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新たなる龍
レイラと光龍と
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『光龍神殿』
それは、霊峰アルカリオンがある大陸。その麓に位置している名所である。
名所ではあるが、交通の便が悪いため、誰でも気軽に観光できる場とまではいかない。
しかし、光龍使いならば多少なりとも興味がある場所。パワースポットとして、有名な場所でもある。
よって、人の出入りはそれなりにある。95%が、光龍使い、光龍希望の者だ。
レイラ自身、光龍を授かってから長いが、来たことは数える程度しかない。
本当の最初と、あとは適当なタイミングだけ。逆に、通い詰める場所ではないことも確かである。
「……懐かしい」
船を降り、霊峰を見上げるレイラ。
霊峰が生む風を浴びながら、脳の底に眠る記憶に触れていた。
鮮明に覚えていなくとも、見た・感じた記憶はある。光龍と会話した今、何か見えるものはあるだろうか。
道行く人々も、光龍が第一なのか、王である自分に見向きもしない。
レイラは顔が割れており、知らない人間の方が少ないはずだが……
(良かった。騒がれない)
ただ、そのことが逆に都合がいい。
こんなところで足止めを食らう必要はない。
彼女も道行く人に紛れ、神殿へと歩を進める。
船着場から、神殿への道は一直線。
レイズが嘆いていた山の中とか、バージルが苦そうな顔をしていた渓谷などではない。
そういう意味では、イージーであるが。
道に従い、数分。光龍神殿が見え始めた。
(あれが……!)
純白の神殿。太陽光を反射し、輝いているように見える。
幼少の記憶がフラッシュバックし、レイラは思わず頭を押さえる。
「ッ……」
懐かしい。しかし、母が亡くなった頃の記憶と近い。
故に、心に突き刺さる母の死。
(いえ、乗り越えたはずです。止まっていられません……!)
そうだ。今度は、父の危機。そして、国の危機。
今、止まっている訳にはいかない。
流れに乗り、神殿内へと入るレイラ。
「ドラ、ゴン……!?」
神殿内は、非常に大きなホールになっており、その中央に、これまた純白のドラゴンの像がある。
訪れた人々は、その像の周囲に跪き、祈りを捧げたり、座禅を組んだり、観察りたりと、思い思いに過ごしている。
「…………」
レイラはその人々を眺めながら、監視している騎士団員を探す。
人の出入りが多い神殿故に、騎士団が管理しているのだ。
彼女は神殿の奥へと続いていそうな扉を見つけ、その脇にいる騎士団員へ声をかけた。そして。
「……これを」
「確認しました。どうぞ中へ」
本部で作った許可証を見せ、神殿の奥へと進むのだった。
壁、床の材質は同じ。
そして、外から入ってくる明かりがないのに、外のように明るい。
道が分岐している作りではなく、シンプルな道だ。
下ったり上がったりの山あり谷あり状態ではあったが、迷うことはなく、最深部へと到達した。
そして、レイズやリゼルが行った試練も例外なく受ける。
試練自体は(レイラ的には)簡単だった。
父の件で、一時的に暴走していた彼女の心。
今は冷静でありながらも、敵に勝とうとする燃え上がる意欲もある。身内云々で目的を見失っていない。
自分と同じ姿の相手ということもあり、そこである種焦りはあったものの、さすがの精神力で持ち直した。
自らのピークに意図的に合わせ、その先の一歩。
そこも割と余裕でクリアした。
そして、龍界。
レイラの世界観はひっくり返る。
空から降り注ぐ光。それに反射して輝くドラゴン。
生命力溢れる力強い飛翔。心臓に響く雄たけびや風圧。
全てが桁違いだ。
龍界には、大自然は大自然だったのだが、森林や大海原などではなく、虹色に輝く結晶の塊。それが花のように展開していた。
そして、隣を歩く巫女はヒカリ。金色サラサラの髪をもつ、可愛らしい少女だ。前髪は揃えられている。
小さな少女だ。だが、繋がれている小さな手からは、凄まじいほどの龍力を感じる。
レイラの前に門番のドラゴンは現れなかったため、彼女はヒカリの正体を、まだ知らない。
「ヒカリちゃん……お父様とお母様はどちらに?」
「え~と……あの辺!」
ヒカリは、周囲をキョロキョロと見回し、適当な方角を指差す。
その先も、ずっと虹色の水晶が咲き誇っている。
「……え~~……と……?お家、は……」
「おうち?って何?」
「?」
家の意味が分からない?
レイラは多少困惑する。
今を生きるドラゴンが本当に存在しているだけでも驚きなのに、この龍界に人間が住んでいる(?)など、今までの常識を覆すものだった。
「え~と……帰る場所、と言いますか……こう、屋根があって、ゆっくり休める場所……ですかね」
「やね……?」
屋根にもピンと来ていない様子だった。
「でも、お休みは分かるよ!これの陰とか、洞窟とか!!」
「???」
小さな少女が、両親と共にこの陰や洞窟で寝泊まりしている?レイラの頭の上や瞳には「?」が何個も現れていた。
「……ふふ」
「!」
頭の中に声が響く。
「光龍!?」
「……あなたは少し勘違いしてるわね」
「勘違い……ですか?」
「えぇ。まず、その子は人間じゃない」
「!!」
レイラはヒカリを見る。
気付けば、ヒカリもこちらを見ていた。
「じ~~~~~~……」
「え?……その……どうかしましたか?」
「今、すっごい力かんじた……それに、なんだかあったかい」
「え……?」
「このかんじ……おねぇちゃん、優しいんだね」
ヒカリは手を離す。
そして、数歩下がり、レイラから距離を取った。
「後にしようかと思ってた。けど、教えてあげる」
ヒカリの身体が輝き始める。
光は心臓の鼓動のようにリズミカルに反射する。
「!!」
激しく、どこか温かな光。自分は、この力をよく知っている。
(光龍の気配……!?この子『も』……!)
違う。
ヒカリは龍力者ではない。
ヒカリは、人間ではない。
輝く光はどんどん大きくなる。それは、家、否、城クラスまで大きくなった。
『それ』を見上げたレイラは、言葉を失った。
感動で、目に涙が浮かぶ。口が開いたまま塞がらない。ぶわ、と全身に鳥肌が立つ。
遠目で見る分には分からなかった、心の高揚感。それを中心に、全身に流れるこの気持ち。
そう。
ヒカリは龍力者ではない。
ヒカリは、今を生きる。
「ドラ……ゴン……」
レイラの蒼い瞳に映るドラゴン。
純白の、力強い生命に、彼女は胸を高ぶらせるのだった。
それは、霊峰アルカリオンがある大陸。その麓に位置している名所である。
名所ではあるが、交通の便が悪いため、誰でも気軽に観光できる場とまではいかない。
しかし、光龍使いならば多少なりとも興味がある場所。パワースポットとして、有名な場所でもある。
よって、人の出入りはそれなりにある。95%が、光龍使い、光龍希望の者だ。
レイラ自身、光龍を授かってから長いが、来たことは数える程度しかない。
本当の最初と、あとは適当なタイミングだけ。逆に、通い詰める場所ではないことも確かである。
「……懐かしい」
船を降り、霊峰を見上げるレイラ。
霊峰が生む風を浴びながら、脳の底に眠る記憶に触れていた。
鮮明に覚えていなくとも、見た・感じた記憶はある。光龍と会話した今、何か見えるものはあるだろうか。
道行く人々も、光龍が第一なのか、王である自分に見向きもしない。
レイラは顔が割れており、知らない人間の方が少ないはずだが……
(良かった。騒がれない)
ただ、そのことが逆に都合がいい。
こんなところで足止めを食らう必要はない。
彼女も道行く人に紛れ、神殿へと歩を進める。
船着場から、神殿への道は一直線。
レイズが嘆いていた山の中とか、バージルが苦そうな顔をしていた渓谷などではない。
そういう意味では、イージーであるが。
道に従い、数分。光龍神殿が見え始めた。
(あれが……!)
純白の神殿。太陽光を反射し、輝いているように見える。
幼少の記憶がフラッシュバックし、レイラは思わず頭を押さえる。
「ッ……」
懐かしい。しかし、母が亡くなった頃の記憶と近い。
故に、心に突き刺さる母の死。
(いえ、乗り越えたはずです。止まっていられません……!)
そうだ。今度は、父の危機。そして、国の危機。
今、止まっている訳にはいかない。
流れに乗り、神殿内へと入るレイラ。
「ドラ、ゴン……!?」
神殿内は、非常に大きなホールになっており、その中央に、これまた純白のドラゴンの像がある。
訪れた人々は、その像の周囲に跪き、祈りを捧げたり、座禅を組んだり、観察りたりと、思い思いに過ごしている。
「…………」
レイラはその人々を眺めながら、監視している騎士団員を探す。
人の出入りが多い神殿故に、騎士団が管理しているのだ。
彼女は神殿の奥へと続いていそうな扉を見つけ、その脇にいる騎士団員へ声をかけた。そして。
「……これを」
「確認しました。どうぞ中へ」
本部で作った許可証を見せ、神殿の奥へと進むのだった。
壁、床の材質は同じ。
そして、外から入ってくる明かりがないのに、外のように明るい。
道が分岐している作りではなく、シンプルな道だ。
下ったり上がったりの山あり谷あり状態ではあったが、迷うことはなく、最深部へと到達した。
そして、レイズやリゼルが行った試練も例外なく受ける。
試練自体は(レイラ的には)簡単だった。
父の件で、一時的に暴走していた彼女の心。
今は冷静でありながらも、敵に勝とうとする燃え上がる意欲もある。身内云々で目的を見失っていない。
自分と同じ姿の相手ということもあり、そこである種焦りはあったものの、さすがの精神力で持ち直した。
自らのピークに意図的に合わせ、その先の一歩。
そこも割と余裕でクリアした。
そして、龍界。
レイラの世界観はひっくり返る。
空から降り注ぐ光。それに反射して輝くドラゴン。
生命力溢れる力強い飛翔。心臓に響く雄たけびや風圧。
全てが桁違いだ。
龍界には、大自然は大自然だったのだが、森林や大海原などではなく、虹色に輝く結晶の塊。それが花のように展開していた。
そして、隣を歩く巫女はヒカリ。金色サラサラの髪をもつ、可愛らしい少女だ。前髪は揃えられている。
小さな少女だ。だが、繋がれている小さな手からは、凄まじいほどの龍力を感じる。
レイラの前に門番のドラゴンは現れなかったため、彼女はヒカリの正体を、まだ知らない。
「ヒカリちゃん……お父様とお母様はどちらに?」
「え~と……あの辺!」
ヒカリは、周囲をキョロキョロと見回し、適当な方角を指差す。
その先も、ずっと虹色の水晶が咲き誇っている。
「……え~~……と……?お家、は……」
「おうち?って何?」
「?」
家の意味が分からない?
レイラは多少困惑する。
今を生きるドラゴンが本当に存在しているだけでも驚きなのに、この龍界に人間が住んでいる(?)など、今までの常識を覆すものだった。
「え~と……帰る場所、と言いますか……こう、屋根があって、ゆっくり休める場所……ですかね」
「やね……?」
屋根にもピンと来ていない様子だった。
「でも、お休みは分かるよ!これの陰とか、洞窟とか!!」
「???」
小さな少女が、両親と共にこの陰や洞窟で寝泊まりしている?レイラの頭の上や瞳には「?」が何個も現れていた。
「……ふふ」
「!」
頭の中に声が響く。
「光龍!?」
「……あなたは少し勘違いしてるわね」
「勘違い……ですか?」
「えぇ。まず、その子は人間じゃない」
「!!」
レイラはヒカリを見る。
気付けば、ヒカリもこちらを見ていた。
「じ~~~~~~……」
「え?……その……どうかしましたか?」
「今、すっごい力かんじた……それに、なんだかあったかい」
「え……?」
「このかんじ……おねぇちゃん、優しいんだね」
ヒカリは手を離す。
そして、数歩下がり、レイラから距離を取った。
「後にしようかと思ってた。けど、教えてあげる」
ヒカリの身体が輝き始める。
光は心臓の鼓動のようにリズミカルに反射する。
「!!」
激しく、どこか温かな光。自分は、この力をよく知っている。
(光龍の気配……!?この子『も』……!)
違う。
ヒカリは龍力者ではない。
ヒカリは、人間ではない。
輝く光はどんどん大きくなる。それは、家、否、城クラスまで大きくなった。
『それ』を見上げたレイラは、言葉を失った。
感動で、目に涙が浮かぶ。口が開いたまま塞がらない。ぶわ、と全身に鳥肌が立つ。
遠目で見る分には分からなかった、心の高揚感。それを中心に、全身に流れるこの気持ち。
そう。
ヒカリは龍力者ではない。
ヒカリは、今を生きる。
「ドラ……ゴン……」
レイラの蒼い瞳に映るドラゴン。
純白の、力強い生命に、彼女は胸を高ぶらせるのだった。
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