H・E・ S~せっかく桃太郎の世界に来たので逆に桃太郎を退治したいと思います~

D×H

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第一章桃チャンの世界…俺がまるっとハッピーエンドにしてやるぜ!

第12話ちょっと、昔話が重すぎるんですけど

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俺は、話を聞いて違和感を覚えた。

何故、急に母親が黄楊を殺そうとした?
解らないことだらけだ。
何かがおかしいが、とても黄楊に訪ねられる内容じゃない。
黄楊が嘘を付いてるとは思わないが、何か、見落としている真実が有るんじゃないか?

そもそも………村長とは誰だ?
何故、そいつが来てから、黄楊の母親はおかしくなったんだ?

俺が真剣に考えていると、ちゃっかり、しっかりと自転車の荷台に荷物宜しく座っていた桃太郎は、その自転車の荷台から飛び降り、自身の懐から一枚の紙を出して、黄楊に見せた。
俺がいくら降りろと言っても聞かなかった癖に、だ。

「村長……と名乗った男は、この男じゃ無かったか?」 

俺もその紙を覗き見て、思わず絶句してしまった。
何故なら、その紙に描かれていた男は、羅刹のおっさんだったから。
俺が驚いている間にも、黄楊が紙を見て、「この男です」と桃太郎に返事をした。

嫌な予感がしてならない。
羅刹だと解ってからの桃太郎の表情は固く、いつもの優男風では完全に無くなってしまっていたから……。

それにしても…上手いな、この絵。
もしかしなくても、桃太郎が描いたのだろうか?
顔が良くて、黒く髪はさらさらストレートで、おまけに強いんだろ?
何だよ、神様は公平じゃ無いな。
せめて、顔は今のままで良いから髪質はストレートが良かった。
せめて天パは治りたい。
いや、別に病気じゃないんだが。

ずっと立ち止まってばかりもいられないので、取り敢えず歩きだした俺と猿(黄楊何て猿で十分だ。愛嬌も有るし、すばしっこいしね)と桃太郎だが、全員が無口だった。

せっかくの綺麗な大自然が勿体無い位、桃太郎には景色何て見えていない様だった。
ったく、羅刹のおっさんと何があったんだよ。
俺が知る限り、羅刹のおっさんはそんなに嫌な男じゃない。
恨まれるタイプでも無いように思う。

でも、突っ込んで聞けない雰囲気だよな。

やっぱり、肝心なところでチキンな俺は桃太郎に確認できないでいた。

「桃太郎さん、桃太郎さんは俺の村に訪ねてきた村長と青鬼をご存知何ですか?」

はい、黄楊!空気読もうね!☆
俺が考えに考えて言えずにいた事をズバッと聞いてしまった猿は、やはり頭も猿なのか。…それでも、考えすぎて動けない俺よりはよっぽど良いのだろう。

さて、桃太郎の返答は?
俺は自転車を手で押しながら、隣を歩く桃太郎の様子を盗み見た。

「……」

黙りだ。
まあ、無理も無いか。

俺は、血だらけの美景さんと倫太郎を思い出していた。…怨恨がなければ、あんな殺し方は出来ないだろう。
それも、美景さん達と面識がない、ただ同じ鬼と言うだけで、彼女達は一度……殺されたんだ。

それにしても、俺も良くあんな場面を見てこいつに付いて行こう何て考えたよな。
自分で、自分にビックリだ。
嫌いになれない相手、それが桃太郎だった。

俺が自分の考えでフリーズしていると、意外にも桃太郎はポツリと話し出した。

「……黒鬼は、羅刹は姉上の敵だ」

「えっ!?…お前、ねーちゃんいたの!?」

ビックリした俺は、自分が考えすぎて何も言えなかった事なんて、忘れて突っ込んでしまった。
俺も、まだガキだと言うことか。
黄楊の事なんて言えやしない。

「ああ。…綺麗で優しい、自慢の姉上だった。…それなのに、何故あんな男に嫁ぎ、死なねばならなかったのか!?」

あ~、成る程ね。
何となく解った。…十中八九、幸の母親は桃太郎のねーちゃんだろう。
人間の身内だから、おっさんは幸を桃太郎に会わせようとした。
でも、思った以上に桃太郎がイカれていたから、幸を連れて桃太郎から離れた。
多分、事情はこんなところか。

「何で、お前のねーちゃんは黒鬼に嫁いだんだ?」

「……解らない。…俺が小さい時に嫁いだから、理由を聞かされていない。…死んだ後も両親は悲しむだけで、口を告ぐんで答えない」

「……なら、何でそんなに憎んでいるんだ?……詳細や理由、聞かされて無いんだろ?」

たまらず突っ込んでしまった俺は、この時点で傍観者と言うポジションを永久に放棄してしまった。

世界にタイプ分なるものが存在するのなら、差し詰桃太郎は、何をやっても憎めないタイプ。
なら、俺は?
俺は、何にでも首を突っ込んでしまうタイプって奴かな。
さて、桃太郎はどう切り返してくるかな。

「……」

未だに無言を貫いている桃太郎を横目で盗み見る。

「……何も解らないさ。……解らないけど、姉さんの死に羅刹が絡んでいる事だけは確かだ。…奴のせいで一番大切な人を俺は永久に失ったんだ」

桃太郎をとっては、その姉さんが全てで世界その物だった。
そう言いきった桃太郎に、俺がこれ以上聞ける事も言える事もない無いんだと思い知らされる。

きっと、桃太郎から話を聞き出せる奴がいるとしたら、それは皮肉にも羅刹のおっさんだけなんだろう。

取り敢えずは、チビ助の事も有るし鬼退治しか帰る術は無いのだから、俺が出来ることなんてひとつだ。
もしも、真実を知って、俺が桃太郎の鬼退治を阻止したいと思ってしまったら、そのときはまた、違う方法を考えればいい。
俺は誰の事も死なせたくは無いのだから。
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