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第一章桃チャンの世界…俺がまるっとハッピーエンドにしてやるぜ!
第8話桃太郎と鬼退治。俺の明日はどっちだ!?
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昔、まだ鬼とのはお互いを尊重しあいながら暮らしていた。
「人は知識を鬼の為に使い
鬼は力を人の為に使い
互いに欠点を補うことで
その村は他の村より遥かに栄えていた。
ある日、村の方向性がきっかけで口論となり、村長が村人を殺めてしまう。
そこに偶然居合わせた子供の鬼が
目撃してしまった事が悲劇の始まりだった。
すべての罪を小鬼にきせて処刑しようとする村長。
猛反発する鬼側、
人殺しと鬼を罵る人側とで
意見が交わる事はなかった。
日々状況が悪くなる村をみて
血が流れなければこの場が収まらないと判断した、当時の『黒鬼』が立ち上がった。
(黒鬼とは鬼の中で一番力の強い頭領の様な存在だと、美景さんは教えてくれた。しかし、羅刹のおっさんは自分を黒鬼だと言ってなかったか?)
人と鬼全員を集め話し出す。
『人も鬼も関係ない、幸せも喜びも悲しみも怒りも一緒なんだ。
だから人が死んだから鬼も殺せなんて悲しい事はもう今回限りにしてくれないか?
鬼の力は決して人を殺める為にあるわけじゃない、怒りに負けないでくれ!
大丈夫、あなた達の悲しみもお前達の怒りも俺が一緒に連れて逝くから。』
そう言うと息子(羅刹)に魂神角を託すと
黒鬼は自ら命を絶ったのだった。
(幸は神妙に聞いていたが、俺は絶句した。……だってそうだろう?……これって羅刹のおっちゃんの親父の話何だから)
その以降鬼と人との関係は修復していった、かのように見えた。
真実を知っている小鬼が生きていては困る村長は、
小鬼を殺めてしまったのだ。
真実を隠す為に………。
黒鬼との約束の糸が切れた
鬼が『本当の鬼』になった
鬼と人とが決別した日になった、、
黒鬼の願いは人々の血で流されていく」
◇◇◇
「………」
「………」
俺と幸は何も言うことが出来なかった。
片方だけの意見を信じるのは民主主義に反する。
でも、美景さんの話からは嘘を微塵も感じなかった。
だとしたら?
だとしたら、どうしてチビ助は俺に桃太郎と鬼退治をしろ何て言ったんだ?
寧ろ…罰っせられるべきは人間では無いのか?
「これが私が知っている話よ。……当時まだ私は小さな子供だったけれど、ずっと争う鬼と人間を見てきたわ。
でもね、誤解しないで欲しいの。私も、そして羅刹様も人間の全てを恨んでいる訳では無いわ。……人の中には、心根の優しい方もいるのだから」
「それが、倫太郎さんのお父様ですか?」
幸が聞いた。
こんな時、女の子の方が勘が鋭かったりするのだ。
顔を少し紅くしながら、美景さんが「そうね」と優しい顔をした。
「私の母も………父を優しいと感じたから夫婦になったのでしょうか?」
美景さんに聞いたところで、本当の答えにたどり着くとは、勿論、幸は考えていないのだろう。
ただ、聞かないではいられなかった。
もう、答えを聞くことは永久に叶わないから。
鬼がどうとか言うより、そちらを幸は聞きたかったのかも知れない。
母は自分を産んで後悔していなかったかを。
「私は、お母様の心の全てを解りはしないでしょう。ただ、同じ女として、お母様は種族の壁を越えてでも愛しいと思う人に出逢えたと言う事だけは解るわ」
「有り難うございます」
俺と幸は、美景さんと倫太郎別れを告げると二人の家を後にした。
その時、持っていたきび団子を倫太郎にあげると、嬉しそうに何度も、何度もお礼を言っていた姿は、普通の子供と何ら違いなんて無かったんだ。
俺の(母ちゃんの)自転車に興味津々な倫太郎に今度会ったときに自転車に乗せてやると約束をして………。
◇◇◇
俺達は一番近い山向こうの村まで辿り着くと、信じられない話を聞いてしまった。
それは、桃太郎が山に住む赤鬼を退治しに向かったと言う物だった。
俺も、幸も頭の中が真っ白になったけど、美景さんと倫太郎が住む山に急いで戻った。
自転車を力一杯漕いで漕いで漕いで、何でこんなにペダルが重いんだ!?
何でもっとスピードが出ないんだ!?って、そう思い、二人の無事を心から願いながら、俺は急いだ。
やっとの思いで辿り着いた俺達の目の前には、羅刹のおっさんが、美景さん達の家を黙って見詰めてた。
羅刹のおっさんは………、
目の前の様子をただ唖然と観ていた。
手にした刀を強く、強く握り締めながら。
羅刹のおっさんは俺達に気付いてはいないようだった。其ほどに目の前の情景に羅刹は釘付けになっていたのだ。
あんなにも、全意識を幸に注いで生きているおっさんがだ。
瞬達も羅刹が見ている方へ視線を向けた。
そこには血を大量に流しながらも倫太郎を抱き締め倒れている美景さんと…………、
その前に返り血で真っ赤になった日本刀を持っている青年がいたのだ。
瞬も思わず息を潜めてしまうほど
青年の表情は鬼の表情だったからだ。
それを見ていた幸がひゅっと息を飲むのを感じたが、俺も色々な感情がごちゃ混ぜで、何も言えなくて、何も考えられなくて。
「美景……」
その幸の声で俺達を認識した羅刹は一瞬とても驚くと、刹那……幸を抱き抱え走り去っていったのだ。
咄嗟の事に俺は、何が起こっているのか頭のなかで整理が出来ずにいた。
追い掛ける事も、声を掛ける事も出来なかった。
ただ、おっさん達が走り去って行った方向を見つめるだけしか出来なくて。
「あれ、まだいたんですか?……やだなあ、鬼は全員退治したと思ったのに……」
その言葉で俺の中で一つの答えが導き出された。
この男が、
「桃……」
こちらに向かってくる青年の方にゆっくり振り替えると、
「人じゃないですか!
大丈夫ですよ、もう赤鬼は退治しましたから」
先程の表情からは想像出来ない声に
ビックリしたが、
更にビックリしたのが青年の表情である
恐ろしく柔らかな表情だった。
天使がこの世にいるのなら、彼みたいな優しい顔をしてるんだろうな…とさえ思えるほどに無邪気で、慈愛に満ちた表情に恐怖すら覚えたんだ。
綺麗に作られた人形はこんな感じだろうか?
そんなどうでもいい事すら、考えていた。
「私は桃太郎といいます。……貴方が無事で良かった」
瞬が桃太郎と出会った瞬間であった。
ヤバい、ヤバいヤバい、こいつはヤバイ。
俺の本能がそう告げている。
でも、それ以上に聞かずにはいられなくて
「なあ、何でその人達をあんたは殺したんだ?」
自分でも驚くほど無機質な声が出てきた。
「何で……?可笑しな事を言いますね。……鬼だからです。……鬼が出たから、退治した迄ですよ、当然でしょう?」
桃太郎は純粋に疑問に感じている、少なくとも俺にはそう思えた。
風が気持ちよくて、木々の緑と畑のコントラストが綺麗で、俺と幸が、少し前にいた筈のこの暖かな空間。
今は、血の赤が……美しかった空間を全て壊していた。
「何で、子供まで殺した?……その子は人間とのハーフだろ?」
頭に血が登っていた俺は、この世界の言葉ではなく、俺の生まれ育った世界の言葉を話している事にすら気付かなかった。
「ハーフ?…ああ、合の子と言う意味ですか?……でも、半分は鬼の汚れた血が入っているでしょう?…その赤鬼に通じた愚かで、罪深い人間にも同様の裁きが相応しいと思いませんか?」
ああ、こいつは頭の回路が何本も切れているサイコな奴だ。
でも、こいつチビ助が言っていた桃太郎だ。なあ、俺はどうすれば良いんだ?
誰も答えてはくれない、問い掛けを何度も問い掛けた。
駄目だ、今はそんな事を考えるな。
美景さんと、倫太郎が先なのだから。
二人にふらふら近付く俺に、桃太郎は不快感を表わにしていたが、俺が人間だからか、それ以上は何も干渉して来なかった。
二人に近付くと、蒸せかえる様な血の臭いで吐き気がした。
美景さんは、きっと最後まで倫太郎を守ったんだろう、何ヵ所も、何ヵ所も刺されていた。
目がもう光を失っている。
彼女は……………………死んでいる。
倫太郎は?
まだ硬直していない美景さんから倫太郎を抱き起こした。
生きていてくれ。
どんな形でも、生きていてくれ。
お前だけは、生きていて欲しい。
美景さんが命を掛けて守ったのだから、絶対に死んでくれるな!
俺は祈った。
この世界に飛ばされて直ぐだってこんなに願った事は無いほど、強く念じた。
神様が本当にいるのなら、助けて欲しい。
祈れば祈るほど、願えば願うほど、美景さんの笑顔が、倫太郎の笑い声が頭の中に聞こえてくる。
俺に力が有るのなら、助けるのに。
いつまでそうして抱き締めていただろう?
いつの間にか、桃太郎はいなくなっていた。
その事にすら気付かずに、俺は美景さんの手を握り、倫太郎を抱き締め続けていた。
最初にピクリと動いたのは倫太郎の瞼だった。 頬を擦ると手を少し動かした。
生きてる!生きてる!生きてくれていた。
倫太郎の呼吸を顔を当てて確認した。
大丈夫だ、荒くない。呼吸も寝ている時と同じくらいだ。
俺は神様を信じたよ。
鼻水と涙とぐちゃぐちゃをなりながら、
今度からは、くそチビ何て呼ばずに敬うよと空に向かって呼び掛けた。
そんな時だった。
今まで光を失って固くなっていた美景さんの目が光を帯びてきたのは。
「美景………さん?」
俺は呼び掛けた。
まさかな、そんな半信半疑の中で、それでも希望を込めて俺は彼女を呼び続けた。
「あら、男の子なのに泣き虫ね。……倫太郎とおなじだわ」
俺の呼び声に彼女は答えた。
「人は知識を鬼の為に使い
鬼は力を人の為に使い
互いに欠点を補うことで
その村は他の村より遥かに栄えていた。
ある日、村の方向性がきっかけで口論となり、村長が村人を殺めてしまう。
そこに偶然居合わせた子供の鬼が
目撃してしまった事が悲劇の始まりだった。
すべての罪を小鬼にきせて処刑しようとする村長。
猛反発する鬼側、
人殺しと鬼を罵る人側とで
意見が交わる事はなかった。
日々状況が悪くなる村をみて
血が流れなければこの場が収まらないと判断した、当時の『黒鬼』が立ち上がった。
(黒鬼とは鬼の中で一番力の強い頭領の様な存在だと、美景さんは教えてくれた。しかし、羅刹のおっさんは自分を黒鬼だと言ってなかったか?)
人と鬼全員を集め話し出す。
『人も鬼も関係ない、幸せも喜びも悲しみも怒りも一緒なんだ。
だから人が死んだから鬼も殺せなんて悲しい事はもう今回限りにしてくれないか?
鬼の力は決して人を殺める為にあるわけじゃない、怒りに負けないでくれ!
大丈夫、あなた達の悲しみもお前達の怒りも俺が一緒に連れて逝くから。』
そう言うと息子(羅刹)に魂神角を託すと
黒鬼は自ら命を絶ったのだった。
(幸は神妙に聞いていたが、俺は絶句した。……だってそうだろう?……これって羅刹のおっちゃんの親父の話何だから)
その以降鬼と人との関係は修復していった、かのように見えた。
真実を知っている小鬼が生きていては困る村長は、
小鬼を殺めてしまったのだ。
真実を隠す為に………。
黒鬼との約束の糸が切れた
鬼が『本当の鬼』になった
鬼と人とが決別した日になった、、
黒鬼の願いは人々の血で流されていく」
◇◇◇
「………」
「………」
俺と幸は何も言うことが出来なかった。
片方だけの意見を信じるのは民主主義に反する。
でも、美景さんの話からは嘘を微塵も感じなかった。
だとしたら?
だとしたら、どうしてチビ助は俺に桃太郎と鬼退治をしろ何て言ったんだ?
寧ろ…罰っせられるべきは人間では無いのか?
「これが私が知っている話よ。……当時まだ私は小さな子供だったけれど、ずっと争う鬼と人間を見てきたわ。
でもね、誤解しないで欲しいの。私も、そして羅刹様も人間の全てを恨んでいる訳では無いわ。……人の中には、心根の優しい方もいるのだから」
「それが、倫太郎さんのお父様ですか?」
幸が聞いた。
こんな時、女の子の方が勘が鋭かったりするのだ。
顔を少し紅くしながら、美景さんが「そうね」と優しい顔をした。
「私の母も………父を優しいと感じたから夫婦になったのでしょうか?」
美景さんに聞いたところで、本当の答えにたどり着くとは、勿論、幸は考えていないのだろう。
ただ、聞かないではいられなかった。
もう、答えを聞くことは永久に叶わないから。
鬼がどうとか言うより、そちらを幸は聞きたかったのかも知れない。
母は自分を産んで後悔していなかったかを。
「私は、お母様の心の全てを解りはしないでしょう。ただ、同じ女として、お母様は種族の壁を越えてでも愛しいと思う人に出逢えたと言う事だけは解るわ」
「有り難うございます」
俺と幸は、美景さんと倫太郎別れを告げると二人の家を後にした。
その時、持っていたきび団子を倫太郎にあげると、嬉しそうに何度も、何度もお礼を言っていた姿は、普通の子供と何ら違いなんて無かったんだ。
俺の(母ちゃんの)自転車に興味津々な倫太郎に今度会ったときに自転車に乗せてやると約束をして………。
◇◇◇
俺達は一番近い山向こうの村まで辿り着くと、信じられない話を聞いてしまった。
それは、桃太郎が山に住む赤鬼を退治しに向かったと言う物だった。
俺も、幸も頭の中が真っ白になったけど、美景さんと倫太郎が住む山に急いで戻った。
自転車を力一杯漕いで漕いで漕いで、何でこんなにペダルが重いんだ!?
何でもっとスピードが出ないんだ!?って、そう思い、二人の無事を心から願いながら、俺は急いだ。
やっとの思いで辿り着いた俺達の目の前には、羅刹のおっさんが、美景さん達の家を黙って見詰めてた。
羅刹のおっさんは………、
目の前の様子をただ唖然と観ていた。
手にした刀を強く、強く握り締めながら。
羅刹のおっさんは俺達に気付いてはいないようだった。其ほどに目の前の情景に羅刹は釘付けになっていたのだ。
あんなにも、全意識を幸に注いで生きているおっさんがだ。
瞬達も羅刹が見ている方へ視線を向けた。
そこには血を大量に流しながらも倫太郎を抱き締め倒れている美景さんと…………、
その前に返り血で真っ赤になった日本刀を持っている青年がいたのだ。
瞬も思わず息を潜めてしまうほど
青年の表情は鬼の表情だったからだ。
それを見ていた幸がひゅっと息を飲むのを感じたが、俺も色々な感情がごちゃ混ぜで、何も言えなくて、何も考えられなくて。
「美景……」
その幸の声で俺達を認識した羅刹は一瞬とても驚くと、刹那……幸を抱き抱え走り去っていったのだ。
咄嗟の事に俺は、何が起こっているのか頭のなかで整理が出来ずにいた。
追い掛ける事も、声を掛ける事も出来なかった。
ただ、おっさん達が走り去って行った方向を見つめるだけしか出来なくて。
「あれ、まだいたんですか?……やだなあ、鬼は全員退治したと思ったのに……」
その言葉で俺の中で一つの答えが導き出された。
この男が、
「桃……」
こちらに向かってくる青年の方にゆっくり振り替えると、
「人じゃないですか!
大丈夫ですよ、もう赤鬼は退治しましたから」
先程の表情からは想像出来ない声に
ビックリしたが、
更にビックリしたのが青年の表情である
恐ろしく柔らかな表情だった。
天使がこの世にいるのなら、彼みたいな優しい顔をしてるんだろうな…とさえ思えるほどに無邪気で、慈愛に満ちた表情に恐怖すら覚えたんだ。
綺麗に作られた人形はこんな感じだろうか?
そんなどうでもいい事すら、考えていた。
「私は桃太郎といいます。……貴方が無事で良かった」
瞬が桃太郎と出会った瞬間であった。
ヤバい、ヤバいヤバい、こいつはヤバイ。
俺の本能がそう告げている。
でも、それ以上に聞かずにはいられなくて
「なあ、何でその人達をあんたは殺したんだ?」
自分でも驚くほど無機質な声が出てきた。
「何で……?可笑しな事を言いますね。……鬼だからです。……鬼が出たから、退治した迄ですよ、当然でしょう?」
桃太郎は純粋に疑問に感じている、少なくとも俺にはそう思えた。
風が気持ちよくて、木々の緑と畑のコントラストが綺麗で、俺と幸が、少し前にいた筈のこの暖かな空間。
今は、血の赤が……美しかった空間を全て壊していた。
「何で、子供まで殺した?……その子は人間とのハーフだろ?」
頭に血が登っていた俺は、この世界の言葉ではなく、俺の生まれ育った世界の言葉を話している事にすら気付かなかった。
「ハーフ?…ああ、合の子と言う意味ですか?……でも、半分は鬼の汚れた血が入っているでしょう?…その赤鬼に通じた愚かで、罪深い人間にも同様の裁きが相応しいと思いませんか?」
ああ、こいつは頭の回路が何本も切れているサイコな奴だ。
でも、こいつチビ助が言っていた桃太郎だ。なあ、俺はどうすれば良いんだ?
誰も答えてはくれない、問い掛けを何度も問い掛けた。
駄目だ、今はそんな事を考えるな。
美景さんと、倫太郎が先なのだから。
二人にふらふら近付く俺に、桃太郎は不快感を表わにしていたが、俺が人間だからか、それ以上は何も干渉して来なかった。
二人に近付くと、蒸せかえる様な血の臭いで吐き気がした。
美景さんは、きっと最後まで倫太郎を守ったんだろう、何ヵ所も、何ヵ所も刺されていた。
目がもう光を失っている。
彼女は……………………死んでいる。
倫太郎は?
まだ硬直していない美景さんから倫太郎を抱き起こした。
生きていてくれ。
どんな形でも、生きていてくれ。
お前だけは、生きていて欲しい。
美景さんが命を掛けて守ったのだから、絶対に死んでくれるな!
俺は祈った。
この世界に飛ばされて直ぐだってこんなに願った事は無いほど、強く念じた。
神様が本当にいるのなら、助けて欲しい。
祈れば祈るほど、願えば願うほど、美景さんの笑顔が、倫太郎の笑い声が頭の中に聞こえてくる。
俺に力が有るのなら、助けるのに。
いつまでそうして抱き締めていただろう?
いつの間にか、桃太郎はいなくなっていた。
その事にすら気付かずに、俺は美景さんの手を握り、倫太郎を抱き締め続けていた。
最初にピクリと動いたのは倫太郎の瞼だった。 頬を擦ると手を少し動かした。
生きてる!生きてる!生きてくれていた。
倫太郎の呼吸を顔を当てて確認した。
大丈夫だ、荒くない。呼吸も寝ている時と同じくらいだ。
俺は神様を信じたよ。
鼻水と涙とぐちゃぐちゃをなりながら、
今度からは、くそチビ何て呼ばずに敬うよと空に向かって呼び掛けた。
そんな時だった。
今まで光を失って固くなっていた美景さんの目が光を帯びてきたのは。
「美景………さん?」
俺は呼び掛けた。
まさかな、そんな半信半疑の中で、それでも希望を込めて俺は彼女を呼び続けた。
「あら、男の子なのに泣き虫ね。……倫太郎とおなじだわ」
俺の呼び声に彼女は答えた。
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