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不思議な世界
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夕暮れの光が木に溶け込むくらいのこと。学校の帰り道、1人ぽつりと石を足で転がしながらとぼとぼ歩いていたときのこと。転がる石を見つめながら歩いていたせいか、いつもと違う道に迷い込んでしまったことに気付いていなかったようだ。
「あれ、この道、どこだ?」
やけに懐かしさを覚える木々の群れが広がっていた。辺り一面の木陰に覆われた空間の中に、一際輝いて見える場所があった。よーく見ると、木漏れ日の中に木製の長椅子が置かれており、その椅子に腰掛ける少女らしい陰が一つ見えた。
「あのう……」
「あら?珍しいわね、こんなところに人が来るなんて」
「いきなりごめんなさい、実は学校から帰ってたら、いつの間にかここにいて……」
「うん、ここに来る人は決まってそう言うわ。いつの間にか……ってね」
「僕、家に帰りたいんです。どうすれば帰れますか?」
「お家に帰すのはとっても簡単。だけどすぐに帰しちゃ、私も退屈しちゃう。だから少しだけ、わたしとお話してもらえる?」
「わかりました」
「そうねえ、じゃあまず、あなたのお名前は?」
「僕は春流、卯月春流です」
「じゃあ春流くんと呼ぶわね。私は鈴音永遠って言います。まず、ここがどこなのかを説明するからよーく聞いててね。ここは、あなたの夢の中です。正確には、今を生きる人々みんなが見てる夢の集合体のようなもの。願えば何だって出てくる、まさに夢の世界なのよ。ほら、目を閉じて。欲しいものを願ってごらんなさい」
そう言われて僕は、家にあった読み途中の本が読みたい、と願ってみた。するといつの間にか僕の手には、今家にあるはずの本があった。
中を開いてみると、読めるようで読めない、日本語なはずなのに何故か頭に入ってこない不思議な文章が書いてあった。
「ふふ、驚いた?夢とは曖昧で虚ろで儚いものなのよ。だから本の表紙のようにイメージしやすいものは違和感なく作り出すことはできるけど、その中身はあなたがこうだといいな、という妄想で空虚のものにすぎない。でも、それでここが夢の世界だということが証明できたわね」
「本当に、夢の中なんですね……どうしたらここから出られるんですか?」
「さぁ、それはまだもう少し秘密。ひとつだけあなたに約束したいことがあるの。それを聞いてもらえるかしら」
「約束したいこと…?わかりました」
「まず、私はあなたの全てを認める。あなたが現世で人を殺しても、何を奪い、破壊しても全て赦すわ。だからあなたも約束してちょうだい。この世界でだけは、あなたも私も嘘をつかないで。夢の中で嘘をつけば、それが現実を壊してしまうかもしれないから」
「……?」
「今は何を言ってるかわからないかもしれない。けどいずれこれはあなたを助ける希望にも、あなたを殺す絶望にもなる。あなたにとってとても大切なことなのよ。だから約束だけでもしてちょうだい」
「わかりました、約束します」
永遠さんは満足そうに微笑んでいた。
「おや、もう時間だわ。帰り方はとっても簡単よ、目を閉じて、家に帰りたい、と想像して。そしてしばらく家の中で楽しいことをしているところを思い浮かべるの。あれこれ妄想してるうちにあなたはいつの間にか家の中にいるはずよ」
「わかりました。色んなことお話してくれてありがとうございました」
深く深く一礼しておいた。
「こちらこそ。楽しかったわ」
「それじゃあ」
そう言って僕は、静かに目を閉じた。
「あれ、この道、どこだ?」
やけに懐かしさを覚える木々の群れが広がっていた。辺り一面の木陰に覆われた空間の中に、一際輝いて見える場所があった。よーく見ると、木漏れ日の中に木製の長椅子が置かれており、その椅子に腰掛ける少女らしい陰が一つ見えた。
「あのう……」
「あら?珍しいわね、こんなところに人が来るなんて」
「いきなりごめんなさい、実は学校から帰ってたら、いつの間にかここにいて……」
「うん、ここに来る人は決まってそう言うわ。いつの間にか……ってね」
「僕、家に帰りたいんです。どうすれば帰れますか?」
「お家に帰すのはとっても簡単。だけどすぐに帰しちゃ、私も退屈しちゃう。だから少しだけ、わたしとお話してもらえる?」
「わかりました」
「そうねえ、じゃあまず、あなたのお名前は?」
「僕は春流、卯月春流です」
「じゃあ春流くんと呼ぶわね。私は鈴音永遠って言います。まず、ここがどこなのかを説明するからよーく聞いててね。ここは、あなたの夢の中です。正確には、今を生きる人々みんなが見てる夢の集合体のようなもの。願えば何だって出てくる、まさに夢の世界なのよ。ほら、目を閉じて。欲しいものを願ってごらんなさい」
そう言われて僕は、家にあった読み途中の本が読みたい、と願ってみた。するといつの間にか僕の手には、今家にあるはずの本があった。
中を開いてみると、読めるようで読めない、日本語なはずなのに何故か頭に入ってこない不思議な文章が書いてあった。
「ふふ、驚いた?夢とは曖昧で虚ろで儚いものなのよ。だから本の表紙のようにイメージしやすいものは違和感なく作り出すことはできるけど、その中身はあなたがこうだといいな、という妄想で空虚のものにすぎない。でも、それでここが夢の世界だということが証明できたわね」
「本当に、夢の中なんですね……どうしたらここから出られるんですか?」
「さぁ、それはまだもう少し秘密。ひとつだけあなたに約束したいことがあるの。それを聞いてもらえるかしら」
「約束したいこと…?わかりました」
「まず、私はあなたの全てを認める。あなたが現世で人を殺しても、何を奪い、破壊しても全て赦すわ。だからあなたも約束してちょうだい。この世界でだけは、あなたも私も嘘をつかないで。夢の中で嘘をつけば、それが現実を壊してしまうかもしれないから」
「……?」
「今は何を言ってるかわからないかもしれない。けどいずれこれはあなたを助ける希望にも、あなたを殺す絶望にもなる。あなたにとってとても大切なことなのよ。だから約束だけでもしてちょうだい」
「わかりました、約束します」
永遠さんは満足そうに微笑んでいた。
「おや、もう時間だわ。帰り方はとっても簡単よ、目を閉じて、家に帰りたい、と想像して。そしてしばらく家の中で楽しいことをしているところを思い浮かべるの。あれこれ妄想してるうちにあなたはいつの間にか家の中にいるはずよ」
「わかりました。色んなことお話してくれてありがとうございました」
深く深く一礼しておいた。
「こちらこそ。楽しかったわ」
「それじゃあ」
そう言って僕は、静かに目を閉じた。
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