邁進のヘレディタリー

風鈴の音

文字の大きさ
1 / 7
プロローグ

プロローグ

しおりを挟む
それは、ほのかに暖かい春の日だった。今日が別れの日だ。
わが子のために何が出来るか。考え、考え、考え、寝る間も惜しんで考えた。
そして、サヨナラの決意をした。こんな場所で生きることは、この子にとってもきっと良くない事だから。目から落ちていく水を、止められるだけ止めて、最後に笑った。
「生まれてきてくれてありがとう。そして、そして…」
『貴方の力で世界に花を、革命を咲かせて』

この子が産声を上げたのは八月十五日。有名な「革命家」が生まれた日だ。それを私達は、運命だと感じた。
この世界は差別によって成り立っているといっても過言ではない。
「優性魔法遺伝」を持つものと「劣性魔法遺伝」を持ってしまったものとでは、人生が大きく変わってしまう。「優性魔法遺伝者」は、ほぼ無限に等しい人生の選択肢の中から自由に、「オリジナル」と呼ばれる自分専用の魔法に適合した夢を見つけ、世界で輝くことができる。「劣性魔法遺伝者」は優性の召使として生きるか、国の補助によって底辺な生活をするかの二択だ。他に、「無魔法遺伝者」と呼ばれる❘❘昔の言葉で表すとするならば「農民」や「勇者」のような❘❘魔法の使えない人も一定数存在する。過去、勇者が世界を救ったとされる伝説から劣性魔法遺伝者は無魔法遺伝者よりも下の地位で過ごしている。
私はこの子を信じている。そう、今も。この子は「優性魔法遺伝者」だ。それも「オリジナル」の強さの最高段階である『遺伝者階級―S.O.』だったのだが…

「そんなはずはない!!」
「もう一回調べろ!!」
「これが事実だったなら我が一族の恥だぞ!!」

ベッドに横たわる私には構わず。そんな怒号が10分も続いた。
魔法を使える力を、この世界では『魔力量』と呼ぶ。この子の魔力量は…今までの世界で観測されたのは1人程度だったと語られる。
【0】その数字が今までの全てを壊した。何度検査をしても結果は変わらなかった。ゼロ、それは文字通り 何 も な い を表す言葉。それを一族の長「」は許さなかった。この子、そして私の一族は国の管理者である『翼』の幹部として、家系ごと従事している。
「愚者を捨てよ」と、命令は下された。それから2日は水も飲まなかった。いや、飲めなかった。吐き出してしまった。翼の幹部の命令は絶対であり、逆らえば最後、死か隷属がまっている。こんな環境では、この子を育ててもきっと…
「生きてね。『エギラ』」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...