだよ?」
生意気にもこの何処かで見たことが有るような、その辺にごろごろ居そうなガキは俺の問いかけを無視して言ってくる。
だが、何故かこの時の俺は{それもそうか…}と思ってしまい律儀に答えた。
「まあ、お兄ちゃんなら、当然ハッピーエンドにしてやるさ!」
「そっか……」
チビ助は一人で嬉しそうに納得すると突然ちょっと頭が悪い子の様な発言をしたのだ。
だから、{何が、そっか……だよ!?}
「じゃあ、お兄ちゃんの力でハッピーエンドにしてきてくれる?」
チビ助の言葉が早いか光が早いかという僅差で、俺は眩い光に包まれた。
余りの驚きで言葉すら出ない俺とは違い、既に光で姿は見えないチビ助は、のほほんとした言葉で
「じゃあ宜しくね✨……ああ、自転車は特別に一緒に飛ばしてあげるね!…特別だよ?」
と言いやがったのだ。
何が特別だよ?、だ!!!
訳が解らなかったが、多分俺は大変面倒くさい事に巻き込まれた事だけは辛うじて理解した。
何処が?って聞かれると難しいが、色々とおかしかったんだ。
いや、台風がくることは天気予報が言ってたし?…そんな日に親友の茂が「台風って言ったって、どうせ大した事なんて無いんだから、映画はその日にしようぜ?…公開が最終日近いし」何て言葉を「だよな!」と鵜呑みにした俺がバカなだけなんだってのは今更だから、それはおいとくとして…。
◇◇◇
朝、外は風やら何やらで煩かったが、気持ちよく寝ていた、俺、瞬は母親の怒鳴り声で目が覚めた。
「瞬!!休みだからって何時まで寝ているの!?…朝ごはん食べちゃって!!片付かないんだから!!」
バアアンと俺の部屋のドアを勢いよく開け放なったお母様はその勢いのまま、まるで胸ぐらを掴まれるんじゃないかって顔でベット迄近付いてきた。
その形相に……うわあ、角が生えてる鬼のようだ。
実の母親の恐ろしい怒りに、素直な俺はついうっかり本音が出てしまった。
心の声だったのに………。
俺………素直だから。
「鬼婆…」
ちゃんと、ボソッと呟いたつもりが母さんにはしっかりと聞こえていた様で、先程よりも、もっと恐ろしい顔になっていた。
何時も疑問に思うんだが、どうして聞いて欲しい事のスルースキルは高いのに、聞いてほしくない言葉だけは、繊細に拾い上げるんだ?
世の女性は全てこうなのか?
そう思うと若干違う意味でも恐ろしさが込み上げてくる。
「親に向かって鬼婆?……」
母さんの背後には、ゴゴゴゴオ!!!とまるで戦闘シーンの⚪王の様な背景が俺には確かに見えた。
「……そんな事、言ってません。お母様」
ベットの上で、つい正座をしてしまう。
「あなたのそんなところ、お父さんそっくりよ。……まったく、顔は私に似てるのに、中身は全部お父さん何だから……」
ぶちぶちと母さんは愚痴り始めた。
失敗した……こうなったら長いんだ。
あれ?…そう言えば俺………何か今日予定が有ったような?
基本、その場のノリで活きている俺は、その場の勢いと思い付きで約束事をしてしまうから、覚えていない事も多かった。
「そう言えば瞬、茂くんと今日映画に行くって無かった?」
ぶちぶち小言を言ったことで、怒りが収まって来たらしい母さんが、俺の疑問に答えてくれる。
「あ!」
急いでスマホを確認した俺は、今の時間を見て驚愕した。
確か……待ち合わせが9時半。
そして……今の時間が10時。
これは遅刻と言う奴じゃないか?
何て事だ!…俺は約束事は忘れるが、遅刻だけはしたことが無いんだよ!
「何で起こしてくれなかったんだよ!!母さん!!」
「はああ!?何回も起こしても起きなかったのは瞬でしょう!?…それに、この天候で出掛けるのは危険でしょう?!午後からもっと荒れるって言ってたわよ!…モーニングニュースで、風見キャスターが!」
朝のニュースで、お天気を担当している風見キャスターは、最近の母のお気に入りで、母さんは毎日欠かさずその時間だけはテレビを見ていた。
主婦層の人気獲得のために、お天気お姉さんならぬ、お天気お兄さんを採用している数少ないテレビ番組だ。
だが、遅れるという思いから、焦りがキャパオーバーになった俺には、もう母の声が聞こえてはいなかった。
きっと聞こえていたら俺の事だから「俺は女子アナのお姉さんの方が良い」と答えていた事だろう。
急いで身支度を整えると、階段を駆け下りた。
俺の愛車、瞬くん4号の鍵を探し玄関を飛び出る。
(ネーミングセンスの無さは、気にしないで頂きたい。無いものは無いのだからしょうがないのだ)
だけど、愛しい愛車のタイヤはパンクしていた。
そうだった。……バイトを頑張り、やっとの思いでお金を貯めて、手にいれた事が嬉しくて、バカみたいに乗り回して、ガキみたいな場所まで乗り入れて、そしてその日のうちに、パンクさせてしまった、俺の4号。
あまりにも腹が立ったから、直さずにそのままにしておいたのだ。
三輪車からカウントして、補助つき、ママチャリ、そしてこの4号迄と続くヒストリーは涙なくしては語れないから置いとくが、この4号はそんじゃそこらのチャリじゃない。
某自転車メーカーが社運を賭けて製作した肝いりだ。
お値段だって、バカ高い。
どうしても欲しくて……土下座しても、両親は首を縦には降ってくれなかった。
一生に一度だって言ったのに……。
話がそれてしまったが、自転車がないと足がない。
走って行くには距離がある。
さて困ったぞ、と思っていたら、お母様が生暖かい目をして、助け船を出してくれた。
「しょうがない子ね。私の自転車貸してあげるわよ」
この母のチャリとは、父さんと母さんが夫婦喧嘩した時に、詫びのしるしにと、母さんが父さんに買わせた曰く付きの電動機つき自転車だった。
~あの日、父さんは、下を向き……そっと独り男泣きしていた~
正直……ママチャリよりカッコ悪いが背に腹は代えられない。
最早映画館に到着することが目的になってしまった俺は、茂に連絡することも忘れて電動機つき自転車に股がり恐ろしいスピードで風を切っていた。
驚いた事に、母さんの電動機つき自転車は思いの外快適でスピードもそこそこ出ている
風だって吹いていたのに物ともせず、という奴だ。
感覚としては俺の4号に引けを取らない程。(そんな筈は無いのに……この時の俺は流石電動機!!と信じて疑っていなかった)
映画館の入っているショッピングモール迄着くと、こんな天気だからか、駐車場は疎らだった。
そう言えば、こんなに人がいないのは初めてでは無いだろうか?
駐車場が疎らなら、当然駐輪場も勿論空いていて止め放題だった。
良かった、何時もなら何処に停めようか迷うところだったから。
そこで初めて、茂に連絡をしていない事を思い出した俺は、雨が振りだした駐輪場を後に映画館側の自動ドア入り口風除室内で電話をかけた。
5回のコールの後に茂が電話に出た。
「もしもし?茂、わりー寝坊して今映画館に着いた」
「瞬、お前ラ⚪ン見てないのか?……予想以上に台風がヤバそうだから今日は中止でって、早めに連絡入れといたろ?」
「は?…いや、見てねーし」
「見てみろよ!ちゃんと送ったぞ、俺は」
茂と会話をした後、すかさずスマホを確認した俺は、茂の言葉の正しさを肯定せざるおえなかった。
急ぎすぎて、慌てすぎて何時もなら確認してたのに、今日に限って確認を怠るなんて。
やっぱり、今日の俺は少しおかしいのだろうか?
それでも意地になっている俺は映画を見て帰る事にしたのだ。
◇◇◇
「見るんじゃ無かった……」
確かこの映画は前評判がかなり良かった筈だ。
だから、俺も茂も見てみようか?ってなった訳で。
誰だよ?……この映画を評価した奴?
基本的に俺はハッピーエンドしか認めていない。
どうせ見るなら、最後は笑いたい。
それなのに、だ。
この映画はバットエンド。
「何だよ!…俺なら絶対にハッピーエンドにするのに……何であいつがあそこで死ななきゃならなかったんだ?」
そう呟いた。
映画館だから辺りは薄暗く、しかもこんな天気に映画に来ようなんておバカさんは俺ぐらいで、他人に聞かれる心配何て無かったから、気が緩んだろう。
「お兄ちゃんなら、ハッピーエンドに出来るの?」
まさか俺の呟いた言葉に返答があるなんて思わないじゃないか。
ビックリした俺は、声のする方をバッと振り向いた。
「あれ?いない?」
「下だよ、下!」
ご丁寧に声の主は俺に居場所を教えてくれた……。だが、その声の主のいた場所がよくない。
俺の座っている椅子の隣の席の足元に踞っているから、幽霊かと思い危うく悲鳴をあげる所だった。
しかも足元の方が暗いしね。
余計見えないし。
でも、よく見たら足あるし。喋れるし。
「チビ助。お前何でこんなところにいるんだよ?……かーちゃんはどうした?……まさか一人で来たわけじゃ無いだろう?」
「僕が先に質問したんだよ?」
生意気にもこの何処かで見たことが有るような、その辺にごろごろ居そうなガキは俺の問いかけを無視して言ってくる。
だが、何故かこの時の俺は{それもそうか…}と思ってしまい律儀に答えた。
「まあ、お兄ちゃんなら、当然ハッピーエンドにしてやるさ!」
「そっか……」
チビ助は一人で嬉しそうに納得すると突然ちょっと頭が悪い子の様な発言をしたのだ。
だから、{何が、そっか……だよ!?}
「じゃあ、お兄ちゃんの力でハッピーエンドにしてきてくれる?」
チビ助の言葉が早いか光が早いかという僅差で、俺は眩い光に包まれた。
余りの驚きで言葉すら出ない俺とは違い、既に光で姿は見えないチビ助は、のほほんとした言葉で
「じゃあ宜しくね✨……ああ、自転車は特別に一緒に飛ばしてあげるね!…特別だよ?」
と言いやがったのだ。
何が特別だよ?、だ!!!
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